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第六章 【二つの世界】
6-151 剣と盾6
しおりを挟む「ふーん……って、そういえばさ。キャスメルって人が変わったようなことがあったけど、もしかしてアイツも特殊な能力を持ってるってことはないの?あれ、これって前にも聞いたっけ?」
その質問は、キャスメルに近い位置にいるステイビルに投げかけられた。
以前にもキャスメルが何かを隠し持っているとか、そういう類のことを聞かれたが今回もステイビルの答えは一緒だった。
「いえ……私と一緒にいた頃には、特に変わったようなことはありませんでした。万が一幼いころからそのような能力を持っていたのであれば、一度は私の前でそのような能力を見せていることでしょうから」
ステイビルがいま言ったことは、もっとものようにサヤは思えた。
産まれた時から持っている能力であれば、一度は家族であるステイビルにもそのような能力を見せていることがあっただろう。
特にキャスメルは、同じ兄弟でありながらもステイビルとの能力差に対して、幼い頃からコンプレックスを抱いていた。
自分だけが持つ特殊能力があるならば、途中でその片りんを見せていたという可能性の方が高い。
そのサヤの意見に対し、ステイビルは同意を示す。
それはキャスメルが、ずっと誰にも言わずに隠していた可能性が高いということだった。
時折見せるキャスメルの思考の切れの良さ……不思議なほどの自分を低く見せる行動。
それによって寄ってくる、キャスメルの協力者を装って利益を得ようとする者たち。
その者たちから資金や人材などの資源を奪い、自分の派閥の者たちに還元していることをステイビルは知っていた。
その事実を突き止めた際、他の者たちは驚いていたが、ステイビルはさほどの驚きはなかった。
そこにはむしろ、自分の兄弟の能力の高さを垣間見たことによる、嬉しさがあったことをステイビルは今でも覚えている。
「だとしたら、キャスメルさんはサヤちゃんと同じ能力を持っているってこと?」
「うーん……その可能性もあるってことだね、だけどまだ引っ掛かるところもあるんよ」
『それは……一体どのような?』
「だっておかしくない?なんでキャスメルは”剣”のこと知ってんのさ?この世界には西の王国も無くって、その剣の存在は知らなかった訳だろ?アイツはここにきてそれを要求したんだ……それに盾の存在も理由があっていまだに隠してんだよ?」
「「――あ」」
サヤの言葉にハルナとステイビルが、簡単な言葉で反応を見せる。
それと同時に二人の胸の中に、ストンと落ち開いていた場所に何かが収まるような感覚があった。
そこから二人は、アタリに近いと考えているさらなるサヤの考えを聞きたくてそこから先を促した。
「で……それで、サヤ様はあいつを……キャスメルのことをどのようにお考えで?」
キャスメルやルーシーだけでなく、ラファエルやその周りにいる神々からも送られる好奇心の視線を受け、サヤは満足げに腕を組み期待通りにその先の考えを伝える。
「だったら、アイツの近くにはキャスメルだけじゃなく、アタシたちみたいなやつがどこかにいるっていう可能性もあるんじゃないかって思ってるんだけど?」
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