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第三章 【王国史】
3-84 三つ子のドワーフ
しおりを挟む「時間切れです」
長老は砂時計を指し、砂が落ち切っていることを伝えた。
「え?嘘……間に合わなかったの?」
エレーナは胸の前で祈るように両手を組んだまま、長老の声に反応した。
アルベルトは、首元に当てた刀を外し前に回りグレイのに起き上がるように手を差し出した。
グレイは、何の迷いもなくその手を取り、アルベルトに助けを借りながら立ち上がった。
先程声をかけた長老の一人が、上の間から下へと降りてきた。
そして、砂時計の横に立ち、今の結果を告げる。
「残念ですが、砂が全て落ち切った後に勝負が決まりましたね。この勝負の条件、覚えておりますか?」
「砂時計が落ち切る前に……でしたか」
ステイビルが長老の問いに答えた。
「その通りです。ですからこの勝負は、我々のか……」
「お待ちください、”サナ”様。よく砂時計をご覧ください……」
「――?」
勝ちを宣言しようとしたところ、ワイトにその言葉を遮られた。
そして、言われた通りに砂時計を覗き込んだ。
「ま、まさか。これ……!?」
サナの目には、落ちる手前で数粒の砂が引っ掛かっているのが見えた。
「そうです、我々の負けですね!グレイはどうだ?」
ワイトは嬉しそうに笑い、つい先ほどまでアルベルトの強さを体感していたグレイに確認する。
「あぁ、この者たちの勝利だ。これは、間違いようがない事実だ」
そう言って、アルベルトの肩をバンバンと叩いて勝利を称えていた。
「わかりました……それでは、この勝負決着としましょう」
「お姉様!?」
「サナ。もういいのよ、どう見てもワイトとグレイの負けだわ。あなたも本当は、そう思ってるんでしょ?」
「で、でも……」
長老が向こうで言い争いをしているところから離れてみていたジュンテイは、アルベルトの強さに驚きつつ近付く。
「やはり、俺の目に狂いはなかった。うまくその長い刀、使いこなせたな!」
「慣れてくれば、扱いやすい剣でした。こちらの意思を汲み取ってくれるよい剣です。それに、調整が良く思い通りの軌道で反応してくれました、有難うございます」
アルベルトは、この刀を自分のために調整してくれたジュンテイに礼を伝えた。
言われたジュンテイは、鼻の下をこすりながら照れをみせる。
「では、こちらとの話し合いに応じて頂けるということでよろしいでしょうか」
ステイビルは、まだ上の方で話し合いを行っている長老たちに声をかけた。
その声に気付いて、一斉にステイビルの顔を見る。
「お前たちも、素直にこいつらのことを認めたらどうだ?こいつらの実力はわかっただろ?」
「ジュンテイさん……」
サナはまだ、納得がいかない顔をしているがこれ以上は姉たちに任せると伝えてこちらに背中を向けた。
どうやら、性格は相当負けず嫌いな性格のようだ。
「それでは、別な場所にご案内します。こちらへ」
ワイトがステイビルたちとジュンテイも併せて別の部屋へ通された。
会議室のような場所で、熱い扉の向こうは長いテーブルが一つと周りに椅子が並べられていた。
そのデザインは、さすがドワーフといった手の込んだデザインになっている。
椅子もテーブルも木の素材でできており、温かさと洗練されたデザインがぶつかることなく生かされていた。
ハルナたちが席に腰かけると、メイド服を着たドワーフがお茶を中に運んできた。
ぽっちゃりとしたドワーフらしい体格とメイド服のヒラヒラがマッチして、ドワーフの可愛らしさを引き立てている。
「ど、どうぞ……」
ニヤニヤ顔をなるべく抑えようとするハルナとエレーナの顔はひきつってしまいお茶を運んでくれたドワーフを怯えさせてしまっていた。
「……お待たせしました」
奥の扉が開いて、先ほどまで上から見下ろしていた三人のドワーフが入ってきた。
よく見るとその顔はまだ若く、三人とも同じ顔をしていた。
「……み、三つ子!?」
思わずエレーナが声に出してしまった。
長老たちはその言葉を受け流し、静かに席に付いた。
「お待たせしました。お話しに入る前に、まずはこちらの自己紹介をいたしましょう」
そう言って座っていた長老が席を立ち、手を胸に当てて自己紹介をした。
「私の名前は、”イナ”ともうします。ドワーフ三長老の長女です。お気付きの通り、私たちは三つ子の三姉妹です。そして、こちららが、次女の”ニナ”、そしてこちらが三女の”サナ”です」
紹介されたニナはハルナたちに向かって軽く頭を下げたが、サナは冷たい視線でこちらを睨んでいた。
「ゴホン……こちらが、今現在ドワーフの町を治めております三長老の方々です」
申し訳なさそうに、グレイが話しをつないだ。
「改めまして。私は東の国のステイビル・エンテリア・ブランビートと申します。こちらが、精霊使いのエレーナとハルナです。そして、その付き添いのアルベルトとソフィーネです」
紹介されたハルナたちは、三長老に向けて頭を下げる。
「それじゃ、時間も勿体ねぇ。アルベルト達の話し、聞かせてもらおうか……」
ジュンテイの言葉で、ドワーフとの交渉がようやく開始されることになった。
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