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第六章 【二つの世界】
6-25 見たことのない矢
しおりを挟む「お……終わったのですか?」
そう言いながら、ソイは馬車の下からモソモソとその身を出してきた。
「あぁ……どうやら私は、襲われたらしいな」
「な……なんと!?」
そうして、ソイはステイビルの前で力なく倒れている男の額を見つめる。
「これは、どこから飛んできたのか……あまりの速さと気配が消えていたためコレを防ぐことができなかった」
「それ程の者なのですか?そいつは……ステイビル様でさえ防げなかった……と」
「そういうことになるだろうな……」
「まさか!?あの……」
そう言いかけたところで、森の奥からサヤとハルナが戻ってきた。
結局ハルナたちはその現場を見ることもできず、サヤが考えていた行動を取ることができなかった。
「はぁ、はぁ……一体何が……えっ!?」
「音がしなくなったと思ったら……もう終わってたんだね……ってこれ、二人でやったの?」
丁度、剣に付いていた汚れを紙で拭い腰の鞘に納めたところだった。
「……いや、全て私一人で”片付けた”」
サヤはこの様子を見て、納得する。
ここには生きている者は一人もおらず、ほとんど身体の一部が関節の弱いところから切り落とされていた。
ある者は首で絶命し、ある者は切り落とされた場所から大量の血が流れており身体の血が足りなくなっていったのだろうと、地面にできた”水たまり”をみてサヤはそう判断した。
「このもの達を道に捨てておくわけにもいかん。……森の中に移動させたい、手伝ってもらえるか?」
ハルナとステイビル、ソイとサヤのペアとなり、八体の遺体を森の少し奥に行ったところまで運んだ。
本来なら警備兵たちに言えば、処理をしてくれるところだ。
だが、敵とも味方ともわからない中、王国の人材の手を借りることは避けたかった。
それによって、自分のケジメを付けに行くことができなくなってしまうことを避けるために。
「これで良し。”精霊使い”がいればこの穢れた血を洗い流して欲しいところだが……今回は仕方がないな、雨が降るまで待つことにしよう……それでちょっと試してみたいのだが」
そういってステイビルは、ボスの額から抜いた鉄の矢を包みの中から取り出した。
「これが先ほど話した、私に気付かれずにボスだった男の息の根を止めた物だ。ここを見てくれ……」
鉄矢には羽が付いておらず、円柱状の先が尖っている形状だった。
少し何かを引っかける形状のようなものが反対側にあるが、それが何のために付いているのか判らなかった。
「ふーん……吹き矢にしては矢が重過ぎるね。これを吹き飛ばすにはよっぽどの肺活量か、そういう道具を用いないとダメなんじゃないか?」
サラはその鉄の矢を目にした感想を述べた。
だが、一つ気になる点があったが、それはハルナが口にしてくれた。
「でも……何かの道具を使って飛ばす矢じゃないかって思うんですよね……ほら、ここの窪みに」
「それが……何か……だな。これがわかれば、まだいると思われる敵の対策にもなるというものだが」
「あ、私わかったかもしれません。ちょっと貸していただけますか?」
そう告げたのはソイだった。
ソイはその矢を手にして、カバンの中から布の紐を取り出す。
手にした紐をくぼみに引っ掛けて、ハルナたちに危ないため離れるように告げる。
そしてクルクルと回しだし、鉄の重みの遠心力で回転はより一層早くなる……が途中でそれを止めた。
「……とここまではできたのですが、これをどうやって飛ばしたのかまではわかりません。うまく外せれば飛ぶのでしょうが、私にはそこまでの技術はないため……」
「確かに、これだと威力があるな」
ステイビルはそれを手に取り、同じことをする。
そして、両端を掴んで回していた布の片方を話すと、矢は勢いよく真っすぐ飛んで木の幹に突き刺さった。
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