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復讐実行の章 ※センシティブな内容となります

43:羨ましいわ

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 あの、胎児をコレットに戻した日から10日も経たずに、その日はやってきた。
 腹痛を訴えたコレットが破水したのだ。
 出産場所は、前にマリーズが出産したのと同じ場所である。
 今見ても、とても正妻が後継者を出産するのに相応しい場所とは思えなかった。
 逆に言えば今回、妾のコレットが出産するのに相応しい場所とも言える。
 ここは使用人がむをず出産する時に使う部屋だった。

 主人達には、陣痛で苦しむ声などが届かない距離に在る。
「清潔なのが救いね」
 マリーズが部屋に入るなり呟く。
 産湯を用意する為か、湯を沸かす事が出来る設備が整っている。
 ベッドの上には、うめくコレットが居た。
「初産だからか、陣痛が長くて大変だったのよね」
 マリーズが言うのに、横に立つ魔女が頷く。

「子供も大きかったからねぇ。今回も順調に育ったから大変そうだ」
 魔女がコレットの大きく膨らんだ腹を見る。
「まぁ、大きい割には安産のはずだからね」
 医者らしい顔をして、魔女はコレットに微笑みかけた。


「愛する人の子供が産めて、羨ましいわ」
 マリーズはコレットに話し掛ける。
 ほんの10日前まで、コレットはだった。
 マリーズがジスランに愛されている事は、コレットが1番……コレットと魔法使いが1番、体で知っている。

 コレットは、魔法使いがだった事は知らない。
 だからマリーズが、自分がジスランに愛されている事を知っていて、コレットに嫌味を言っているのだと思っていた。


「うるさいわよ……出てって!」
 コレットは陣痛の痛みを我慢して、マリーズを怒鳴りつけた。
 目には涙を溜めている。
 陣痛の痛みゆえか、見下されたと感じた悔しさか。

「頑張ってね。明日の夕方には生まれるわよ」
 マリーズがコレットに微笑み掛ける。
「な!今はまだ昼よ!?」
 コレットが呪いのようなマリーズの言葉に、怒りをあらわにする。
 それをマリーズは笑顔で受け流した。
 なぜならその言葉に嘘はひとつも無く、ただ単なる経験則だからだ。

「うっ……い、痛……い」
 会話をしていたコレットが突然痛みを訴える。
 陣痛による鋭い痛みが襲ってきたのだろう。
 まだ間隔が広いので、先は長そうだとマリーズは苦しむコレットを見下ろした。



「では、私は戻りますね」
 しばらく無言でコレットを観察してから、マリーズは魔女へと笑顔で挨拶をする。
「今日は僕が行きますから」
 魔女の横で静かに佇んでいた弟子が、部屋を出るマリーズに歩み寄り声を掛けた。

 コレットがコレットに戻ってから、また魔法使いがになり、夜を過ごしていた。
 その交換の為に、いつもは魔女と弟子の二人がを連れて来るのだが、今日はコレットの出産があるので、弟子だけで来るという業務連絡だった。


「あら、では夜はあの家で二人きりね」
 マリーズがからかうように笑う。
 滅多に無い、マリーズの純粋な笑顔。
 マリーズから見たら、弟子は初めて会った時の女の子と見間違う可愛い年下の男の子のままだった。
 その背が自分を見下ろすほど高くなっても、変わらない。

「少しは危機感を感じてくれても……」
 拗ねたような弟子の呟きは、マリーズがその頭を撫でる事で無かった事にされた。
 マリーズが離婚するには、純潔である必要がある。
 計画の協力者である弟子を、マリーズは信用していた。
「2年後にその気持ちが変わらなかったら、心配する事にするわ」
 フフッと笑ってから、マリーズは部屋を後にした。



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前回、魔法使いへの台詞で「後1年ちょっと」とありましたが、2年の間違いでした。すみません(-_-;)
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