問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

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第三章  【王国史】

3-245 東の王国49

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「え?……そうなの、お父さん!?」



セイラは、先ほどのノービスの発言で素に戻ってしまった。

人前などでは、ある年齢から村長としての威厳を保つために”お父様”と呼ぶように修正させた。
そして、そう呼ぶようになってから、十年以上の時が経過している。
しかし、驚いたときや感情が前面に出て父親に対して怒りをぶつけるときなどには、どうしても以前の”癖”が自然と出てしまうのだった。



エイミは横にいるエンテリアたちの顔にも、驚きの表情が浮かんでいることに気付いた。



「……あの、エンテリアさんたちも知らなかったんですか?」




エイミからの質問に、エンテリアとブランビートは戸惑いを見せる。
そして、一度顔を見合わせて頷き合い、エンテリアはエイミの質問に答えた。



「はい。我々……私とブランビート、それにレビュアも村長の実子では無いものでして……詳しい事情は知らされていないのです」


「村長はずっと先代が無くなられてから、ずっとおひとりでこの村の運営をおこなっていらっしゃったと認識しています」





その言葉を聞いてノービスが、子供たちの方へ身体を向ける。
この場にいる全員の視線が、ノービスに対して集中した。



「一人でこの村を守ってきたことは正しい、それにはちょっとした訳があってな……」



その話しの先を話そうとした時、ノービスをウェイラブは制した。




「その先は、私から話そう……」



ウェイラブがマリアリスの手を借りて、ベットの上で身体を起こした。
手伝いを終えた後、マリアリスは重要な話でありメイドが聞いていい話ではないと判断して部屋を出ようとした。



「待ちなさい、マリアリス。お前にも関係のある話だ……ここに居なさい」



そう告げられたマリアリスは、扉に向かおうとしていた歩みを止めた。
マリアリスの身体の今までにないほど心拍数が早くなるのを感じている。


ウェイラブはゆっくりと息を吸いこみ、目をつぶって言葉を語り始める。



「私とノービスは兄弟だ。だが、母親が異なる腹違いの兄弟だ……」










先代の村長は、村の娘と結婚しその間に生まれたのがウェイラブだった。
だが、その母親は産後の肥立ちが悪く、ウェイラブを産んでから数か月後にこの世を去った。

先代は母親のいない赤子を不憫に思いまた新たな女性と一緒になり、その二年後にノービスが誕生することになる。


二人は成長しウェイラブが五歳になった時、その母親は流行り病でこの世を去っていった。


先代はまた新しい母親を迎えることも考えたが、次の母親に馴染むことができるのかという疑問と、一緒になった女性が”また”早死にしてしまうことを恐れ、育児はメイドに任せてこのままで行くことを決めた。




そして二人は成長し、無事に青年期を迎える。
その頃には気になる女性もいた、名前は”サレン”といった。


サレンは、先代の右腕となる人物が父親だった。
そのため、ウェイラブとノービスとは付き合いも多く仲が良かった。
その感情は、時間が経つごとにサレンへの感情が恋愛として変わっていく。


ウェイラブとノービスの二人は、その思いを胸の中で止めて今の関係を楽しんでいた。
”どちらかがそのことを口にしてしまうと二人の関係に亀裂が生じかねない”……そんな気がしていた。




だが、人生の分岐点はこちらの事情を考慮することもなく突然訪れる。





先代が、原因不明の病気で急死した。
執務中に突然胸を押さえて苦しみ、そのまま帰らない人となった。
傍にいたメイドが言うには、声になっていない最後の言葉は二人の子供の名前だったという。





ここから次期村長の派閥争いが始まった。

派閥は二派に別れた。
長男であるウェイラブ派と、村長の右腕だったサレンの父親を村長にすべきである――と。



まだ二十歳になったばかりのウェイラブには荷が重すぎると、サレンの父親がそれをサポートすると口にしたことがきっかけだった。
サレンの父親は村長になるつもりはなかったのだが、周囲が本人に関係のないところで盛り上がり勝手に祭り上げられてしまった。
そのことを危険に感じたウェイラブ派が、今回の村長の死をサレンの父親の陰謀説を流してしまう。


さらに二派の争いが過激になりかけた時、ウェイラブは自らが村長であることを宣言した。
事前にサレンの父親とも話しをして、それを承諾したのだった。


それに対しサレンの父親の派閥が反発をし争いになりかけたが、サレンの父親は騒動の責任を取って村を出ていくことを告げた。
”この処分で騒ぎを治めて欲しいと”ウェイラブに事前に進言していたのだった。


ウェイラブも、その申し出を了承した。
自分に力がないことを悔やみながらの、苦渋の決断だった。




ノービスはその決定に対しウェイラブに考え直すように説得を行った。
今回の事件は周囲が起こしたものであり、本人たちには何の問題がないことを繰り返し説明をした。
だが、ウェイラブは一度下した決断は覆すことはなかった。
担ぎあげられたにせよ、村の混乱を招いたものがいては今後も同様の問題が発生しえるということが理由だった。




サレンの父親が村を出ていくときに、ノービスもまた兄対応に納得がいかずに一緒に村を出ていった。






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