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冒険に行……かないので、せめて色々見てみようと思う
第244話:閑話:白狐と月兎の大?冒険
しおりを挟む『日出処』
ここは、異国情緒溢れる幻想世界の中で唯一日本的な場所である。
時代的には江戸時代のようで、侍・芸者・忍者と外国の観光客が夢見ている日本そのものである。
だが、そこは幻想世界。
しっかりと魔法の世界でもある。
『日出処』に居る魔物や魔獣は、一般的に妖怪と呼ばれるモノが殆どで、ここでしか手に入らない召喚獣などもいる。
ここでしか転職できない職業や、種族もある。
ミロの天狗は、ここでしか成れない種族だ。
そして、孤立した島国だから残っている不思議な習慣もある。
正月期間の4日間は、『日出処』が封鎖されてしまうのだ。
誰も、それこそ魔物や魔獣も出入りができなくなる。
そして、『日出処』生まれのものは、正月には必ず帰省する。
住人は勿論、魔物や魔獣達もなぜかその習慣に従うのだ。
テイムされればまた違うのかもしれないが、白狐と月兎はまだフリーの魔獣なので、正月は『日出処』に帰る事になっていた。
<気を付けて行ってくるのだぞ>
ガルムが白狐と月兎に声を掛ける。
<帰って来られるの~?>
テラの問いに、二匹はコクンと頷く。
森の中に建てて貰った小屋を自分の家と認識している。前に咲樹が言っていた『マーキング』である。
だから帰っては来られる。
ただし、自力で。
『日出処』へ帰るのは念じれば帰れるので一瞬だが、こちらへ帰って来るのは正規のルートで地道に走って帰って来るしかない。
誰のペットにもなっておらず、ヴィンにテイムしてもらっているわけでも無いので、立場としては野良の魔獣だ。
冒険者に狩られないとも限らない。
それでも二匹は、正月が終わったら『しきしま』へ帰って来るつもりだった。
<きゅきゅ!>
ヨミにも気を付けて!と見送られ、二匹は『日出処』へと帰って行った。
正月期間を『日出処』で過ごした二匹は、『しきしま』目指して島を出た。
途中までは、とても順調だった。
異界人が殆どおらず、偶に他の魔獣に遭遇したが、『日出処』から段々とレベルの低い土地へと向かっているので、特に問題はなかった。
遭遇した魔物を倒し、食料にしたりもした。
それが変わったのが、『日出処』を出てから20日位過ぎた頃……そう、カラフル兎のイベントが終了してからである。
急に異界人に遭遇する確率が上がった。
白狐と月兎は勿論知らなかったが、イベントが終了した為に、皆の行動範囲が元に戻ったのだ。
なるべく見つからないように森の中を進んでいたが、異界人の冒険者パーティーと遭遇してしまった。
しかも運悪く、普段は『日出処』よりもレベルの高い地域を活動拠点にしている実力を持つパーティーだった。
「おい!白狐と月兎がこんな地域にいるぞ!」
「マジか!?はぐれだったら、経験値が高いとか特典あるんじゃね?」
「従魔じゃないの?」
「いや、鑑定には従魔とは出ない」
「ラッキー!雑魚ばっかりで飽きて来たんだよな」
あぁ、あと少しであの居心地の良い場所に戻れたのに……
白狐と月兎がヴィンとの再会を諦めた時だった。
〈テイマーの許可なく戦闘出来ません〉
アナウンスが響いた。
―――――――――――――――
ゲーム内の正月は四日間。現実で元旦の0時~10時になります。
現実での正月をゲームにこもりきりにしないよう、運営の配慮。
だが、正月イベントは三箇日やってしまう矛盾(笑)
応援ありがとうございます!
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