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第三章  【王国史】

3-244 東の王国48

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「あなた達の相手は私一人で十分です……いくわよ」




そういうとエイミは両手を前に出すと、その目の前には大きな竜巻が現れた。
その竜巻は次第に直径を広げて、メイド達に襲い掛かる。


エイミが、この場を引き受けたことのは理由があった。
セイラの精霊の力では、メイド達の被害が大きくなるということだった。

その点”風”なら形が無いため、何とか最小限で喰い止められる……
エイミは、そう考えた上での行動だった。




メイド達は”ただの風”と思いその渦の中に向かうと、簡単に弾き飛ばされるか巻き上げられ天井に叩きつけられる。


その背後にいるメイドは、その竜巻を作り出した本体を狙おうと襲い掛かるが、突然現れる石の壁に行く手を阻まれエイミに届くことはない。
防御に関しては、土の精霊にお願いをしその身を守ってもらっていた。
エイミは、その竜巻でメイド達の戦意を奪おうと考えた。
そのため弾き飛ばす際には、力を制御して大きなダメージを与えないように気を付けていた。
竜巻の威力とその制御にエイミは全ての力を注いでいるため、防御に関しては精霊に任せることにしていた。

メイドたちは何度も竜巻とエイミに立ち向かっていくが、近寄ることさえできずにいる。


その様子を見ていたマリアリスが、他のメイドたちを制した。


「あなたたちでは難しいでしょう、次は私の番です」


そういうと、マリアリスは一本の剣をとり両手で突き刺す構えをとる。


やや体を低くし、後方に溜めた足のエネルギーで地面を蹴り剣を構えたまま竜巻の中に身体ごと突き刺した。


その力と速さは、剣の先に集約されて渦巻く風に弾き飛ばされることなく突き刺さる。

そして身体を回転させ、さらに剣を捻り込んでいくと渦巻を通り抜け、エイミの前にその姿を見せた。


エイミは急いで竜巻を消し、更なる風の力で相手を吹き飛ばそうとした。
しかし、マリアリスの方が早く動き、その狙いを定めさせない。
隙を見つけたマリアリスは、下段に構えた剣を左下から斜めに切り上げた。
その勢いは本気で、エイミを殺そうとする一撃だった。




――ガギィッ!!



だが、土の精霊によってその剣先はエイミに届くことはなかった。
エイミも、信頼しきっているため攻撃のチャンスは見逃さなかった。



(マズい……!?)



マリアリスは剣を弾かれた岩の盾が空気の中に消えていくと同時に、振り上げた自分のわき腹に手を向けているエイミの姿が見えた。
そして、エイミが掌に風の力を集めようとしたその時……






「……お前たち、ここで何をしている!!!」



洞窟の中には全てのものを抑え個うむように、エンテリアの声が響き渡った。
吹き飛ばされていたメイド達も、ヨロヨロと立ち上がりエンテリアに対し頭を下げる。



エンテリアは、周りを見渡しながらエイミたちに近付いて行く。





「エイミさん、セイラさん……お怪我は?」


「大丈夫です……」


その言葉にホッとした表情を見せたが、振り返り厳しい目線を目の前のメイドに向けた。





「どうしてこんな状況になっているのか、説明してもらおうか……マリアリス」


「はい……それは」



マリアリスが礼で下を向いていた顔をあげ、事情を説明しようとしたその時、若いメイドがこの場所に現れた。



「エンテリア様、エイミ様とセイラ様それとマリアリス様……村長様が!!」



若いメイドに呼ばれた四人は、急いで村長の元へ向かった。

その途中で、呼ばれた理由を若いメイドから聞いた。
村長がエイミたちの村の村長と話しをしている二人で途中、急に胸を抑えて苦しんで倒れたということだった。


そして、四人は村長が横になっている部屋に到着した。

同じタイミングで、ブランビートも部屋の前に到着し五人は中に入っていく。



「……村長!」



そこには、薬草師とエイミとセイラの安心できる顔の人物がいた。
だが、そんなことよりも優先しなければならないことがある。

「……お父様、村長様のご容体は?」




「あぁ、今は落ち着いているようだ。だが、危険な状態には変わりはないだろう」


「それではノービス様……私はこれで。なにかありましたら、またお呼びください」


「あぁ、有難う」



薬草師は自分の父親に向かって、名前で呼んでいたことにエイミとセイラは不思議に感じた。
その声は、随分と昔から知っているような雰囲気で呼びかけていた。





薬草師が出ていったあと、ノービスは自分がエイミたちの手紙を見てこの村に来たことからこのような状況になるまでを説明した。

マリアリスは、エイミとセイラの父親のことを冷たい目で睨んでいた。
もしかして、このような状況になったのは”この男”のせいではないかと疑っていた。


その視線を感じつつも、ノービスは起きた出来事をそのまま口にして説明した。
その内容は疑うような箇所もなく、嘘をついているようにも見えなかった。

さらに言えば、村長が見ず知らずの男をこの屋敷の中に入れるはずはないため、この男の言っていることは今のところ信頼できると判断をした。




「……その場に村長様がいらっしゃり、助かりました。有難うございます」



ブランビートは、村長を助けてくれたお礼を述べて深々と頭を下げた。
ノービスはそれに対し、そこまでの感謝を言われることではないとその行為を止めさせた。



「……」


眠っていた村長が、反応を見せエンテリアが声を呼び掛ける。



「村長……村長!」



その声に反応し、村長はゆっくりと目を開けた。






「おぉ、エンテリア……ブランビートも。すまない、ノービス。せっかく来てくれたのだが、こんなことに」


「いや、構わないよ。ウェイラブ、……私たちは”兄弟”だから遠慮することはないさ」







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