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第六章 【二つの世界】
6-165 見覚えのある者11
しおりを挟むアルベルトはゆっくりと、利き腕の反対側の腰に下げていた剣の柄を握りその封を解いた。
「とうとうその封を破ってしまったのだな……これでお前は犯罪者だ!さあ、こいつを取り押さえて……ぐっ!?」
滑るように抜いた剣はその滑らかな動きをみせて弧を描き、その剣先が隊長の男の首元に向けられた。
その見事な動きにこの場にいる兵たちの視線はくぎ付けになり、声を出すことを忘れ剣先が自らの隊長に向けられていてもその先の動きの続きを見ていたい衝動に駆られていた。
「おい!おまえら!!お、俺の命令だ!!こいつをひっ捕らえろ!!なにをしてい……っ!?」
その言葉の途中で、少し間があった喉元と剣先の距離がアルベルトが一歩前に出たことで縮んでいく。
男には判っていた……自分の剣の技量がアルベルトには一歩及んでいないことを。
だからこそ、立ち向かったとしても自分の負ける可能性が高い。
そのために、これだけの数を集め威圧的に交渉する作戦をとった。
騎士団長からも、国の命令であるというお墨付きももらっていたが、実際に敵として相手に立つと交渉の駆け引きがやりづらい相手であると実感している。
だが、ここまで用意して引き下がるわけにはいかない。
男は、もう一度王国からの命令であることを盾に、アルベルトの行動をこれ以上進まないように交渉する。
「おい、お前は誰に剣を向けているのかわかっているのか!?私は国王直々の命令でここにきている。お前の今のこの行動は、自分の国王に剣を向けていることと同じなんだぞ!?」
しかし、その言葉でもアルベルトの剣は男の喉元に向けられて動くことはなく、ぴったりと獲物だけを狙い続けていた。
男はもう一度アルベルトに
「……お前は、国の法を破り封を切ってこちらに剣を向けているだけでも重罪なのだぞ!」
「あなたは、この封を付けた時のことをご存じないのか?」
「……?」
男はアルベルトの言葉に、思い当たる節がない。
だが、”知らない”と言えばアルベルトにも不利となる状況を与えてしまうため男はただ黙るようにした。
「……この封を付ける際に、私はある条件を付けた。それは、”自分の身を守る”時と”国の法に触れないとき”にはこの封を解いても良いということだ。もちろんこれは、騎士団長にも国王にも許可はいただいた。であれば、今この”封を解いてもよい”理由に当てはまっていると考えるが?もしこれが法を犯しているというのならば、どの法に抵触するのか教えてはいただけませんか?」
「ぐぬぬぬぬ……」
男は、それ以上の言葉は何も言えなかった。
知識なども、自分よりアルベルトの方が上であるというのはわかっていた。
人望についても、同じ状況だった。
自分が隊長を務めるよりも、アルベルトの方が集団をうまく扱えるはずだった。
だが、国は頑なにアルベルトにそのような地位を与えることはしなかった。
嬉しい反面、国防としては問題であるということはこの男も認めたくはないが判っていた。
そして、男はいよいよ最後に用意していた交渉材料を持ち出すことを決意する。
「わかった……では、エレーナ。お前は今日から王宮精霊使い長となれ」
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