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第六章 【二つの世界】
6-329 名前
しおりを挟む「ど、どうかされましたか!?」
「あ、あの……何か失礼なことをしてしまいましたでしょうか!?」
サヤに仕えるように命じられたメイドの二人は、自分たちが仕える対象の人物がこの世界にとって重要な役割を持つ人物であると聞かされていた。
だからこそ、二人は失礼の無いように……経験の浅いところを感じさせないように振舞うつもりでいた。
しかし、最初からその相手に変な印象を持たれてしまったらしいと感じた二人は、そのことに少しばかり動揺した姿を見せてしまったことを反省する。
”やってしまったことは仕方がない”……後の行動でその行為の穴埋めをするようにと、研修期間中はよく指導されていた。
何とかサヤからの信頼を得ようと、必死にこの場を我慢していた。
二人の性格だと、どうしても焦ってしまい、さらに滑稽な姿を見せてしまうことが多かった。
そのようなことを何度も繰り返し、今この場で焦りを感じながらも必死にこらえてみせている二人は、自分たちの進歩を嬉しさをこの場違いな場面で少しだけ感じていた。
二人は緊張しながら、サヤの言葉をずっと待っている。
まだ、十秒も経っていないはずだがサヤの反応を待ち続けるその時間は、二人の性格上からして当にその枠を超えていた。
サヤはそんな二人の様子に、懐かしさを感じていた。
『――サヤ様?』
その感情は、肩に止まっていたモイスの声で現実に戻されていく。
再び意識を目の前のメイド二人に合わせ、気を使ってくれていることを思い出し慌てて声をかけた。
「……っと、ごめんね。あぁ……ええっと、アンタたちが私についてくれるメイドなんだっけか?」
「は、はい!」
「そうです、よろしくお願いします!」
二人もようやく初めての会話ができたことにホッとし、先ほどまで背部に入っていた力が抜けていくのを感じた。
そして、そのうちの一人がゆっくりと息を吸い込み、もう一度紹介をやり直し始めた。
「この度わたくしたちが、サヤ様のお世話させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします。何かご用はございませんか?」
そうして、二人はうっすらと微笑みを浮かべ、サヤに対しなんでも言ってもらえるような雰囲気を創り出した。これも、やさしい先輩メイドたちからの指導の賜物だった。
「それじゃあさ……聞きたいことがあるんだけど?」
「はい!何でございましょう!」
メイドたちは、サヤの質問が城内に関することだと推測し、いくつか自分の候補を思い浮かべる。
食事や飲み物の種類、入浴の時間、見晴らしのいい場所、花が綺麗に咲いている場所……できれば自分が見つけたお気に入りの場所なども、できれば案内したい。
そんな期待を抱きながら、メイドはたちはサヤからの質問を待った。
だが、その内容は期待していないものだった。
「……もしかして、アンタたち姉妹か?」
「え?はい。そうですが、よくお分かりになりましたね。みんな似てないっていうんですけど……」
そうして、サヤはこれから質問する自分なりの答えを用意して、次の質問を投げかける。
「じゃあさ、アンタたちの名前……なんていうの?」
そこでメイドたちは自分たちの名前を名乗っていないことに気付き、慌ててサヤの質問に答える。
「し……失礼しました!?わたくし、お世話をさせていただきます”ヴァスティーユ”と申します」
「わたくしも、お世話をさせていただきます”ヴェスティーユ”と申します。よろしくお願いします」
そう自分たちの名を告げて、二人はサヤに頭を下げた。
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