666 / 1,278
第五章 【魔神】
5-57 生存者
しおりを挟む「ステイビル王子……何も起きませんね……」
「そうだな……なんだか、どこかで見張られているようで……逆に不気味だな……」
だが、付いてきてくれているコボルトにも森の中に潜んでいる魔物がいないか探索してもらっているが、その気配は感じられないし確認できないという。
既に最初に精霊使いを助け出した場所よりも、奥に進んでいる。
一応警戒はしているが、王都の中に入ることを目的とするには、その途中で兵力を削りたくはない。
場合によっては進んで妨害があった場合には、その場所に拠点を設けて徐々に王都までのルートを攻略していくつもりでもあった。
今手に入れたい者は情報で、魔物の勢力や王都の状況など、魔物を討伐するために必要な戦力や作戦を練るためにも一つ一つ状況を確認していく必要があった。
この状況から推測するに、王国の反撃に合いこちらの方まで手が回らなくなったか、こちらに向かわせる必要がなくなったか……。
ステイビルは考えたくない推測も頭の片隅にある箱の中にへと、ひとつひとつ得た情報と推測を仕舞っていく。
さらにステイビルたちは距離を稼いでいく、次第に見覚えのある王国を囲む石の壁が見え始めた。
「いよいよ……だな。各員、注意を怠るな!!」
ステイビルはもう一段階警戒度を上げるように、後ろを振り向いて付いてきた兵たちに告げる。
そして、再び前を向いて歩ぎ出そうとしたその時……
「ステイビル王子、少しお待ちを」
そう話しかけてきたのは、傍に居たコボルトだった。
「どうした?何かあったのか?」
「どうやら、仲間が人間を見つけたようです……いま、こちらに向かってきているようです」
すると、数分が経過したころ茂みの中から一人の男性がコボルトと共に姿を現した。
その姿を見た、最初に保護した精霊使いがその者の名を呼んだ。
「ジュイル!!」
街道に降りてきたよろける騎士に肩を貸し、その身体を支えた。
「シモン……無事だったのか」
「ジュイル、あなたこそ無事で……大きなケガはなさそうね?」
ジェイルと呼ばれた騎士は、シモン逃がしたシモンが無事であることにホッとして力が抜けて崩れ落ちそうになる。
だが、その行為を気力で込んで見せた。
シモンの背後から現れたその姿に、王宮騎士団に所属する兵として決して情けない姿は見せられない。
「ジュイルといったか……身体は大丈夫か?」
声をかけられジュイルは腰に下げた剣を身体の横に置き、拳を地面につけて膝を折り頭を下げる。
「ステイビル王子……はい、問題ありません。ですが、与えられた命令の西の王国に関しては……」
ジュイルは申し訳なさそうに、ステイビルの言葉に返してみせた。
ステイビルは知っていた。
王宮騎士団の者たちは王国の中でも最強の戦力の存在で、そのことが彼らの誇りであり総てだった。
最強の盾であり最強の剣であるべき騎士団の者が、命令を何一つ遂行できなかったことは、その誇りを酷く傷付けていることが感じられた。
ステイビルは相手の誇りに気を使いつつ、状況を確認した。
「よい、気にするな。それよりも命が助かって何よりだった……それと、魔物に襲われたと聞くが倒したのか?」
「いえ、倒すことはできませんでした……ですが、自分一人の命を守ることくらいは問題ありません」
「それでよい……それでいいのだ。生き延びることを考えろ、決して命を粗末にするな」
「わかりました、王子の命令とあらば!」
その答えにステイビルは満足に頷いて答えた。
そして、ジュイルをマギーの宿まで連れて帰る役目をシモンに命じた。
戦力に余裕がないため、二人だけで戻ってもらうことになるが、これまでの状況を理解しているシモンも決して不満はなかった。
「あ、王子……一つ忘れておりました」
「どうした?」
「はい、身を隠していた場所から王都内の様子を伺っておりましたが。魔物たちが城に向かって集まっている様子がうかがえました」
「それは……いつ頃の話だ?」
「本日のことです。その後、このコボルト様に見つけていただき助けていただきましたので」
「わかった。ありがとう……あとはゆっくり休んでくれ。そしてそのまま拠点の防衛にも力を貸してやってくれ」
「かしこまりました!……王子、他の者たちもどうかよろしくお願いいたします!!」
「任せておけ……今はゆっくりと休めるのだぞ」
そうして、ジュイルはシモンに肩を借りながらマギーの宿に向かって歩いていった。
「よし、いまがチャンスかもしれんな。いくぞ!!」
そうして、ステイビルたちは進行を再開した。
0
あなたにおすすめの小説
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
聖女を怒らせたら・・・
朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる