眠りに落ちると、俺にキスをする男がいる

ぽぽ

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 何故か夜鳥は目を見開いたまま硬直する。俺も何故そんな驚いた様子をするのか分からず固まる。凍てついたように場が静かになる。

 そして、やっと夜鳥は震えた声を出した。

「き、キス?キスは奪われたってこと?」
「うん」
「え、何でそんな軽く言うの?どういうこと?僕の時はあんなに怖がってたのに。も、もしかして、付き合ってる奴がいたり」
「いや居ないけど」
 
 普段何事も動じない彼だが、珍しく動揺をしている。俺が返事をする度に「え、え」と声を漏らし、汗も尋常じゃない程に流れている。風邪にでもなったのか?
 保健室に連れて行こうかと口を開く俺を遮り彼は俺の両肩を掴み問い詰めるように聞いてきた。
 
「つまり無理矢理?僕が代わりに殺してあげようか」

 こっわ。

 いつものように笑みを浮かべているつもりのようだが、逆にそのセリフにその笑顔は怖い。
 ていうか、そのキスの相手候補で一番可能性が高いのは夜鳥だし、それはある意味自虐と捉えた方が良いのか?

 怪奇な目で見つめる俺の視線に気付いたのか、彼はやっと正気を取り戻した。

「っご、ごめんね。ちょっと動揺しちゃって。ど、どういう状況でそんな事をされたのかな?」
「あー、なんか多分誰かと勘違いされてキスされてるから正式なキスとは違うというか」
「そんな不躾な男が?やっぱり僕が殺してきてあげるよ?誰?僕が知ってる男?」
「あ、ある意味お前が一番知ってるよ……」

 そう言うと、彼は「僕?じゃあ××?いや×××か?」なんてブツブツ呟き始めた。怖すぎる。
 コイツを今のうちに俺が仕留めた方が良いんじゃ?いや、力の差で俺は負けてしまう。

 そうだ、犬山に助けを求めよう。
そう思った俺は寮の部屋に逃げる事にした。
すまない、夜鳥。図書委員の作業を手伝ってくれたのは有難いが今のお前と二人はかなりキツイぜ。

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