1,101 / 1,278
第六章 【二つの世界】
6-328 専属
しおりを挟む「……わかりましたでは普段の捜索は警備兵たちに任せましょう。それで、この城内に部屋を借りたいというのは……本当ですか?」
「あぁ……アタシにはこの世界で知り合いが少ないからね、泊まるところもないんだ。まぁ、無きゃ内でいいんだけど……それよりもあんた達とすぐ連絡が取れた方が、何か起きた時のために対応が早くできるじゃない?だからここにどこか部屋を貸してほしいんだ……ダメか?」
「い、いえ!?ダメなことなどございません……そうですよね?近くにいた方が何かと連絡も付きやすいですし……ぜ、ぜひこの城に!……おい、すぐにサヤ様の部屋をご用意するのだ!」
「――は、はい!?」
ステイビルが壁に立っていたメイドの一人に告げると、慌てて頭を下げて部屋を飛び出していく。
「え?……あ、悪い……ね?」
「いえ、何をおっしゃいますか。サヤ様はこの国……いえ、私たちにとっても大切なお方!精一杯のお手伝いをさせていただきます!!」
「あ……あ、そう?」
サヤは、いつもと違う落ち着きのないステイビルを見て唖然とする。
嫌がる素振りを見せると思っていたステイビルが、なぜこんなにも自分に協力的……いやそれ以上の対応をしてくれるのかサヤにはさっぱりわからなかった。
そんなことを考えているうちに、先ほど出ていったメイド――一旦この場を離れたため既に落ち着きを取り戻していた――が、本来の優雅な動き室内へと戻ってきた。そして、命令されたステイビルへと近づき、部屋の用意が整ったことを伝えた。その報告を受け取ったステイビルは、サヤに快適に過ごしてもらうためにある一つの考えを思いつく。
「誰かサヤ様に、専属のメイドを付けてくれ……そうだな、常に一人は傍にいられるように二人交代でお願いしたいが、だれかちょうど良い者はおらぬか?」
その言葉を受けたメイドは、少し目を閉じてステイビルの命令に沿うものを探している。
だが、その者が浮かぶ様子が無かったため、壁で待機をしていたもう一人のメイドがステイビルに詫びながら前に出てきた。
「それについては、わたくしからご提案がございます……」
そう告げて、ステイビルの問題を解決させた。
その女性は耳打ちで、同僚のメイドにその説明をした。その名を聞いたメイドも、その者たちであれば問題ないとステイビルに伝える。
ステイビルは、メイドたちの詳しい事情はその職に就いている者たちにしかわからないため、その提案を許可するだけしかできない。
だが、この場にいるメイドは、同じ職の中でも上位に位置する者たちで、国王の傍にいても問題ないメイドたちだ。
その者たちが”問題ない”と言えば、ステイビルからはこれ以上何も言うことはなかった。
「わかった……ではサヤ様をそちらに案内して差し上げて欲しい」
二人のメイドはステイビルの言葉に頭を下げ、部屋を用意したメイドがサヤの案内役を務める。
サヤも、メイドに促されその後を付いていく。
そして、二階ほど上がった場所にある部屋に案内をされた。この階はステイビルの私室がある階と同じ場所にあった。
「それでは失礼します……」
案内を終えたメイドは、サヤがソファーに腰かけたことを確認し退室した。
そして、すぐにサヤの世話を任されるメイドたちが入ってきた。
――コンコン
「失礼します」
扉が開くと、二人の女性が部屋の中に入ってきた。
「――あ」
その姿を見たサヤの口から、そんな言葉漏れていた。
0
お気に入りに追加
374
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
【完結】神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました
土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。
神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。
追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。
居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。
小説家になろう、カクヨムでも公開していますが、一部内容が異なります。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中
四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる