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第二章 魔法使いの追憶
2‐6
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アカデミーの外側、オル・フェーズの街並みは幾つもの背の高い建物が立ち並ぶ、まさに都会といった様相だった。
「屋根の上! 誰かいるよ!」
カナタが言うが早いか、箒がくるりと空中で一回転して、飛んできた飛翔物が先程まで二人の身体があった場所を通過する。
「あの距離から矢を命中させてくるなんて……」
箒の高度はだいたい三階建ての建物と同じぐらい。眼下には大勢の人でごったがえする通りを、迷惑にも爆走する一人の男。
「髪型が特殊だから判りやすいよね」
「そんなことは言ってる場合じゃ……っと」
「ぶつかるよ!」
「ぶつからない」
飛んできた矢を避けるために、建物すれすれまで接近する。一瞬覗いた窓の中では、昼食の支度をしている主婦が見えた。
「あの人……すご……! 屋上を飛び移りながらこっちを狙ってるよ!」
カナタの言葉通り先程から矢を射ってくる人物は、背の高い建物の屋上を跳躍しながら、手に持ったボウガンをこちらに向けて精密な射撃を行っていた。
「うわぁ! あた、当たるって!」
「当たらないから、静かにしてて。『インターセプト』」
アーデルハイトが唱えると、彼女の横に二つ、球体が出現する。炎の塊のようなそれは、飛んできた矢に反応して自動的に火の粉をばら撒いて迎撃していた。
「凄い!」
「感心してないで、貴方もなにができないの? 遠距離攻撃とか?」
「あー、それ無理だね。ボクが一番苦手なことだし」
「本当に英雄なの?」
「そんなこと言われても……」
カナタとて、望んでなったわけではない。
「って、ちょっとあの人!」
遠距離攻撃では効果がないと判断したのか、屋根の上の男は一気にこちらに距離を詰めると、建物の上をまるで陸地でもあるかのように並走する。
「と、飛びついてくる気だよ! なんか魔法ないの!?」
「ないわ。あるけど、今は無理」
「じゃあどうすれば……あ、そうだ!」
男が飛びかかってくるのに対応して、セレスティアルの壁を展開。
突然のことに男は対応できなかったのか、驚愕に目を見開いてそれに勢いよく衝突した。
「うわ、痛そー」
「……光の壁……? それがセレスティアルね。ふぅん」
ぶつかったまま掴むところなどない男はそのまま落ちていく。
と、思いきや建物の窓に腕を掛けて、そこからすぐさま態勢を立て直した。
「嘘!」
「どちらにしてももう追っては来れないわ。……それはなに?」
一瞬後ろを振り返ったアーデルハイトに問われて、カナタは革紐のようなもので自分の腕に巻きついていた物に視線を移す。
小さな、掌に収まるほどの大きさの球体に、どんな仕組みなのか、描かれた数字はカチカチと音を立てて次第に小さくなっていく。
「爆弾、かな?」
「す、捨てなさい、早く!」
「でも、これ、外れな……!」
「ああもう。手伝ってあげるから!」
箒の上で混乱する二人。勿論そんなことをすれば、箒を操縦しているアーデルハイトの集中力は乱れ、落下こそしないものの、ふらふらと不安定な軌道を描き始める。
「取れた!」
「早く捨てて!」
「何処に!? 下に捨てたら大変なことになるし、建物にも……!」
「自分の命の方が大切でしょう? それともここでわたしごと爆発するつもり?」
「そうじゃないけど……!」
そんなことを言いあっている間にも、四、三、二と時間は経過する。
「……上に!」
一。
「えいっ!」
ゼロ。
ぱぁんと何かが弾けるような音がした。カナタには聞き覚えのある、誕生日やクリスマスにならすクラッカーの音だ。
そしてその内容も多分に漏れず、破裂した爆弾から飛び出した色とりどりの紙紐や紙吹雪が地上に向けて降り注ぐ。
それが何かのお祭りと勘違いされたのか、地上では子供達がこちらを見上げて歓声を上げていた。
「なに、これ……むぐっ」
そしてその中に含まれていた紙が一枚、アーデルハイトの顔面に直撃する。
すぐさま手で取ってそれを見るアーデルハイトの肩が小さく震えている。
カナタも肩から顔を出してそれを覗き込むと、そこには『びっくりしただろ?』と書かれていた。しかもあかんべーをしているイラスト付きで。
「……ぶち殺す」
ぐっと箒が急停止し、男が落ちた辺りに逆戻りする。
「駄目だよ! 今は泥棒を追わないと! ……泥棒、を」
言われてお互いに気がついたが、眼下を見下ろしても、もう逃げている人影は何処にもない。
見事にあの男の策略通り、逃げ切られてしまった。
「屋根の上! 誰かいるよ!」
カナタが言うが早いか、箒がくるりと空中で一回転して、飛んできた飛翔物が先程まで二人の身体があった場所を通過する。
「あの距離から矢を命中させてくるなんて……」
箒の高度はだいたい三階建ての建物と同じぐらい。眼下には大勢の人でごったがえする通りを、迷惑にも爆走する一人の男。
「髪型が特殊だから判りやすいよね」
「そんなことは言ってる場合じゃ……っと」
「ぶつかるよ!」
「ぶつからない」
飛んできた矢を避けるために、建物すれすれまで接近する。一瞬覗いた窓の中では、昼食の支度をしている主婦が見えた。
「あの人……すご……! 屋上を飛び移りながらこっちを狙ってるよ!」
カナタの言葉通り先程から矢を射ってくる人物は、背の高い建物の屋上を跳躍しながら、手に持ったボウガンをこちらに向けて精密な射撃を行っていた。
「うわぁ! あた、当たるって!」
「当たらないから、静かにしてて。『インターセプト』」
アーデルハイトが唱えると、彼女の横に二つ、球体が出現する。炎の塊のようなそれは、飛んできた矢に反応して自動的に火の粉をばら撒いて迎撃していた。
「凄い!」
「感心してないで、貴方もなにができないの? 遠距離攻撃とか?」
「あー、それ無理だね。ボクが一番苦手なことだし」
「本当に英雄なの?」
「そんなこと言われても……」
カナタとて、望んでなったわけではない。
「って、ちょっとあの人!」
遠距離攻撃では効果がないと判断したのか、屋根の上の男は一気にこちらに距離を詰めると、建物の上をまるで陸地でもあるかのように並走する。
「と、飛びついてくる気だよ! なんか魔法ないの!?」
「ないわ。あるけど、今は無理」
「じゃあどうすれば……あ、そうだ!」
男が飛びかかってくるのに対応して、セレスティアルの壁を展開。
突然のことに男は対応できなかったのか、驚愕に目を見開いてそれに勢いよく衝突した。
「うわ、痛そー」
「……光の壁……? それがセレスティアルね。ふぅん」
ぶつかったまま掴むところなどない男はそのまま落ちていく。
と、思いきや建物の窓に腕を掛けて、そこからすぐさま態勢を立て直した。
「嘘!」
「どちらにしてももう追っては来れないわ。……それはなに?」
一瞬後ろを振り返ったアーデルハイトに問われて、カナタは革紐のようなもので自分の腕に巻きついていた物に視線を移す。
小さな、掌に収まるほどの大きさの球体に、どんな仕組みなのか、描かれた数字はカチカチと音を立てて次第に小さくなっていく。
「爆弾、かな?」
「す、捨てなさい、早く!」
「でも、これ、外れな……!」
「ああもう。手伝ってあげるから!」
箒の上で混乱する二人。勿論そんなことをすれば、箒を操縦しているアーデルハイトの集中力は乱れ、落下こそしないものの、ふらふらと不安定な軌道を描き始める。
「取れた!」
「早く捨てて!」
「何処に!? 下に捨てたら大変なことになるし、建物にも……!」
「自分の命の方が大切でしょう? それともここでわたしごと爆発するつもり?」
「そうじゃないけど……!」
そんなことを言いあっている間にも、四、三、二と時間は経過する。
「……上に!」
一。
「えいっ!」
ゼロ。
ぱぁんと何かが弾けるような音がした。カナタには聞き覚えのある、誕生日やクリスマスにならすクラッカーの音だ。
そしてその内容も多分に漏れず、破裂した爆弾から飛び出した色とりどりの紙紐や紙吹雪が地上に向けて降り注ぐ。
それが何かのお祭りと勘違いされたのか、地上では子供達がこちらを見上げて歓声を上げていた。
「なに、これ……むぐっ」
そしてその中に含まれていた紙が一枚、アーデルハイトの顔面に直撃する。
すぐさま手で取ってそれを見るアーデルハイトの肩が小さく震えている。
カナタも肩から顔を出してそれを覗き込むと、そこには『びっくりしただろ?』と書かれていた。しかもあかんべーをしているイラスト付きで。
「……ぶち殺す」
ぐっと箒が急停止し、男が落ちた辺りに逆戻りする。
「駄目だよ! 今は泥棒を追わないと! ……泥棒、を」
言われてお互いに気がついたが、眼下を見下ろしても、もう逃げている人影は何処にもない。
見事にあの男の策略通り、逃げ切られてしまった。
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