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第十一章
第172話 レイの進化
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稽古が終わり、レイと宿へ戻ってきた。
サルガの復興はかなり進んだことで、俺たちは騎士団から一軒の宿を宿舎兼事務所として提供してもらっていた。
部屋割は結婚したシドとオルフェリア。
俺とレイとエルウッドだ。
夕食の後、部屋に戻ったレイが自分の身体をさすっている。
「以前の山での特訓ではあなたが傷だらけだったけど、今では私が傷だらけね」
「ごめん。大丈夫?」
「ふふふ、いいのよ。本当にありがとう。今はまだあなたに敵わないけど、もう少しで何かが見えそうなの」
「分かったよ。じゃあ、明日も本気で行くよ」
「ええ、お願いします。師匠」
「ちょっと! やめてよ!」
「ウォウォウォ」
会話を聞いていたエルウッドが笑っていた。
◇◇◇
ヴェルギウス襲撃から二ヶ月が経ち、壊滅状態だったサルガはようやく落ち着きを見せてきた。
瓦礫の処分は完了。
新たな建物が次々と建築開始。
騎士団団長ジル・ダズの復興指示は素晴らしく、予想以上のスピードで元に戻りつつある。
「せっかくだから計画的に街を作り直します」
ジルは被害の大きかった街の中心部から、円形に広がるように区画を作り上げていった。
街道は街の中心地から放射状に伸びている。
交通の便は格段と良くなるだろう。
街の中心には、役所や騎士団の駐屯地を建設。
その周りを商業区とし、商店街や市場を作る。
襲撃で死亡した人々の慰霊碑も建てた。
ジルは各ギルドへ誘致も行う。
それにより、国内規模の大組織である商人ギルドや、地方規模の鉱夫ギルドや農夫ギルドなどの各組合が施設を建設。
建設には国から補助金を出していた。
そして世界規模の冒険者ギルドも、元ギルマスのシドが設計した新しいギルドの施設を建設。
元々サルガの街は冒険者の街として有名だった。
治安の良いイーセ王国では珍しく冒険者が活躍できる地域とあり、かなりの数の冒険者がこの街を拠点とし活動していた。
ヴェルギウスの襲撃で三千人の冒険者が死亡したが、ジルはシドと話し合い、改めて冒険者の街として復興を約束。
冒険者ギルド専用の区画を作り、そこをギルド基地とした。
ギルド基地を中心に、冒険者向けの宿屋や商店が発展していくことになるだろう。
また、ジルは他の街から移住者を募った。
移住者には引っ越しの補助金を支給。
特に農夫には、準備金を用意するほどの手厚さだった。
「人を増やし経済を回します。各ギルドも賑やかになり、街はすぐに復興するでしょう」
ジルは街作りにも精通していた。
◇◇◇
今日も俺とレイは稽古だ。
シドは各所へ連絡したり、設計図を書いている。
オルフェリアはまだ入院しているが、間もなく復帰できるそうだ。
稽古の休憩中に、俺は街作りを行っているジルについて考えていた。
「やっぱりジルさんって優秀なんだね。初めて会った時は変な人だと思ってたよ」
「そうね。変人には変わりないけど、私が退団する時に次期団長で指名したほどよ。本人は断ってきたけど……。今思い返してもイラッとするわ。ふふふ」
「騎士団のことだけではなく、街作りの計画までするって凄いよ」
「本当にそうね。様々な知識を持ち合わせているわ。しかもあの男は、ああ見えて戦っても強いのよ」
「そうなの?」
「騎士団団長は個人レベルの強さも必要よ。今度稽古に呼ぼうかしら」
「いいね! 俺も勉強になるよ!」
俺は対人の戦闘経験が圧倒的に少ないので、今度手合わせしてもらおうと考えていた。
「アル、レイ!」
稽古場にシドがやってきた。
「先程騎士団から連絡をもらってな。火球は十二発、鱗は五十枚ほど集まったぞ」
「十二発か。となると、やはり一度の戦闘で六発が限度と見ていいかな」
「うむ、そうだな。断定は危険だが、知識として持っていていいだろう」
三人で昼食を取り、俺とレイは稽古を再開。
弟子の俺が言うのも失礼だが、レイは相当腕を上げていた。
「レイのスピードは人間離れしてる。俺の体感だとダーク・ゼム・イクリプスのスピードはもう越えてるよ」
「本当に?」
「ああ、あの残像が出るほどのスピードでも、今のレイは捉えられないと思う。それに最近はパワーも上がってるよ? 突きを剣で弾くのが辛くなってきた」
「良かった……。でもまだまだよ。ねえアル、私の突きを受けてもらえるかしら?」
「分かった」
レイが構え、神速の突きを放つ。
俺はいつものように黒爪の剣で突きを弾く。
一段、二段、そして三段。
全て弾いたと思った瞬間、次撃が飛んできた。
「グッ!」
何とか弾くも、さらにもう一撃。
「五段だと!」
最後の一撃は、正確に俺の喉を狙っていた。
もう弾く余裕はない。
辛うじて黒爪の剣を横にして、剣がこすれる摩擦で勢いを削ぐ。
火花が飛び散る時間が長い。
突きを頭上に受け流した直後、俺は前転してレイから離れる。
すぐに起き上がり、レイと対峙した。
「す、凄い。五段突き……。今のは危なかった。五段目を弾く余裕はなかったよ」
「まだよ」
「え? まだ?」
「私のイメージでは七段突きなのよ」
「な、七段!」
「ええ、きっとそこが私の到達点だと思うの」
「今の五段突きも、全てが正確に急所を狙っていたというのに……。これで七段となると、正直俺でも躱せないよ」
「何言ってるのよ。あなた五段目の後に前転したけど、本当は反撃する余裕があったでしょ?」
「そ、そんなことないよ!」
「全く、あなたはどこまで強くなるのかしらね。勝ったと思ったのに、引き分けにもならなかったわ」
稽古を見ていたシドが笑っていた。
「ハッハッハ。レイもいよいよ人外の道へ進み始めたな。二千年生きているが、レイほどの剣士はいなかったぞ」
「それ褒め言葉?」
「もちろんだ。君は世界最高の剣士だ。間違いない」
「じゃあアルは?」
「アルはもうこちら側だ。人間と比べるものではないぞ。ハッハッハ」
これまで化け物やら人外と言われてきたが、いよいよ比較する土俵が変わったようだ。
だが、正真正銘の不老不死であるシドと同じにされては困るのだが。
サルガの復興はかなり進んだことで、俺たちは騎士団から一軒の宿を宿舎兼事務所として提供してもらっていた。
部屋割は結婚したシドとオルフェリア。
俺とレイとエルウッドだ。
夕食の後、部屋に戻ったレイが自分の身体をさすっている。
「以前の山での特訓ではあなたが傷だらけだったけど、今では私が傷だらけね」
「ごめん。大丈夫?」
「ふふふ、いいのよ。本当にありがとう。今はまだあなたに敵わないけど、もう少しで何かが見えそうなの」
「分かったよ。じゃあ、明日も本気で行くよ」
「ええ、お願いします。師匠」
「ちょっと! やめてよ!」
「ウォウォウォ」
会話を聞いていたエルウッドが笑っていた。
◇◇◇
ヴェルギウス襲撃から二ヶ月が経ち、壊滅状態だったサルガはようやく落ち着きを見せてきた。
瓦礫の処分は完了。
新たな建物が次々と建築開始。
騎士団団長ジル・ダズの復興指示は素晴らしく、予想以上のスピードで元に戻りつつある。
「せっかくだから計画的に街を作り直します」
ジルは被害の大きかった街の中心部から、円形に広がるように区画を作り上げていった。
街道は街の中心地から放射状に伸びている。
交通の便は格段と良くなるだろう。
街の中心には、役所や騎士団の駐屯地を建設。
その周りを商業区とし、商店街や市場を作る。
襲撃で死亡した人々の慰霊碑も建てた。
ジルは各ギルドへ誘致も行う。
それにより、国内規模の大組織である商人ギルドや、地方規模の鉱夫ギルドや農夫ギルドなどの各組合が施設を建設。
建設には国から補助金を出していた。
そして世界規模の冒険者ギルドも、元ギルマスのシドが設計した新しいギルドの施設を建設。
元々サルガの街は冒険者の街として有名だった。
治安の良いイーセ王国では珍しく冒険者が活躍できる地域とあり、かなりの数の冒険者がこの街を拠点とし活動していた。
ヴェルギウスの襲撃で三千人の冒険者が死亡したが、ジルはシドと話し合い、改めて冒険者の街として復興を約束。
冒険者ギルド専用の区画を作り、そこをギルド基地とした。
ギルド基地を中心に、冒険者向けの宿屋や商店が発展していくことになるだろう。
また、ジルは他の街から移住者を募った。
移住者には引っ越しの補助金を支給。
特に農夫には、準備金を用意するほどの手厚さだった。
「人を増やし経済を回します。各ギルドも賑やかになり、街はすぐに復興するでしょう」
ジルは街作りにも精通していた。
◇◇◇
今日も俺とレイは稽古だ。
シドは各所へ連絡したり、設計図を書いている。
オルフェリアはまだ入院しているが、間もなく復帰できるそうだ。
稽古の休憩中に、俺は街作りを行っているジルについて考えていた。
「やっぱりジルさんって優秀なんだね。初めて会った時は変な人だと思ってたよ」
「そうね。変人には変わりないけど、私が退団する時に次期団長で指名したほどよ。本人は断ってきたけど……。今思い返してもイラッとするわ。ふふふ」
「騎士団のことだけではなく、街作りの計画までするって凄いよ」
「本当にそうね。様々な知識を持ち合わせているわ。しかもあの男は、ああ見えて戦っても強いのよ」
「そうなの?」
「騎士団団長は個人レベルの強さも必要よ。今度稽古に呼ぼうかしら」
「いいね! 俺も勉強になるよ!」
俺は対人の戦闘経験が圧倒的に少ないので、今度手合わせしてもらおうと考えていた。
「アル、レイ!」
稽古場にシドがやってきた。
「先程騎士団から連絡をもらってな。火球は十二発、鱗は五十枚ほど集まったぞ」
「十二発か。となると、やはり一度の戦闘で六発が限度と見ていいかな」
「うむ、そうだな。断定は危険だが、知識として持っていていいだろう」
三人で昼食を取り、俺とレイは稽古を再開。
弟子の俺が言うのも失礼だが、レイは相当腕を上げていた。
「レイのスピードは人間離れしてる。俺の体感だとダーク・ゼム・イクリプスのスピードはもう越えてるよ」
「本当に?」
「ああ、あの残像が出るほどのスピードでも、今のレイは捉えられないと思う。それに最近はパワーも上がってるよ? 突きを剣で弾くのが辛くなってきた」
「良かった……。でもまだまだよ。ねえアル、私の突きを受けてもらえるかしら?」
「分かった」
レイが構え、神速の突きを放つ。
俺はいつものように黒爪の剣で突きを弾く。
一段、二段、そして三段。
全て弾いたと思った瞬間、次撃が飛んできた。
「グッ!」
何とか弾くも、さらにもう一撃。
「五段だと!」
最後の一撃は、正確に俺の喉を狙っていた。
もう弾く余裕はない。
辛うじて黒爪の剣を横にして、剣がこすれる摩擦で勢いを削ぐ。
火花が飛び散る時間が長い。
突きを頭上に受け流した直後、俺は前転してレイから離れる。
すぐに起き上がり、レイと対峙した。
「す、凄い。五段突き……。今のは危なかった。五段目を弾く余裕はなかったよ」
「まだよ」
「え? まだ?」
「私のイメージでは七段突きなのよ」
「な、七段!」
「ええ、きっとそこが私の到達点だと思うの」
「今の五段突きも、全てが正確に急所を狙っていたというのに……。これで七段となると、正直俺でも躱せないよ」
「何言ってるのよ。あなた五段目の後に前転したけど、本当は反撃する余裕があったでしょ?」
「そ、そんなことないよ!」
「全く、あなたはどこまで強くなるのかしらね。勝ったと思ったのに、引き分けにもならなかったわ」
稽古を見ていたシドが笑っていた。
「ハッハッハ。レイもいよいよ人外の道へ進み始めたな。二千年生きているが、レイほどの剣士はいなかったぞ」
「それ褒め言葉?」
「もちろんだ。君は世界最高の剣士だ。間違いない」
「じゃあアルは?」
「アルはもうこちら側だ。人間と比べるものではないぞ。ハッハッハ」
これまで化け物やら人外と言われてきたが、いよいよ比較する土俵が変わったようだ。
だが、正真正銘の不老不死であるシドと同じにされては困るのだが。
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