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第六章 【二つの世界】
6-26 別行動
しおりを挟む「やっ!!」
――カン!!
「うわっ!?ちょっとハルナ、なにすんのよ!!!」
「ご、ごめん!?」
ハルナが投げた鉄の矢は辛うじて前へ飛んだが、その矢の行方は制御不能で木に受け入れられず予期せぬ方向へと弾かれた。
その制御を失った鉄の塊の矢は、サヤの目の前を回転しながら通り抜けていった。
「……これ、結構難しいですね。うまく木に刺さったのはステイビルさんとサヤちゃんだけですし」
ステイビルはこの武器の検証のために、ハルナたちにその道具を使ってもらった。
それによって、相手の実力がどれほどの者かが見えてくるとステイビルは言った。
ハルナの言う通りに、うまく真っすぐ飛んで気にその矢が刺さったのはステイビルとサヤの二人だった。
ハルナは目標にあたったがソイに至っては、木に当てる事すらできずあらぬ方向へ矢は飛んで行っていた。
「そうだな……試してもらった通り、この武器を扱うには相当の熟練したものでなければあの男も仕留めることができないということだ。しかも、気配を断つことのできる暗殺者のような相手であると言えるだろう……すまないが、グラキース山までは危険が伴う、注意して行動してほしい」
「わかりました!」
ハルナだけがステイビルの言葉に対し返事をした、それは変わる前の世界でステイビルと行動していた癖が出てしまった。
ハルナは恥ずかしく思ったが、サヤとソイはそのことに対して何も思うことはなかったようだ。
こうして、一旦この問題はステイビルたちの中で収束させることにした。
そして再び馬車を目的地である、グラキース山のふもとを目指して進め始めた。
その間、これ以降特に問題が起きることなくステイビルたちはグラキース山が見えるところまで馬車を進めることができた。
その途中、本来の目的地であるソイランドへ材木を運んでもらうために他の仲間に荷物を託した。
併せて事情を説明し、食料などの物資を入れることもできたのは幸いだった。
グラキース山に近付くにつれ人と物の出入りが激しくなり、ステイビルは状況が悪化しているのではと推測した。
ジ・マグネル渓谷を過ぎ、そこから先へ進むには検問を通らなければならなかった。
「検問です!どうなさいますか、ステイビル様!?」
ステイビルは少し目を閉じて考え込み、一つの結論を導き出した。
「よし、私はここで馬車を降りよう。ハルナさんとサヤさんは、付いてきていただけますか?」
「あぁ、いいよ」
「はい、私は構いませんが……」
その言葉に動揺を見せたのは、ソイだけだった。
「す……ステイビル様!?な……なぜ!?私はどうすれば!?」
その言葉に対し、ステイビルは冷静に答える。
「馬車はこの先では通してもらえるとは考えにくい、王国関連の者であれば問題ないであろう。だが、一介の商人ならばこの先を通してもらえるとは考えられない。それにここから先は危険な場所でもある、護衛もなくこのような大きな馬車は亜人に狙われやすくするようなものだ。だから、お前はここからはモイスティアに戻ってくれ」
「し……しかし」
さらに食い下がってくるソイに、ステイビルは優しい瞳を向けて説得した。
「わかってくれ……これ以上、私のために犠牲を出したくないのだ。先ほどの鉄の矢の動きを見ても、お前はそういったものに向いていない……店のことやお前を頼りにしている者たちのためにも、お前はここで引き返せ……ここまで助かった」
ステイビルは小さい方の金貨の入った袋を取り出し、ソイに向かって差し出した。
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