問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

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第三章  【王国史】

3-169 不幸中の幸い

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火事は水が不足している村に対して、エレーナとヴィーネが協力し燃え移る火を食い止めた。
その際村民は、火がさらに拡大しない様に近隣の家を崩し、被害を食い止める努力をした。


長年住んでいた家を何の被害も起きていない家を崩すことには抵抗があっただろう。
そこはステイビルがゾンデルからサイロンに指示をしてもらい、被害の拡大を阻止することを命令してもらったのだ。




まだ、村長としての命令は村人たちにとっては有効だった。
事の騒動を知らない村人も多く、こういった不満の出そうな緊急時の対応は権力を持つ者からの絶対的な命令が有効であるとステイビルは判断した。






村長の協力もあって、被害は村のおおよそ三割程度の被害で収まった。
それ以上に、村の中に侵入されたことの衝撃の方が村人には大きかったようだ。




魔法を解除した途端に、攻め込まれてしまった。
今まで魔法によって外界と接することがなかった村人にとっては、守るものを外してしまったことによる不安感にとらわれていた。








翌朝、村人たちが被害のあった場所を片付けを開始した。
中には、その惨状に泣き出してしまう者もいた。


だが、犠牲者がいなかったことは不幸中の幸いだと思った。




生きていれば何とかなる……ましてや、エルフは人間の寿命などほんの一瞬の出来事。




ハルナはそんな考えを頭に浮かべながら、ゾンデルとナルメルの後ろに付いて村の中を歩いて行く。











家のがれきを片付けていたあるエルフが、ブンデルのこと指をさして隣のエルフに話しかけている。
そして、話しかけられたエルフはブンデルの傍に近付いてきた。




「昨夜はうちの娘を助けていただいたそうで……本当にありがとうございました」



「え、いや……私は何も……」






本当に助けたのはソフィーネだったが、この子の親は引き渡されたエルフから”知らないエルフとドワーフが連れ出してくれた”と聞いていた。

何度も何度も頭を下げて、お礼を言う親にブンデルは困惑する。
サナはブンデルの背中を”ポン”と叩き、そのエルフに応えるように促した。




「アァ……無事で、何よりでしたね!」





相手のエルフは、お礼が伝わったと喜びブンデルの手を取ってさらに感謝の言葉を告げる。







「どちらの村の方か存じあげませんが、そちらでも相当腕の立つお方だったのでは?……ともかく、娘を助けていただきありがとうございました!!」





そう告げると、そのエルフはまたがれきの撤去する作業に戻っていった。







ブンデルはその言葉を聞き、少し寂しくなった。
この村の出身であることが、わかってもらえなかった。

隔離されていたので、当然なことなのだが自分の存在が知られていなかったことが悲しかった。




その様子を見て、サナはブンデルの袖をそっと掴む。

それに気付いて、ブンデルはサナの顔を見て平気を装い笑顔で返した。












昨夜の状況を確認したハルナたちは、再び村長の屋敷の中に戻ってきた。



入り口にはマルスが出迎え、ゾンデルに確認をする。





「……村の様子は、いかがでしたか?」



「あぁ……酷いものだ。だが、あの程度で済んでよかった。幸いなことに、犠牲者もいなかったようだからな」




ゾンデルもステイビルと同じような判断をしていた。





「それで、サイロン……いや、村長の様子は?」







昨夜、村人に指示を出すように依頼するときのサイロンは、度重なって起こるアクシデントに精神が耐えきれなくなっており、事実から逃げ惑い取り乱していた。


そのことを必死にゾンデルが説得し伝える言葉や態度まで指導し、そのまま伝えるようにすることで納得をさせた。







――コンコン





「……失礼いたします、村長」




返事がないことはわかっていたため、マルスは一応断ってから村長の部屋のドアを開ける。






ステイビルの目に入ってきたものは、ついこの前まで威勢の良いエルフではなく魂が抜けて生きているか死んでいるか分からないようなエルフが椅子に背もたれて、焦点の合わない目でただ空間を見ていた。





ここから、村を立て直さなければならない……だが、サイロンには既にその気力も意欲も失われていた。






「どうした、サイロン。今こそ村長のお前が先頭に立って……」








そのゾンデルの言葉を聞いたサイロンが、顔だけをゾンデルに向ける。

そして、擦れた声で途切れ途切れにゾンデルに話す。




「……れ……は……もう……疲れ……た……あと……は……頼む……ゾン……デル」



「おい、何を言ってるんだ!?お前がやらなければ……みんなを助けなければならないんだろうが!!」



ゾンデルは身体に力の入っていないサイロンの両肩を掴み、揺さぶって発破をかける。
だが、そこには全く手ごたえを感じなかった。



とはいえ決定権を持つ村長がこのままの状態だと、村の再起に大きな問題となる。




そこでステイビルは、村長が病気にかかったことにしてその周りの者が代理で業務を行うという方法を提案した。
勿論乗っ取りと思われない様に、全て村長の指示であることにする。



それを聞いたゾンデルはその案を受け入れて、サイロンにその方法で村人に指示を行っていくと説明した。



サイロンは、内容を理解したかどうかは分からないが、自分は何もしなくていいということを約束しその内容を承諾した。





そして村人には体調の悪い村長からゆだねられたとゾンデルの指示の元、村の復興が行われていった。







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