問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

文字の大きさ
178 / 1,278
第三章  【王国史】

3-9 興味の理由

しおりを挟む






その日の夜、ハルナたちは食堂に呼ばれ盛大な歓迎会が催された。


壁いっぱいに大勢の従者が並び、テーブルを囲うように見届けている。
テーブルの上には、様々な色とりどりの料理が所狭しと並べられていた。


確かに一つ一つは美味しそうに見えるし、香りもいい。
だが、様々な料理が一斉に並べられていると匂いがぶつかり合い、順次出された温かい料理も手を付ける頃にはすっかり冷めてしまっていた。

そんな様子にただひとり満足しているのは、ジェフリーただ一人だけだった。




「どうされましたか、皆さん?食が進んでいないようですが……」




エレーナはそんな気遣いをするくらいなら、テーブルに着いてから延々と語る面白くもない自分史の物語を辞めてくれた方がまだよかった。



(あー、ここにアーリスがいてくれたら、この料理も安心して食べられるのに……)



ハルナは心の中で、何度も現実逃避を繰り返していた。




せめてもの救いは、ソフィーナがうまく取り分けてくれて、上手く味の順番がバラバラにならない様美味しく食べれるように用意してくれたことだった。
上手く食べれば決して悪い味ではない、要は出し方の問題だった。



その原因を作ったのも、目の間に座っている悪趣味な男のせいであると誰もが思っていた。



そして、長くて退屈過ぎた時間もようやく終わりを迎えた。




「さぁ、部屋に戻ってこれからのことを少し相談しましょ」



エレーナが全員に声を掛け、部屋に戻ろうとした。


ジェフリーが、じっとハルナの方を見つめている。
必死にその視線に気付かない様にしているのを、ソフィーネが察してくれてその視線の間に割り込んで姿を隠してくれた。












「んもぉぉぉ!!何なんですかねーあの人は!気持ち悪い!」





部屋に入って扉を閉めた途端に、ハルナがお腹の中で我慢していたものを吐き出した。

ハルナがこれだけ他人に対し、毛嫌いするのはとても珍しかった。


元の世界でも、どんな人物でもここまで毛嫌いすることは一度もなかった。
それは例え、バイト中に変な人が言い寄ってきたとしてもだ。


『肌に合わない』とは、まさにこのことだろう。





「あら、珍しいわねー大声出しちゃって」


「お邪魔します」




エレーナとアルベルトが入ってきた。




「私ね、ああいう人ダメなのよ。っていうか生まれて初めてよ、あそこまで合わない人と出会ったのは……」



「大抵そういう人に好かれたり、付きまとわれたりするものなのよねー」



エレーナの言葉を聞き、ハルナの顔が一瞬にして青ざめた。




「やめろ、エレン。そういうのは、良くないぞ。本当に……」



「ごめんね、ハルナ……ちょっとふざけ過ぎちゃったみたいね。で、何か言われたりしたの?帰り際に熱い視線を送られてたみたいだけど」



「もうやめてよー、そういう言い方も。何も言われていないし、話しも一言もしていないわよ!?」



「となると、容姿がすごく気に入っちゃったとか? わー!ハルナ、ゴメンゴメンってば!」


ハルナは座っていたソファーの上にぐったりし、天井を仰いでいる。




「エレーナ様は、何も話しかけれられておりませんの?」





ソフィーネがこの部屋にメンバーがそろったことを確認し、人数分のお茶と”アルコール”を持ってきていた。




「流石ソフィーネさん!!……っと、それは後にして。何も言われていませんね、あの”部屋割り”の時も呼び止められてたのはソフィーネさんだけでしたよね?」





ソフィーネは自分を含めた全員分のお茶を淹れ、蒸気が立ち上るカップを乗せた皿を全員の前に置いて行った。




「あの時、何を話していたんですか?」




ハルナが、直接的に質問する。


その答えと言わんばかりに、ソフィーネは腰に付けていた袋から小さな袋を取り出しテーブルの上に置いた。




「えっと……これは?」



「お金……ですよね?」




困惑するハルナとエレーナを余所に、アルベルトが答えに辿りついた。





「……賄賂ですか?」


「その可能性がとっても高いと思いますね」




「え?賄賂って、もっと偉い人とかそういう人に贈る者じゃないんですか?」




ハルナが、驚いて自分の基準と実際に起きたことのギャップに戸惑いを見せる。




「……何を言ってるの、ハルナ。私たちがあなたの言う、その”偉い人”なのよ」




ハルナは、エレーナに説明してもらったがまだ納得していなかった。





「ハルナ様。あなた自身には何も権限や決定権が、今の時点ではありませんね。ですが、あなたの傍で近い人物にそういった権限を持つ者がいたとしたら?」




「――あ」




アルベルトの説明で、ようやく気が付いたハルナだった。



「お気づきになられたようですね。権限はなくとも、王選という国の大きな催しに参加することに選ばれていますからね、ハルナ様は。しかも、王選は次期王を決定する者です。ステイビル王子がもし王になられたら、王の近いお知り合いになられるのですよ?」



ソフィーネの言葉でハルナの脳裏には、ハイレインやアーテリアの顔が思い浮かんだ。





「でも、どうしてソフィーネさんはあの人が用意した私の部屋を拒んだんですか?あれが本当の理由ではないんでしょ?」




ソフィーネは口に紅茶を含み終えたカップを皿と一緒に膝の上に置いて、ハルナの質問に答える。





「その通りです。ハルナ様のあの人物への印象は聞くまでもないですが、あの男があの地位まで行ける器だと思いますか?」




ハルナにつられて、エレーナも首をブンブンと横に振る。



「ということは、コレとか情報を使って弱みを握ってきたように思えるんです」



「ま、まさか盗聴!?」



ハルナがきょろきょろ周りを見回し、自分の身体を両腕で抱きしめて気味の悪さから生じる身体の震えを止めようとする。



「ここは大丈夫です。”お付きの人”にはそこまでの情報は持っていないと踏んでいるのでしょう。だから、あれだけ焦っていたのだと思います」


なるほどと、納得する二人はまた同じ動きで頭を縦に振る。




「それで、次の手段で賄賂ですか?」


「それがあの男の手段なのでしょうね……」




そのことから、全員であの男に注意を払うことで確認し合った。



エレーナが、アルコールの蓋を開けてその話題についての話し合いは終わりを告げた。







しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

いつまでもドアマットと思うなよ

あんど もあ
ファンタジー
二年前に母を亡くしたミレーネは、後妻と妹が家にやって来てからすっかり使用人以下の扱いをされている。王宮で舞踏会が開催されるが、用意されたのは妹のドレスだけ。そんなミレーネに手を差し伸べる人が……。

処理中です...