問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

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第三章  【王国史】

3-181 エルフの村の防衛2

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家畜のような鼻をもつ悪魔は、カムフラージュさせた子供たちを隠した洞窟の匂いを捉えた




(――マズいっ!?)



ブンデルは、先程のレッサーデーモンに攻撃を仕掛けた二組の結末を目の当たりにしている。
その恐怖が脳裏を横切っていくが、それよりもミュイやその他の子供達を犠牲にすることが我慢ならなかった。




ブンデルは、サナが持つ矢筒から一本の矢をとり弓を引き狙いを目の前の悪魔に定める。

矢は風を切り裂き、悪魔の左のこめかみを目掛けて真っ直ぐに飛んでいく。





――バシッ




こちらに視線を送ることもなく、薄い羽を一つだけ羽ばたかせて矢を叩き落とした。
しかもその動作は羽の一番薄い部分を使い、まるでその矢が何の問題もないかのような動きだった。


その後尻尾を一度だけ左右に振り、再び興味のある好物のニオイがする方へ向かって歩きだした。



一歩一歩ゆっくりと距離が近づくたびに、ブンデルとサナは焦りの気持ちが高まっていく。
何度か矢を放ち意識をこちらに向けさせようとするが、結果は先程と同じものだった。




「……"ログホルム"!」




突然魔法が発動し、悪魔は草によって動きを絡み取られ、そのま身を草で覆い包まれていく。

奥から一人のエルフが長剣をと盾を持って、絡み取られた悪魔に飛びかかっていく。
空中で剣を両手の逆手に持ち変え、上部から下方に向かって剣を突き刺した。


剣は何かの悪魔がゴソゴソと動くたびに揺れるが、しっかりと両手で押さえながら剣を回しさらに傷を深くしていく。





「ブンデル君、サナさん!今のうちに、子供たちを避難させなさい!」





ここ最近で一番よく聞いた声の主から、指示をされブンデルとサナは草で覆われた洞窟の入り口まで急いで近寄る。
ブンデルは魔法を解除し、草が枯れていき中から怯えた顔をする子供たちの表情が目に入ってきた。



「ナンブルさんが、足止めをしている今のうちに!早く!!」


ブンデルは手を差し出すが、その手を掴む者は誰もいない。
足はすくみ、身体は恐怖で強張っていうことを聞かなかった。


(時間はそんなに稼げはしないのに……!?)




後ろで命懸けで足止めをしてくれているナンブルのことを考えると、この状況に苛立ちを覚え始める。
が、ブンデルの手に小さな手が触れた。
恐怖で手先が冷たく震えてはいたが、この手を掴んでくれたのだ。


「よし、ミュイ!!いい子だ!!」



ミュイはブンデルに引っ張られ、洞窟から出ることができた。
抱え上げた身体は、横にいるサナに引き渡した。



その様子を見て奮起した世話人の一人が、小さな子を抱き抱えブンデルに手渡した。
先程まで恐怖に支配されていたはずだったが、何か変わったのだろう。
今は、子供たちを助けることに必死になって協力してくれた。


そして無事に、洞窟から子供を全員助け出すことができた。



「サナ、この子たちを安全な場所へ!!」


「わかった!……ブンデルさんは!?」

「ナンブルさんとここで足止めをする!子供たちを避難させたら、ステイビルさんに連絡して応援を!!」



その言葉にブンデルとナンブルの無事を祈りつつ、サナは一度だけ力強く頷いた。



サナは子供たちと世話人のエルフを、屋敷の中まで誘導して行った。



「ろぐほるむ!!」


念のため目隠し程度に、ブンデルはこの場所とサナたちの間に草の壁を作りだし視覚的に遮断させた。





「いい判断だ、ブンデル君!……そろそろこちらも戦況が変化する、気を付けろ!!」



剣を突き刺したまま動かして小さなダメージを重ねてきたが手応えも無くなり、この草の塊もそろそろ限界が来ていた。




「ッグゥワアァァアァアァァ!!!!!」



中から大きなケタタマシイ声が響き渡ると同時に、草の塊が黒い炎で燃え尽くされていく。



小さな爆発が起きる瞬時のところで、ナンブルは剣を抜きその場からバックステップで大きく距離をとり退避していた。



レッサーデーモンは自分の不利な状況を回避するため、塊の中で小さな黒い塊を爆発させたのだと分かった。
その証拠に黒い身体は、爆発の煤によってさらに黒くなり自身にもある程度のダメージを負っているのがわかる。



それとは別に、右肩から出ている二本の腕は、ナンブルの剣により動かなくなっている。
大きな羽も貫通したナンブルの剣によって薄い羽には切れ目や穴が開き、ボロボロになっていた。




ナンブルは、ブンデルのそばに寄って作戦を立てる。

ナンブルが接近戦でレッサーデーモンを撹乱させている間、隙を見てログホルムで再び動きを止めてとどめを刺すという内容だった。


だが傷ついていても、さすがはレッサーデーモン。
ろぐほるむを警戒し、そのチャンスや発動に反応してその身をかわしていく。



ナンブルも幾度となく剣を切り付けてダメージを与えているが、片側の腕を動かせなくてもうまく交わして致命傷を避けていた。







――そこに状況の変化が起こる






サナが子供たちを避難させて戻ってきた。


その姿を見たレッサーデーモンは、手の中に小さな黒い球体を生み出す。
勿論狙いは、”サナ”に向けて。





(――しまった!?)




ナンブルはその状態に危機感を覚え、その行動尾阻止しようと剣で切りつけようとする。
焦っていたことがバレたのか、残されたもう一本の腕でたやすく弾かれる。




それと同時に黒い塊は、サナ目がけて放たれた。





「サナ!!!」



サナに一番近い場所にいたのは、ブンデルだがその距離を縮めるには走らなければならなかった。

驚きと恐怖で、サナはその場から動くことはできなかった。


ブンデルは、その前に走り込んでいたがギリギリのタイミングだった。


ブンデルは残りわずかな距離を飛び込んで、サナの身を守った。



ブンデルに抱えられて弾かれたサナに、大きな爆発音が耳を付いた。






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