問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

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第六章 【二つの世界】

6-474 二人だけの時間

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――カチャ



ソフィーネが退室した後、最後に残っていたラファエルもお辞儀をしその姿を消し、この場所にはハルナとサヤだけになった。


この部屋は完全に二人だけの空間となり、何も物音の無い時間か十秒ほど経過した。
その十秒の時間も、二人にとってはそれ以上に長い時間に感じていた。


ハルナは、ベットの上で上半身だけ起こした状態になっており、視線は両手を組んだ手とサヤの肩辺りを何度も行き来させていた。



「……」

「……なに?」

その視線には気付いていたが、その視線が鬱陶しく感じた頃にサヤは声を出した。
そこでハルナも、サヤから声を掛けられたことにより、その視線をサヤの顔に移すことができた。
ハルナの組んだ両手にはさらに力が入り、緊張しながらサヤに話しかけた。


「うん……なんていうか……こうしてサヤちゃんと……二人きりで話すのって……」

「”恥ずかしい”って?……何言っての、オスロガルム倒したあと、剣のヤツにもう一つの世界に飛ばされた時も、おんなじ状況だっただろ!?」

「え!……あ、ううん……そうだよね」



あの時は、初めて起こったことでわからないことだらけで、それどころじゃなかったとは言えなかった。
は素直に今の心境を伝えることができたし、それが間違っているとも感じていない。
ハルナが、祖母の店のアルバイトで久々にサヤと再会した時もこんな感じだった。

思春期を迎える前には、こんな遠慮がちな対応は、お互いに無かったはず。
サヤの自信に満ちた態度も、ハルナの引っ込み思案な態度も、互いに凸と凹のある歯車のように当時はうまく重なり合っていた。
いつしか二人を取り巻く環境が変わっていき、その凸と凹と関係もそれぞれが別な集団の中に取り込まれていく。
それぞれの環境が変わっていくにつれて、サヤとハルナのお互いの関係も変化を見せていった。

最終的にはサヤが、ハルナとの差を見せつけられたと思い込み、その関係はサヤから一方的に切り離され、疎遠になってしまった。



「まぁ……なんていうか……ハルナの言いたいこともわかるよ」

「え?」

「な、なんだよ!!そこまで驚くことは無いだろ!!!久しぶりに……いや、アンタにとってはそれくらいの期間かもしれないけど、アタシは……それだけ随分と長い時間だったんだよ」

「サヤ……ちゃん」


ハルナは、サヤが言っている言葉の意味が少しだけ分かった。
ハルナがこの世界に来る前から、サヤはずっと一人でこの世界に存在していたことを知っている。



「それにしてもアンタ、結構この世界でも慕われてるんだね……アンタはどこでも味方に付けるのがうまいね」

「そ……そんなこと」

「別にアンタのことを責めてるんじゃないよ!そんな態度しなくっていいってば!!」

「ご、ごめん!?」


サヤはため息を吐き、首を数回横に振る。
身体を窓の方へ向き、ハルナと顔を合わせないような体勢をとる。
サヤは今まで言えなかったことを静かに、そしてゆっくりと自分の感情を確かめながら話していった。




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