問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

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第六章 【二つの世界】

6-124 愚弄

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「……あなたはこの村を焼き払うつもりね?この村に手出ししないっていうのなら、こんな仕掛け必要ないんじゃない?」




「……くくく。さすがは”ルーシー”、お見事ですね」




自分の考えがバレたのか、ソイはルーシーの名を呼ぶ際に尊敬の言葉が消えている。
元々、この短い時間の言葉も嘘くさい言葉が続いていたため、ルーシーの耳には気持ちの悪い言葉が不快だった。



「そ、ソイ!?お前……私たちを……本当に」



「おめでたい人ですね……娘さんの方がしっかりとしておりますよ?人間は欲があるからこそ、それが意欲になる。……のですが、場合によっては今みたいに付け込まれることがあるんですよ、今みたいに……ねぇ」




その勝ち誇った笑顔は相手を完全に見下しており、一人でもセイラム家の者を抹殺するという命令が達成できそうな状況への余裕の表れでもあった。



「わ……私を……由緒あるセイラム家を……馬鹿にしおって!!!こ、このぉっ!!!……ぐぇ!?」


ソイに向かって殴りかかろうとした父親は、後ろに引っ張られへんな声を出してしまう。
そしてそのまま、床に腰を下ろしひっくり返ったカエルのようなポーズになる。
引っ張られた顔の元の位置に、横一直線に何かが通り過ぎる冷たい風を感じた。
次第にその冷たさは、痛みとなり鼻孔から赤い血が流れてきた。


ひっくり返る際に、後ろに隠れていたエルフが不可視化の魔法を解き、その姿が視界に入った。



「お前がソイだな?サヤ様の命により、お前をずっと付けていた……もう逃げられぬ、覚悟しろ」



ソイは、その手に投擲用の礫が付いたベルトをクルクルと回して遊んでいた。
先ほどのルーシーの父親の鼻先をかすめたのは、ソイの攻撃だった。
エルフが後ろに引っ張らないと、父親の側頭部はその礫によって頭蓋骨が割れ、当たったと同時に礫は脳の中にまで入り込み、生命が停止する程の被害が及んでいたに違いなかった。




「サヤ……だって?まさか、あの女……そこまで見通してたのか!?」


「これから死ぬお前がそんなことを知る必要はない……サヤ様の機嫌を損ねたお前の運命はここで尽きるのだ」


「こうなれば……少しでも命令を実行するようにしよう」


そういってソイはクルクルと回していたベルトを、ルーシーの母親に向けて飛ばした。

……が、その感覚は今までと違い、自分の想像していた結果にはならなかった。


「――!?」



ベルトを見ると途中から焼け切れており、少しの衝撃でちぎれるように細工されていた。


「ルーシー……お前の仕業か!?」


相手に気付かせない程、回転するベルトの一部に熱を加え酸化させて革製のベルトを千切れさせるように仕向けることができるのは、さすがに王宮精霊使いの中でも一人か二人程だろう。

それ以外にも武器を隠し持っている可能性があるため、ルーシーもエルフも警戒を解かない。
特にエルフは完全にこの場で、ソイの息の根を止める雰囲気が伝わってくる。


「ふ、一人も”処理”できなかったのは残念ですが……この場はひとまず退散するとしましょう」


そういうと、ソイは袖の中から袋をそっと床に落とした。
袋は床に落ちると、瞬く間に白い粉が舞い上がりその姿を隠していく。
今回は、室内で風の精霊使いもいないため、間違いなくこの手が有効であるとソイは判断した。


「待て!!」


エルフは腰に下げていた投擲用の短剣を取り、姿を隠しかけたソイの居場所に向かってそれを投げた。


――キン!


硬い金属音がその短剣をはじく音が響き、ソイの動きを止めることに失敗したと判断した。
だが、既に視界が奪われたため、これ以上の攻撃はルーシーたちに当たってしまう可能性がある。
エルフはこの視界の悪さに乗じて攻撃されないよう、足元に転がるルーシーの父親とその近くにいる母親の無事を最優先とした。


――ゴッ!?



次の瞬間、窓があった位置の方角から何かがぶつかる鈍い音がこの場にいる者たちの耳に伝わってきた。










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