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第十三章
第221話 再会と報告
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近衛隊隊長のリマ・ブロシオンが、満面の笑みで最敬礼していた。
「リマ! 久しぶりだね!」
「アル様! お待ちしておりました!」
俺とレイは馬から降りた。
「リマまでその対応なのかい?」
「我々騎士団にとって、女王陛下のご命令は絶対なのです! というのは本当だけど、アタシは例外だよアル君。陛下はアタシとレイの関係をご存知でいらっしゃるからな。フハハハ」
レイが笑顔でリマの正面に立つ。
「わざわざリマがお出迎え?」
「当たり前だろ? それにハロルのビル隊長からの連絡で、今日到着すると分かっていたからな」
「ふふふ、近衛隊隊長自らありがとう」
「さっ、行こう。陛下が首を長くしてお待ちだ」
横には小隊長のリアナ・サンドラもいた。
レイがリアナの肩に手を置く。
「リアナも久しぶりね。会えて嬉しいわ。お出迎えご苦労様」
「ハッ! とととと、とんでもないことでございます!」
頬を紅潮させ、直立不動になっている。
相変わらずレイの前では緊張するようだ。
そして、リアナは俺の顔を見た。
「アル様もお待ちしておりました!」
「それって陛下のご命令?」
「左様でございます」
「それじゃあ仕方ないか。分かったよ。でも、俺はリアナのことを友達だと思ってるからね」
「もうバカ。分かってるよ……。わ、分かっております!」
「アハハ、無理しないで」
顔を真っ赤にしたリアナの表情は、とても嬉しそうだった。
俺たちはリマが用意した馬車に乗り込み、検問を通ることなく王城へ入る。
馬車は黒塗りで金色の縁取りがされており、美しい彫刻が細部まで施された王家専用の豪華仕様だ。
馬車の左右で、乗馬した近衛隊長のリマと小隊長のリアナが警護している。
車窓から外の様子を覗くと、その仰々しさから市民が何事かと興味津々で馬車を見ていた。
「レイ、なんだか凄いことになってるぞ」
「ふうう、ヴィクトリアが張り切っているようね」
レイは半ば諦めたような、それでいて嬉しそうな表情だった。
馬車は広大な西区から中央区に入り、ようやくイエソン城に到着。
白亜の城は、その美しさから白鳥の城と呼ばれている。
入城の際には持ち物チェックが行われるのだが、俺とレイは免除で、さらに帯剣も許された。
レイに言わせると、これは特例中の特例だそうだ。
きらびやかな廊下を進み、謁見室の手前にある控室へ入る。
数年前に俺は、前陛下と即位前のヴィクトリア姫殿下に謁見した。
今は横にレイがいるため安心しているが、それでも陛下への謁見は緊張する。
「ふうう」
俺は緊張をほぐすために、大きく息を吐く。
すると、レイが俺の正面に立つ。
少しつま先を伸ばして、俺の髪を整えてくれた。
「身だしなみを整えなさい」
「あ、ありがとう」
俺は剣をベルトごと外し、控室のテーブルに置く。
帯剣を許されたとはいえ、俺の剣は大きすぎるからだ。
「どうぞ、お入りください」
執事の声が聞こえると同時に、控室の正面にある両開きのドアが開いた。
謁見室から続いている赤い絨毯。
その先には、大きな椅子に座るヴィクトリア女王陛下。
右にはジル・ダズ騎士団団長、左には近衛隊隊長のリマが立っている。
こうして見ると、ジルもリマも凄い迫力だ。
さすがは騎士団最高戦力である。
赤い絨毯を進み、部屋の中央まで進む。
そして、俺とレイはその場に跪く。
「女王陛下におかれましては、ご機嫌麗しく恐悦至極に存じます」
「アル! 普通にして!」
ヴィクトリア女王陛下が椅子から立ち上がり、俺たちの前まで歩み寄る。
屈託のない笑顔が美しい。
「二人とも久しぶりね!」
「まったく、もう……。分かったわよ」
レイが立ち上がったので、俺もそれに続く。
「アル、レイ。ヴェルギウス討伐、本当にご苦労様でした。イーセ王国国王として感謝します」
そう言いながら、陛下が俺の手を握った。
「あ、い、いや、わ、私は自分にできることをしたまでです」
「アル、何を緊張しているのよ? 私とあなたの仲でしょう?」
「どんな仲よ!」
レイが怒っていた。
「うふふふ、今日はもう予定を入れていないから、ゆっくりあなたたちの話を聞かせてもらうわよ。明日は王国から正式な感謝の式典で、夜は晩餐会よ」
「従いますわ。ヴィクトリア女王陛下」
レイが優雅にお辞儀をする。
結局いつもの会話となってしまったが、一応正式な挨拶を終え、俺たちは陛下の執務室へ移動した。
俺とレイは、細部まで彫刻された美しいテーブルにつく。
対面の上座には陛下が座っている。
その左右に立つジルとリマ。
メイドのマリアが紅茶を淹れてくれた。
マリアの紅茶は本当に美味しい。
俺はマリアが淹れる紅茶が好きだった。
レイが紅茶を少し口にすると、大きく息を吐く。
「はああ。あなたはいつになったら、ちゃんとした対応ができるようになるのかしらね」
「レイ以外はしっかりと対応してます! ねえ、ジル」
直立不動のジルが敬礼する。
「ハッ! 左様でございます。レイ様以外の方には、完璧な応対をされております」
「あなた、相変わらず嫌味っぽいわねえ」
レイとジルだからできる会話だろう。
その会話を聞いた陛下は、懐かしそうな表情で笑っていた。
「ねえ、あなたたちはいつまで滞在するの?」
「特に決めてないわ。クエストの報告と建国関連の調整次第ね。それが終わり次第帰還するわ。それと帰りはアセンやラバウトにも寄りたいのよ」
「へえ、そうなのね。一週間は滞在できるかしら?」
「ええ、大丈夫よ。シドからはゆっくりして来るように言われているもの」
「じゃあ、私とたくさんお話しましょう」
「あのねえ、あなたは仕事があるでしょ?」
「レイと話すのが仕事よ。うふふふ」
「まったく……。日々の仕事が終わってからね」
「分かったわ。でも、今日はずっと一緒よ?」
「仕方ないわね。いいわよ」
陛下はとても嬉しそうに手を叩いた。
「やった! じゃあ、二人とも少し休んでいて。あとで部屋へ行くわ。お茶しましょう」
「はいはい、分かりました」
俺たちはメイドのマリアに案内され、執務室の扉に向かって歩く。
扉の手前で、レイが陛下に振り返った。
「そうだ。ヴィクトリアにもう一つ報告があるのよ」
「報告? 何? どうしたの?」
「私、アルと結婚したわ」
「な、なんですって!」
「今回はその報告も兼ねてるのよ」
「ど、どうして先に言ってくれないのよ!」
「あなたに準備させないためよ。ふふふ」
「マ、マリア、今から結婚パーティーに切り替えなさい!」
マリアが深々と頭を下げる。
「かりこまりました」
「マリア、不要よ!」
「レイ様、私はヴィクトリア女王陛下の忠実なメイドでございます」
マリアが速歩きで退出。
俺は見逃さなかった。
マリアの満面の笑みを。
「もう! マリアも楽しんでるわね!」
「明日のパーティーは盛大に行うわ! レイの結婚パーティーよ!」
「はああ、やっぱりこうなってしまうのね……」
レイは両手を広げ溜め息をつく。
どうやら諦めたようだ。
「リマ! 久しぶりだね!」
「アル様! お待ちしておりました!」
俺とレイは馬から降りた。
「リマまでその対応なのかい?」
「我々騎士団にとって、女王陛下のご命令は絶対なのです! というのは本当だけど、アタシは例外だよアル君。陛下はアタシとレイの関係をご存知でいらっしゃるからな。フハハハ」
レイが笑顔でリマの正面に立つ。
「わざわざリマがお出迎え?」
「当たり前だろ? それにハロルのビル隊長からの連絡で、今日到着すると分かっていたからな」
「ふふふ、近衛隊隊長自らありがとう」
「さっ、行こう。陛下が首を長くしてお待ちだ」
横には小隊長のリアナ・サンドラもいた。
レイがリアナの肩に手を置く。
「リアナも久しぶりね。会えて嬉しいわ。お出迎えご苦労様」
「ハッ! とととと、とんでもないことでございます!」
頬を紅潮させ、直立不動になっている。
相変わらずレイの前では緊張するようだ。
そして、リアナは俺の顔を見た。
「アル様もお待ちしておりました!」
「それって陛下のご命令?」
「左様でございます」
「それじゃあ仕方ないか。分かったよ。でも、俺はリアナのことを友達だと思ってるからね」
「もうバカ。分かってるよ……。わ、分かっております!」
「アハハ、無理しないで」
顔を真っ赤にしたリアナの表情は、とても嬉しそうだった。
俺たちはリマが用意した馬車に乗り込み、検問を通ることなく王城へ入る。
馬車は黒塗りで金色の縁取りがされており、美しい彫刻が細部まで施された王家専用の豪華仕様だ。
馬車の左右で、乗馬した近衛隊長のリマと小隊長のリアナが警護している。
車窓から外の様子を覗くと、その仰々しさから市民が何事かと興味津々で馬車を見ていた。
「レイ、なんだか凄いことになってるぞ」
「ふうう、ヴィクトリアが張り切っているようね」
レイは半ば諦めたような、それでいて嬉しそうな表情だった。
馬車は広大な西区から中央区に入り、ようやくイエソン城に到着。
白亜の城は、その美しさから白鳥の城と呼ばれている。
入城の際には持ち物チェックが行われるのだが、俺とレイは免除で、さらに帯剣も許された。
レイに言わせると、これは特例中の特例だそうだ。
きらびやかな廊下を進み、謁見室の手前にある控室へ入る。
数年前に俺は、前陛下と即位前のヴィクトリア姫殿下に謁見した。
今は横にレイがいるため安心しているが、それでも陛下への謁見は緊張する。
「ふうう」
俺は緊張をほぐすために、大きく息を吐く。
すると、レイが俺の正面に立つ。
少しつま先を伸ばして、俺の髪を整えてくれた。
「身だしなみを整えなさい」
「あ、ありがとう」
俺は剣をベルトごと外し、控室のテーブルに置く。
帯剣を許されたとはいえ、俺の剣は大きすぎるからだ。
「どうぞ、お入りください」
執事の声が聞こえると同時に、控室の正面にある両開きのドアが開いた。
謁見室から続いている赤い絨毯。
その先には、大きな椅子に座るヴィクトリア女王陛下。
右にはジル・ダズ騎士団団長、左には近衛隊隊長のリマが立っている。
こうして見ると、ジルもリマも凄い迫力だ。
さすがは騎士団最高戦力である。
赤い絨毯を進み、部屋の中央まで進む。
そして、俺とレイはその場に跪く。
「女王陛下におかれましては、ご機嫌麗しく恐悦至極に存じます」
「アル! 普通にして!」
ヴィクトリア女王陛下が椅子から立ち上がり、俺たちの前まで歩み寄る。
屈託のない笑顔が美しい。
「二人とも久しぶりね!」
「まったく、もう……。分かったわよ」
レイが立ち上がったので、俺もそれに続く。
「アル、レイ。ヴェルギウス討伐、本当にご苦労様でした。イーセ王国国王として感謝します」
そう言いながら、陛下が俺の手を握った。
「あ、い、いや、わ、私は自分にできることをしたまでです」
「アル、何を緊張しているのよ? 私とあなたの仲でしょう?」
「どんな仲よ!」
レイが怒っていた。
「うふふふ、今日はもう予定を入れていないから、ゆっくりあなたたちの話を聞かせてもらうわよ。明日は王国から正式な感謝の式典で、夜は晩餐会よ」
「従いますわ。ヴィクトリア女王陛下」
レイが優雅にお辞儀をする。
結局いつもの会話となってしまったが、一応正式な挨拶を終え、俺たちは陛下の執務室へ移動した。
俺とレイは、細部まで彫刻された美しいテーブルにつく。
対面の上座には陛下が座っている。
その左右に立つジルとリマ。
メイドのマリアが紅茶を淹れてくれた。
マリアの紅茶は本当に美味しい。
俺はマリアが淹れる紅茶が好きだった。
レイが紅茶を少し口にすると、大きく息を吐く。
「はああ。あなたはいつになったら、ちゃんとした対応ができるようになるのかしらね」
「レイ以外はしっかりと対応してます! ねえ、ジル」
直立不動のジルが敬礼する。
「ハッ! 左様でございます。レイ様以外の方には、完璧な応対をされております」
「あなた、相変わらず嫌味っぽいわねえ」
レイとジルだからできる会話だろう。
その会話を聞いた陛下は、懐かしそうな表情で笑っていた。
「ねえ、あなたたちはいつまで滞在するの?」
「特に決めてないわ。クエストの報告と建国関連の調整次第ね。それが終わり次第帰還するわ。それと帰りはアセンやラバウトにも寄りたいのよ」
「へえ、そうなのね。一週間は滞在できるかしら?」
「ええ、大丈夫よ。シドからはゆっくりして来るように言われているもの」
「じゃあ、私とたくさんお話しましょう」
「あのねえ、あなたは仕事があるでしょ?」
「レイと話すのが仕事よ。うふふふ」
「まったく……。日々の仕事が終わってからね」
「分かったわ。でも、今日はずっと一緒よ?」
「仕方ないわね。いいわよ」
陛下はとても嬉しそうに手を叩いた。
「やった! じゃあ、二人とも少し休んでいて。あとで部屋へ行くわ。お茶しましょう」
「はいはい、分かりました」
俺たちはメイドのマリアに案内され、執務室の扉に向かって歩く。
扉の手前で、レイが陛下に振り返った。
「そうだ。ヴィクトリアにもう一つ報告があるのよ」
「報告? 何? どうしたの?」
「私、アルと結婚したわ」
「な、なんですって!」
「今回はその報告も兼ねてるのよ」
「ど、どうして先に言ってくれないのよ!」
「あなたに準備させないためよ。ふふふ」
「マ、マリア、今から結婚パーティーに切り替えなさい!」
マリアが深々と頭を下げる。
「かりこまりました」
「マリア、不要よ!」
「レイ様、私はヴィクトリア女王陛下の忠実なメイドでございます」
マリアが速歩きで退出。
俺は見逃さなかった。
マリアの満面の笑みを。
「もう! マリアも楽しんでるわね!」
「明日のパーティーは盛大に行うわ! レイの結婚パーティーよ!」
「はああ、やっぱりこうなってしまうのね……」
レイは両手を広げ溜め息をつく。
どうやら諦めたようだ。
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