問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

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第三章  【王国史】

3-168 闇 Vs 闇

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「あら、何か楽しそうないことやってるじゃないの!?」





ハルナたちにとっては聞き覚えのある声だが、エルフにとっては新たな敵という認識だった。
しかし、その突然の乱入に焦ることはなく冷静に対処する。



背後から素早く弓を取り矢かけて狙いを定めると同時に弦を引き……放つ。




矢は直線的な軌道を描き、ヴェスティーユの眉間に向かって飛んでいく。




「……ふん、こんなもの」




ヴァスティーユは背中から出てきた瘴気で矢を絡めとる。







「今度は、バケモノの登場か……」







エルフはヴェスティーユの行動を見て、毒々しく言葉を吐く。






「ははん……あんた初対面なのに、喧嘩売ってるの?まぁ、私は全然かまわないんだけど!?」





その途端、ヴェスティーユは腕を横に振り払い、腐食する黒い瘴気の塊をエルフに向けて放った。









エルフはヴェスティーユの放った瘴気をみて、短剣を逆手に構え攻撃に備える。

着弾する直前で身を回転させ躱し、その回転の勢いに乗って瘴気を切り裂く。




「……!?」




瘴気を浴びた短剣は、腐食の効果によって溶けていく。
エルフもその際に、少しだけその身に浴びてしまった。



腕に付けたガードに瘴気が触れ、その部分も解けていく。
だが、エルフの身体には何の変化も生じなかった。




その様子を見て、ヴェスティーユは何かに気付いた。






「あら、あんた。もしかして……”ダークエルフ”なんじゃないの?」






「ダーク……エルフ!?」



ハルナも元の世界にいた際に、ゲームの世界で聞いたことがあった。
種族のエルフから、PKなどを繰り返し属性が闇に変わったエルフのことを指した。




瘴気を浴びたエルフの装備は腐食しているが、本人には影響が見られない。
その状況を見て、ヴァスティーユは目の前のエルフが闇属性のダークエルフだと判断した。




「ふん……それならこれはどうかしらね!?」





ヴァスティーユは胸の前で両手を合わせて、ゆっくりと引き離す。
そこには、高濃度の瘴気が内側に渦巻き周囲の空気を吸い込んでいる。




モイスティアで見た、すべてを吸い込んでしまう闇の力……ハルナたちは身構える。






ヴァスティーユは、屋根の上で余裕の姿を見せるダークエルフに向かってその球状の瘴気を放つ。

その速度は遅いがゆっくりと、ダークエルフに向かって進んでいく。




何か様子が違うことを察し、ダークエルフは背中の弓に二本の矢を用意し弦を弾き迫る闇の力に向かい矢を放った。




矢は風を切り裂きながら攻撃目標に向かって進んでいき、離れた場所からステイビルたちはその行方を固唾を呑んで見守る。





「――あぁ、何アレ!?」



その状態を見て、エレーナが思わす声を出した。

黒い球に当たるその瞬間、今まで進んでいた速度を無視するかのように速度が殺されゆっくりと矢はその球体の中に飲み込まれていく。






その様子を目にしたダークエルフも、その異様さに気付いて一旦他の屋根に飛び移り距離を置いた。
だがその黒い球は意識を持つかのように、逃げたダークエルフをゆっくりと追従していく。




その様子を見てヴェスティーユは、機嫌よく笑う。




「同じ闇属性でもこれは防げないでしょうね……そういうわけだから、安心してこの世から消えなさいな!!」





ダークエルフは手にしていた弓を背に仕舞い、目を閉じてヴァスティーユと同じように胸の前で手を合わせる。






「ふふふ、観念したのかしら?……大丈夫、ゆっくりと吸い込まれてい行くから相当苦しいはずよ」






ご機嫌な表情で、ヴェスティーユはダークエルフ挑発する。
だが、そんなことも気にせずダークエルフは精神を統一させ極限まで魔力を高める。

魔力が見えないハルナでも、何かがダークエルフの周りに集まっているように見えた。
その分何かしようとしているその威力は、通常出ない大きいものであると感じた。




黒い塊は空気や火事で舞う火の粉などを吸い込み、ダークエルフに向かって距離を詰めていく。


ようやくダークエルフは目を開き、呪文の詠唱を終えた。




合わせた手を解くと、光の弓と矢が姿を見せる。
光の弓を構え、矢を引く動作に入る。

光の矢は、先ほど見たものよりも細く




「エルフの怒りの矢……受けてみるがいい!」





ダークエルフは魔法の矢を、全てを飲み込む黒い塊に向けて放つ。






「――な、なにぃ!?」




声を荒げたのは、ヴェスティーユだった。




光の矢は黒の塊に当たり、飲み込まれることなくその存在を砕いて見せた。
塊の破片は砕け飛び散り、触れたものを腐食させその力を弱める。





「おのれぇええええ!!」



ヴェスティーユは、至近距離で決着をつけようとダークエルフの傍に向かっていった。

だが、大容量の魔力を扱ったダークエルフは既に応戦できる状態ではなかった。





「くそっ!!」





そう言いつつ、ダークエルフは残りの魔力で自分の身の回りに幻覚の領域を創りその姿を消そうとした。






「逃がすかああぁっ!!」




ヴェスティーユは、掌に高濃度の瘴気の塊を作り、それを今消えたダークエルフの場所に押し付けた。
だがその姿は、既にそこにはなかった。





そのまま、ヴェスティーユはダークエルフの気配を追って姿を消した。






「待ちなさい!ヴェスティ……」




呼び止めようとしたエレーナを、アルベルトが止める。

今は、エルフの村の状況が落ち着かせることが重要だとステイビルは告げた。




そして、この場にブンデルとサナが合流し、家屋の被害はあるが連れされられた者もいないとの報告を受け、ハルナたちは屋敷へと戻っていった。







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