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冒険に行……かないので、せめて色々見てみようと思う

第255話:不動産屋

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あるじよ。先程から此方こちらをずっと見ておる者がるのだが、いのか?>
 俺の横で大人しく座っていたガルムが、静かに話し掛けてくる。
 ガルムの視線の先は、世界観ぶち壊しの不動産屋だ。
 扉が少しだけ開いていて、こちらをジーッと見ている人がいた。


 扉の隙間からこちらを見ているのは、スーツ姿の男性だった。多分。
 三揃えのスーツも、世界観ぶち壊しだ。
 非日常に、日常をぶち込んでくる運営。
 そして住人NPCだと思っていたが、鑑定したら異界人プレイヤー表示である。
 マジもんのらしい。

 俺を抜いて三人で何やら考察している悪友達を呼ぶ。
 呼ぶと言うか、横にいるレイを叩く。
「はい。どうしました?ヴィン」
 俺に叩かれたレイはすぐに反応してくれたが、俺は怪しい運営さんから目が離せない。
 返事をしない俺を見て、俺の視線を追って、レイも異様な男運営さんに気付いたようだ。
 まだ火蜥蜴サラマンダーの卵の話をしていたジルドとオーベを身振りで呼んだのだろう。二人の話し声も止まった。


「え?何あれ、怖~」
 オーベが素直な感想を漏らす。
「鑑定したか?異界人プレイヤー表示だぞ」
 ジルドも鑑定したようだ。
「前にクランハウスを買った時は、普通に住人NPCでしたよね?」
 普段はやはり住人NPCが対応するようだ。
 そうだよな。店先のネオン看板に『20時間対応 年中無休』って出てるし。

「建物の中に居るが、実は普通の異界人プレイヤーで、お前等のファンって事はないか?」
 一応の可能性として聞いておく。
「いえ。あの不動産屋は、敷地内は個別対応で異空間になってます。出入りで人とぶつかる心配はないし、混んでいて入れない事もありません」
「あの不動産屋にの様子が窓から見えたりするらしいが、通常は中に居る異界人プレイヤーが見える事はないはずだ」
 それなら、異界人プレイヤー表記で店内にいるあの男は、間違いなく運営だな。


「今日はやめておくか」
 早めに兎の家を用意してやりたかったが、1日くらいなら延ばしても良いだろう。
 従魔全員にガルムに乗るように言って、俺もレイに乗せてもらう。
 自力でも乗れるのだが、悔しい事にこの方が早い。
 クルリと方向転換して、歩き出した。

「ままま!まっ!待って!何か買いに来たんだよね?何で帰るの!?」
 不動産屋から怪しい男が飛び出して来て、ガルムの前に両手を広げて立ち塞がった。
 何でって、ねえ?「それは貴方が居るからです」とは、さすがに言えない。
「貴方が居るからですね」
 あ、レイがズバッと言いました。


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