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第1章

貴重な朝食

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情けなく泣きつかれて眠ってしまった僕は翌朝まで目を覚ますことがなかったようだ。


目が覚めたら部屋が明るくて、ばぁやが呆れた様子で部屋に居た。

「やっと目を覚まされましたね!さっ、お顔を洗って下さい。寝ている間に冷やしておきましたが、少し腫れてますね。」


泣いて眠ったにしては目があまり痛くないと思っていたら、どうやらばぁやがしっかりとケアしてくれていたらしい。



ばぁやが持ってきてくれたぬるま湯で顔を洗い、化粧水とクリームを顔に塗られる。
貴族の人間の肌は使用人達の手によってツルツルにされている。

ばぁやに手伝ってもらいながら着替えていると僕のお腹からぐぅぅ~っという音が鳴った。


「ふふ、お夕食を召し上がられていませんものね。今朝は旦那様もアドルファス様もいらっしゃいますので、少し早いですが食堂に行きましょうか。」

ばぁやに笑われてしまったが、とーさまとにぃ様と揃って朝食がとれることに気分が上がる。

でも昨日のことがあるし…少し恥ずかしい気持ちもある。




もじもじしながらばぁやに促されて食堂へやってきた。

まだいつもの朝食の時間より少し早いから食堂にはとーさまもにぃ様も居なくて、せわしなく使用人達が朝食の準備をしてくれている。


僕に気づいた使用人達が深く礼をし、作業の手を止めるので気にしないよう伝えて僕は一足先に自分の席へ着く。



緊張しながらじっと待っていると机の上の食事が用意し終わってすぐにとーさまとにぃ様が食堂にやって来られた。



お二人が席に着くのをじっと待つ。

お忙しいとーさまとにぃ様と揃って朝食が食べられる機会はそうそうない。
僕は朝食を抜くことが偶にあるし、にぃ様は学園があるから馬車の中で食べることが多いみたい。

とーさまはお仕事が忙しくて不在なことが多いし、帰ってきてても朝食の時間が一緒になることはあまりない。


昨日のことがあっての今日。

皆揃っての朝食は嬉しいけれど、何でこんなタイミングなんだって拳を地面に叩きつけたくなる。




「アドルファス、ルナイスよく眠れたか。」


「はい父上。」

「…ぁぃ。とーさま。」



ご飯を食べ始める前にとーさまが声を掛けて下さったけど、僕はよく眠れたどころではなくがっつり泣き疲れ眠ってしまったので恥ずかしくて声が小さくなってしまう。

とーさまと僕の席は離れているから、ぎり聞こえたくらいかもしれない。


そんな僕の気持ちを察してかとーさまはうむっと頷いてカトラリーを持ちお肉をガブリと食べた。


とーさまが食べたのを合図に僕とにぃ様もお皿の上に盛られた朝食にしては豪華なご飯を口にしていく。




「父上、今年は華祭かさいにルナイスを連れていってやりたいのですが、よろしいでしょうか?」


にぃ様の言葉にとーさまがうむっと頷く。

だけど肝心の僕は華祭かさいなるものを知らない。

首を傾げている僕に後ろからそっとばぁやが領内で行われる春の祭りだと教えてくれた。


祭りは前世の時に3・4回行ったくらいだ。
人が沢山密集してねちゃっとした肌やもわっとした空気が苦手で近づかないようにしていた。

この世界の祭りがどんなものかは知らないけど、あまり気乗りしない。


でもにぃ様が連れていってやりたいと言ってくれたことが嬉しい。

気乗りはしないが、にぃ様と一緒だったら楽しい祭りになるかもしれない。




「ルナイスは3日は屋敷から出ることを禁じる。最近は危険な行為が過ぎるのでな。」


浮上していっていた気持ちがとーさまの言葉でぎゅんっと地に落ちる。

とーさまの言っている事はよく分かる。
だって、ドラゴンの時もお爺様達の時もよく考えもせず危ない行動をした覚えが僕には十分にある。



「では、4日後の最終日にルナイスと行って参ります。」

しょぼーっとしている僕をクスクスと笑い見ながらにぃ様はそう言った。

え?っと思ってとーさまを見れば口角を上げて頷いていた。
ちょっとだけ悪戯なお顔。


・・・



とーさまわざと厳しめの声で言いましたね?

僕の事からかいましたね?





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