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 王太子の成人祝と誕生日祝のパーティーで、とても素敵なプレゼントが贈られましたわ。

 私に。

 王が公の場で大々的に発表してくださったのです。
 王太子の血を受け継いだ男児の誕生を!
 を抱えるのは、学園を卒業していない子爵令嬢です。
 まだ正妃も迎えていないのに、後継ぎですか。
 周りの高位貴族からは失笑が漏れています。


「王陛下、発言をお許しください」
 お父様がにこやかに発言の許可を求めます。
 何も知らなければ、祝の言葉でも言うのかと誤解しそうですわ。
「なんだ、言ってみろ」
 王も機嫌良く許可しました。

「そもそも、そちらの令嬢はどなたなのですか?本来王家の方しかこちらの席にはいらっしゃらないはずですが……」
 戸惑った様子で問い掛けるに、王が後ろの席を指差します。
「ちゃんと席が四つ有るだろうが!王太子の妻で王子の母だ!」
 まぁ!いつの間に結婚なさったのかしら?

「そちらの席は、我が娘であり王太子殿下の婚約者であるアンシェリーの席です。そもそも、殿下は結婚されておりませんが」
「王太子は、卒業と同時に婚姻届を提出している!」
 お父様が態とらしく困った顔をしております。
「残念ながら議会に上がって来ておりませんので、どこかで却下されたのでしょう」


 一人の初老の男性が進み出ました。
 大教会の神官長です。

 結婚の許可を行うのは、王族だろうが貴族だろうが平民だろうが、変わらず教会です。
 平民は近所の小さな教会で、貴族は領地にある教会や王都の教会で許可を貰えます。
 しかし王族だけは大教会の許可が必要なのです。
 書類を提出して、許可を貰うまでの確認をおこたったのでしょう。

「大教会は、王太子殿下とフローラ メルデス子爵令嬢の結婚を許可しておりません」
 神官長がハッキリと宣言してくださいました。
「そして、未来永劫認める事は無いでしょう」
 続いて言われた言葉に、王太子の顔が真っ赤に染まります。
 血管が切れないのか心配になるほどです。
「なぜだ!後継ぎまで生んだ、素晴らしい女性だぞ!」
 興奮した王太子は気付いておりませんが、会場内の貴族が移動を始めました。

 高位貴族が王族の居る場所を離れ、私達の側へと動き出したのです。
 この茶番劇が終わった瞬間に、皆様、私に挨拶をするつもりなのでしょうね。
 王太子の行末を予想したのでしょう。
 あまりにも馬鹿過ぎる発言ですものね。
 そして王も王妃も、王太子と同じレベルだと露呈しました。

 大教会が許可してない結婚に、結婚していないのに生まれた男児。
 その意味を理解していないのは、もしかしたらあの一段高い所に居る彼等だけなのかもしれません。


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