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34.
しおりを挟む私とルパートが入場すると、後ろの扉が閉じられました。
パーティーの開始時間になったようです。
この後、遅刻してきた者は、本日の主役である王太子の挨拶が終わるまで入場出来ません。
ただし今日に限っては、挨拶の後にパーティーが続いているのか謎ですが。
進軍ラッパの様な音が会場へ響き渡ります。
そして、王族の入場が告げられました。
皆が居る場所より、階段で上がった所にある王族用の入場扉が開かれます。
王族が座る予定の椅子の横にお父様が立っておりますが、いつも以上に険しい表情ですわ。
それでは何かあると、会場の皆様に気付かれてしまうではありませんか。
「まぁ旦那様ってば、笑いを堪えていらっしゃるわ」
ルパートをお母様の所へ連れて行くと、お父様を見てウフフと笑っておりました。
あの鬼のような形相が、笑いを堪えている表情だったのですね。
さすが夫婦です。私にはわかりませんでした。
そしてお父様の表情の理由はすぐに判りました。
王と王妃の後に、王太子とフローラが入場して来ました。
会場がざわめきます。
フローラが一緒に居る事に対して、会場の高位貴族が嫌悪の表情をしている事に気付いていないのでしょうか?
演出を狙っているのか、フローラは半歩後ろに居て、王妃と王太子の間から見えません。
しかしお父様の視線がフローラの腕の中ですわね。
私はお母様とルパートへ断りを入れ、元生徒会役員の皆様が集まっている場所へ移動しました。
皆様、とても素敵な笑顔です。
「見事に馬鹿を晒しているな」
辛辣な言葉を呟いたのは、タイラーです。
ネイサンが言いそうな台詞だったので、ちょっと驚いてしまいました。
「まぁ!タイラーったらいくら嬉しくても浮かれ過ぎよ」
そう言うマリリナ様も満面の笑みだ。
私はさすがに今の状況で笑顔を見せるわけにはいきませんので、顔の前に扇を広げております。
「アンシェリー様。目元に力をお入れくださいませ。弛み過ぎですわ」
カレーリナに耳元で囁かれてしまいました。
笑っているのが目だけでも判るほど、私の表情は緩んでいたようです。
「皆の者、本日は王太子ヤコブソンの為に集まってくれ、ご苦労だったな」
王の挨拶が始まった。
相変わらず不遜で不愉快ですわね。
そして王太子の名前、そんな名前でしたわね。
口に出すのも嫌なので、今回は一度も呼んだ事が無いので忘れておりましたわ。
「今日はめでたいことが重なっているので、皆、心して聞くように!」
はい。勿論でございます。
「ヤコブソンは今日が誕生日であり、立派な成人となる。そして更にめでたい事に、王族に立派な後継ぎが生まれたのだ!」
王妃と王太子の間から、フローラが前へと進み出ます。
その腕の中には、生まれて間もない赤子が抱かれておりました。
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