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第六章 【二つの世界】
6-384 本気の約束
しおりを挟む「……あ」
サヤはその様子を見て、小さな言葉が漏れた。
草の絨毯の上に腰を下ろした五人の上から、光の粒がひとつまたひとつと降り注いでくる。
サヤはその様子を、久しぶりに目にした雪が降る景色に心が揺れた。
その表情とは反対に、教員やアーテリアたちの表情はこれから起こることに対して表情を硬くしていた。
「……アーテリア様」
呼びかけられたアーテリアは、不安そうに自分を見る瞳にはっきりとした意識を取り戻した。
きっと、いまの自分も同じような表情をしていたであろうから。
アーテリアはその呼びかけに対しては頷くだけで、再び五人のいる場所に視線を戻した。
呼びかけた教員も無言ではあったが”静かに見守るように”とアーテリアに言われた気がして、アーテリアと同じ方向へと目を向けた。
その後、雪のような光の粒は次第にその数を増していき、五人の上に降り注いでいく。
ここまでは、アーテリアも教員も今までも見たことがある景色だった。
しかし、そこから先はラヴィーネ――どちら側の世界においても――でこの儀式を管理するにあたり、今までに見たことのない現象が起きていた。
通常であれば、光の粒はこの円形の場所内に満遍なく降り注いでいくはずだった。
今回は、五人のそれぞれに集中して光の粒が降り注いでいるのが見えた。
「――!?」
その光景を見たサヤを除く一同は、この現象に音にならない声が息として喉から漏れていった。
そんな周囲で見守る者たちを他所に、状況は進んでいく。
まず初めに無事に精霊と契約をできたのは、ローディアだった。
契約が終ると、そのローディアのいた場所に降り注いでいた光の粒はばったりと止んでしまった。
「あの……」
他の者たちが”その時”を待っている中、ローディアは邪魔をしないように教員たちに静かに今後の自分の行動について目で確認する。ローディアに気付いた教員の一人が、ゆっくりと手招きをしてこちらに来るように促した。
それと同じタイミングでヴァスティーユも契約が終り、ヴァスティーユの周りも光の粒が消えていった。
同じようにヴァスティーユもその場から立ち上がり、こちら側へ戻ってくるように指示が出された。
「これで……終わったのですか?」
「えぇ、あなたは無事に精霊との契約が終りました。どの精霊と契約したかは戻ってから確認することになりますが……体調はいかがかしら?」
他の者たちに迷惑にならない程度の小声で、アーテリアはヴァスティーユの質問に応じる。
「え……はい、大丈夫です」
「そう……なら、もう少し待ってて頂戴ね」
「はい」
そう返事をして、ヴァスティーユはサヤの近くまで静かに歩いていった。
その後、ヴェスティーユが精霊との契約が完了し、そこから時間がかかることなく残りの二人の契約が完了した。
これによって前代未聞の、五名という過去にはない参加者全員の契約が完了した。
「や、やはり……サヤ様がおっしゃったことは本当だったのですね?」
「だから言っただろ?……アタシは”本気でした約束”は、ちゃんと守るんだってば」
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