上 下
1,246 / 1,278
第六章 【二つの世界】

6-473 配慮

しおりを挟む







「西の王国に……ニーナ、それはなぜだ?」



ステイビルはハルナを離そうとするニーナの提案に疑問以上のものを感じた。
ニーナは自分がハルナに好意を持っていることは知っている、その上でニーナは納得し自分の傍にいてもいいかと聞いてきた。
しかし、このタイミングであの発言は、ここぞとばかりに自分をハルナの傍から引き離そうとしているのではないかと疑ってしまっていた。


その視線が自分を疑っているということに気付いたニーナは、残念な気持ち感じながらも奥歯を噛みしめて、自分が考えたハルナにとっても必要なことであろうと考えたことを質問を受けたステイビルに向けながらこの場に告げていく。



「……はい。それは、ハルナ様が既に王都の中では”有名な”お方だからです。王選の際のパレードを始め、様々な問題を解決されてきたハルナ様は既に王都内では第一妃としての認識もあるのです。では、その方がこれから長年の生を得て、生きていくのだとしたら……国民はハルナ様にどのような印象を持たれるでしょうか?」


「確かに。ハルナを化け物か……良くてエルフのような人種であるかのように思う人は出てくるかもしれないわね。まぁ普通じゃないのは確かだけど」


「そうです。いまエレーナさんが感じた、その感想以外のものを抱く方もいらっしゃるでしょう。中にはハルナ様のことを神格化して、王国内の争いの種にもなりかねません。それに比べて西の王国では、ハルナさんの存在は然程知られてはおりません。それにいつまでも西の王国滞在するのではなく、ほとぼりが冷めた頃にまた戻ればよいだけです。その際には名前を変えて戻れば、そんなには大きな騒ぎにはならないと思われます」


「なるほど……ね」


その説明に頷いたのは、マーホンだった。
自分がハルナの傍に付いていたいという気持ちはあるが、自分の欲だけを優先させてハルナの状況を悪くすることは望まない。
今まで出た提案も無駄にしない、さらに自分たちが考えていなかった問題も含んだ良い解決方法だと判断した。

ステイビルも、あらすじとしては問題ないと判断し、細かなところはハルナが旅立つ前までに調整し、大々的な発表は行わなずに進めることでハルナとサヤ以外の者たちは納得した。



「ハルナよ……これでどうだ?」

「あ、はい。大丈夫です……問題ありません」


「そうか。では一旦解散しよう……ハルナ、まだ顔色が良くない。ゆっくりと休むがいい」


ステイビルは立ち上がりハルナにそう告げると、エレーナたちも同じように席を立ち、ハルナを休めるために部屋から出ていく。
エレーナが、部屋を出る直前に振り返ってハルナの顔を見る。
心配してくれているエレーナに向かって、笑顔で応えた。



再びハルナは、ソフィーネの手助けを得ながら、ベットの中に入っていく。
この場から離れる最後の一人として、ソフィーネも部屋を出ていった。

「……何かありましたら、いつでもお呼びください」


扉が閉まり、ソフィーネの下げた頭が見えなくなる。
そしてこの場には、ハルナとサヤだけになった。






しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!

naturalsoft
ファンタジー
『※タイトル変更するかも知れません』 シオン・バーニングハート公爵令嬢は、婚約破棄され辺境へと追放される。 そして失意の中、悲壮感漂う雰囲気で馬車で向かって─ 「うふふ、計画通りですわ♪」 いなかった。 これは悪役令嬢として目覚めた転生少女が無駄に能天気で、好きな絵を描いていたら周囲がとんでもない事になっていったファンタジー(コメディ)小説である! 最初は幼少期から始まります。婚約破棄は後からの話になります。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

【完結】神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。 神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。 追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。 居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。 小説家になろう、カクヨムでも公開していますが、一部内容が異なります。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

処理中です...