鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜

犬斗

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第十三章

第222話 緊張のアル

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「レイ様! ご結婚されたのですね。おめでとうございます! アルさんもおめでとうございます!」
「レ、レイ! 本当にアル君と結婚したんだな! あのレイが……。おめでとう!」

 陛下の両脇に立っていたシドとリマが祝福してくれた。
 俺たちが二人にお礼を伝えると、陛下はレイの左手の指輪に気付いたようだ。

「レイ、その指輪が結婚指輪ね」
「ええ、そうよ」
「とても綺麗……。その蒼い石は何かしら?」
「アルがアフラ火山で採った蒼星石よ。それをローザが指輪にしてくれたの」
「ローザって、あの神の金槌シャイオンのローザ?」
「そうよ」
「す、凄いわね。アルって鉱夫としても一流なんでしょう? アルが採った蒼星石をローザが加工って、それはもう国宝クラスじゃない……。本当に素敵ね」
「ありがとう。これは私の宝物よ」
「美しいわ。心から祝福します。レイ姉様」
「ふふふ、次はあなたの番ね。ヴィクトリア」
「もう! 本当に意地悪ね! ……でも、アルもレイも本当におめでとう」

 国王陛下から直接の祝福なんて、普通はありえない。
 本当にレイの凄さを実感する。

 その後、俺たちはメイドに案内され宿泊部屋へ移動。
 部屋に入ると、あまりの豪華さに俺は声も出なかった。

「ここはね、国賓の、それも他国の王族が宿泊する特別な部屋なのよ。イエソン城の中で最も豪華な部屋かもしれないわ」
「す、凄すぎて言葉も出ないよ」

 黄金に輝く壁には、有名画家の絵画がいくつも飾られている。
 天井を見上げると、豪華絢爛なシャンデリア。
 さらに緻密に描かれた天井画が広がる。
 床には槍豹獣サーべラルの毛皮のカーペット、一角虎ガーラの角で作られた彫刻品、鉤爪鷲竜アトルスの羽の扇子など、モンスターの超高級素材で作られた調度品がいくつも並んでいた。

 部屋には八人のメイドが待機しており、深々とお辞儀をしている。
 俺たちはメイドに案内され、まずは風呂に入り用意された室内着に着替えた。

「アル様、レイ様。本日はこちらのお部屋でヴィクトリア陛下とお食事でございます。それまでは明日の準備をさせていただきます」
「わ、分かりました。ありがとうございます」

 八人のメイドが四人ずつに別れた。
 レイはメイドたちと顔見知りのようだ。
 仲良さそうに話している。
 
 俺は四人もいるメイドに緊張しながら、服のサイズを測ってもらい、マッサージや散髪をしてもらった。
 レイは別室へ移動。
 オイルマッサージや髪を整えてもらっているようだ。

 それらが終わると、メイドが紅茶を淹れてくれた。
 大牙猛象エレモスの牙から作られた超高級なテーブルで、静かに紅茶を飲む。
 その紅茶カップには、繊細で芸術的な絵付けがされている。
 これを割ったら大変なことになるだろう。

 レイが別室から戻り、テーブルについた。

「あら、アル。髪がさっぱりしたわね。いいじゃない」
「うん」
「マッサージも気持ち良かったでしょう?」
「うん」

 あまりにも緊張して何も話すことができない。
 そんな俺の顔を見て、レイが吹き出した。

「ふふふ、あなた緊張しすぎよ?」
「だ、だって、こんなこと初めてだから……」
「その気持ちは分かるけど、普段通りの振る舞いをしなさい」
「そ、そんなこと言われても」
「これからこういう機会が増えるのよ? それに、あなたがおどおどしてると、他の者たちが軽く見られてしまうわ」
「そ、そうか! 分かった。頑張るよ」

 レイの言うことはもっともだ。
 これから国の代表になる予定の俺が、消極的な振る舞いをしてしまえば仲間たちが舐められる。
 俺なんかよりも優秀な皆だ。
 俺がバカにされるのはいいが、皆が軽く見られるのは避けたい。
 自信を持って行動しよう。

 そんなことを考えていると、部屋に入ってきたメイド長のマリアが新しい紅茶を淹れてくれた。

「アル様、こちらの紅茶はリラックスの効果がございます」
「あ、ありがとうございます」

 レイが紅茶カップを手に持つ。

「ふふふ。まずはマリアと普通に話せるようにならなきゃね」

 マリアが嬉しそうに、レイに向かってお辞儀をした。

「で、マリア。明日の様子はどうなの?」
「元々明日は、ヴェルギウス討伐の式典と晩餐会でした。宰相や騎士団はもちろん、貴族、元老院、役人、教団など国家の要職は全て参加予定です」
「ええ、聞いているわ」
「それに加えて、陛下のご命令で結婚パーティーも組み込まれました」
「や、やっぱり」
「ただ、やはり時間的に難しいということで……」
「本当に! はあ、良かったわ」
「違うのです。明日は予定通り式典と晩餐会を行います。明後日に改めて結婚式、及び結婚パーティーを行うことになりました。明日のアル様のスーツ、レイ様のドレスはもちろん用意しておりましたが、現在は王国最高の職人が、数十人がかりでウェディングドレスを仕立てています。ですので、明後日には間に合います」
「もう、ヴィクトリアったら……。やりたい放題ね。職人たちに無理させないようにしてよ」
「お心遣いありがとうございます」

 マリアはとても柔らかな印象で、綺麗な女性だった。
 レイの話によると、マリアのフルネームはマリア・ベル。
 年齢はレイと同じで、昔から陛下のメイドとして仕えている。
 そのためレイとも仲が良く、陛下とレイのお茶会では必ずマリアが紅茶を淹れるそうだ。

「それではレイ様、私は結婚式の準備がございますゆえ、一旦失礼いたします。もし何かあれば、何なりとメイドにお申しつけください」
「分かったわ。ありがとう」

 優雅にお辞儀するマリア。
 金色の長髪をなびかせ、そのまま部屋を出ていった。

 それでも部屋にはメイドが八人もいる。
 正直、気まずい。
 人の気配に敏感な俺にとって、八人のメイドは多すぎた。

「あなたって、どんなモンスターが相手でも動じることなんてないのにね。ふふふ」

 そんな俺の様子を見て、レイは笑っていた。
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