問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

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第五章 【魔神】

5-19 火の町での再会

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馬車が一定の進行速度で進む中、その正面には南国の町のような景色が見える。
それが、次の町フレイガルだった。


ソイランドを離れ、ここに来るまで王都に一度立ち寄った。
そこから、ここまで三日の時間が経過していた。
通常であれば、王都から火の町フレイガルまでは二日もあれば到着する。
途中で暴風雨に見舞われ、先に進むことを阻まれたことにより、足止めをされてしまったせいでもあった。


馬車の幌も飛ばされそうになり、近くに風除けになる建物もない。
ステイビルは仕方がなく、エレーナに頼んで一枚だけ大きな氷の壁を出してもらう。
だが、高密度の壁だと直接風量を壁に受けて倒れそうになる。
ハルナに頼んで風をコントロールしてもらおうとしたが、動く空気の量が多いためハルナやフウカの疲労がたまるためこの案も使えなかった。


結局モイスが微妙な元素のコントロールをみせ、ヴィーネを通じて風が通り抜ける穴の開いた氷の壁を作り風と雨の量を減らすことに成功した。
そこで半日ほど足を止め、嵐が通り過ぎるのを待った。
ハルナからモイスの力で異次元の空間に退避できないかという提案案もあったが、今の力でこの場にいるすべての物質量を転移させるのはできないとのことで、この方法で落ち着いたのだった。
反対に言えば、まだモイスの力はそれほど回復をしていないということになるのだった。
そこで親和性が高く、回復期に力を借りてその癖も把握している精霊のヴィーネと同期し力を使うこと方がモイスには楽に行えた。

その感覚を通じて、エレーナにも元素の扱い方はフィードバックされており、元素を取り込むエレーナにとっても決して無駄ではなかった。

その翌朝、嵐は収まり風はまだ吹いていたが雨もなく進めると判断した。
ステイビルは、急ぐことでまた何か問題があってはいけないと、朝食をとってから移動を開始することにした。



そして、いまヤシの木のような植物が、左右に並んで連なる道にでた。
マーホンが言うには、これがフレイガルへの正門へと続く道だという。


町の奥には、白い煙が上がっている。
そこが、誰も立ち入ることのできない場所の目印だと聞いていた。



「……にしても、暑いわね。馬車の窓を開けても、全っ然涼しくもないじゃない!?」


不機嫌がたっぷりと詰まった声で、エレーナはどうにもできない嘆きを口にする。


「夏みたいなところね……エアコンでもついてたらよかったのにね」


ハルナとエレーナだけでなく、マーホンもこれ以上脱いではいけないところまで衣服を外している。

そのことからも、男性とは別の馬車に乗ってもらっている。
こちらの馬車は、ソフィーネによって走らせている。

女性陣が多いメンバーのため、その馬車の中は定員超過の状態だ。
しかし、ハルナの先ほどの発案によってやや快適になっている。

エアコンという機械について、エレーナはハルナに問いかけた。
ハルナは冷たい風が出てくる機械ということは知っていたが、その仕組みまでは知らなかった。

しかし、冷たい風は二人の力で作ることができることに気付き、二人は協力することにした。

エレーナは氷を、ハルナは風を作ることによりこの空間内の気温はかなり快適になった。
そのことをサナは、”前を走る男性陣には申し訳ない”といった。
それに対し、マーホンは男性陣は女性以上に服装を軽くすることができますからといって、こちらの立場を正当化させた。



そうこうするうちに、馬車はフレイガルの正門前に到着する、
前の馬車の合図を受け、ハルナたちも服装を最低限の暑さに耐えられるほどに整えた。
そこからは、ソイランドの町に入ったときの苦労が嘘のようにスムーズに町の中に通された。


ステイビルたちは、フレイガルの宿泊施設に案内される。
ここは、王国が運営する宿泊施設であり、労を労うために用意されたものであった。
併せて、フレイガルの住民に労働の場を提供する意味も兼ねて王国の名のもとに運営されていた。

部屋は三つ用意された。
ブンデルを含めた男性陣、ハルナとエレーナ、ソフィーネとマーホンとサナの三部屋に分けられることになった。
ハルナたちの部屋に荷物が運ばれ、二人は備え付けのソファーに腰を掛けた。
それと同じに扉をたたく音が聞こえ、その相手がソフィーネかマーホンと思い、ハルナが入室の許可を出した。


「はーい、どうぞ!」

すると、入ってきた人物は予測していた以外の人物だった。


「ハルナさん!エレーナ様!フレイガルへようこそ!!」



「「――ソルベティさん!!」」








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