鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜

犬斗

文字の大きさ
178 / 414
第十一章

第172話 レイの進化

しおりを挟む
 稽古が終わり、レイと宿へ戻ってきた。

 サルガの復興はかなり進んだことで、俺たちは騎士団から一軒の宿を宿舎兼事務所として提供してもらっていた。

 部屋割は結婚したシドとオルフェリア。
 俺とレイとエルウッドだ。

 夕食の後、部屋に戻ったレイが自分の身体をさすっている。

「以前の山での特訓ではあなたが傷だらけだったけど、今では私が傷だらけね」
「ごめん。大丈夫?」
「ふふふ、いいのよ。本当にありがとう。今はまだあなたに敵わないけど、もう少しで何かが見えそうなの」
「分かったよ。じゃあ、明日も本気で行くよ」
「ええ、お願いします。師匠」
「ちょっと! やめてよ!」
「ウォウォウォ」

 会話を聞いていたエルウッドが笑っていた。

 ◇◇◇

 ヴェルギウス襲撃から二ヶ月が経ち、壊滅状態だったサルガはようやく落ち着きを見せてきた。
 瓦礫の処分は完了。
 新たな建物が次々と建築開始。

 騎士団団長ジル・ダズの復興指示は素晴らしく、予想以上のスピードで元に戻りつつある。

「せっかくだから計画的に街を作り直します」

 ジルは被害の大きかった街の中心部から、円形に広がるように区画を作り上げていった。
 街道は街の中心地から放射状に伸びている。
 交通の便は格段と良くなるだろう。

 街の中心には、役所や騎士団の駐屯地を建設。
 その周りを商業区とし、商店街や市場を作る。
 襲撃で死亡した人々の慰霊碑も建てた。

 ジルは各ギルドへ誘致も行う。
 それにより、国内規模の大組織である商人ギルドや、地方規模の鉱夫ギルドや農夫ギルドなどの各組合が施設を建設。
 建設には国から補助金を出していた。

 そして世界規模の冒険者ギルドも、元ギルマスのシドが設計した新しいギルドの施設を建設。

 元々サルガの街は冒険者の街として有名だった。
 治安の良いイーセ王国では珍しく冒険者が活躍できる地域とあり、かなりの数の冒険者がこの街を拠点とし活動していた。

 ヴェルギウスの襲撃で三千人の冒険者が死亡したが、ジルはシドと話し合い、改めて冒険者の街として復興を約束。
 冒険者ギルド専用の区画を作り、そこをギルド基地とした。
 ギルド基地を中心に、冒険者向けの宿屋や商店が発展していくことになるだろう。

 また、ジルは他の街から移住者を募った。
 移住者には引っ越しの補助金を支給。
 特に農夫には、準備金を用意するほどの手厚さだった。

「人を増やし経済を回します。各ギルドも賑やかになり、街はすぐに復興するでしょう」

 ジルは街作りにも精通していた。

 ◇◇◇

 今日も俺とレイは稽古だ。

 シドは各所へ連絡したり、設計図を書いている。
 オルフェリアはまだ入院しているが、間もなく復帰できるそうだ。

 稽古の休憩中に、俺は街作りを行っているジルについて考えていた。

「やっぱりジルさんって優秀なんだね。初めて会った時は変な人だと思ってたよ」
「そうね。変人には変わりないけど、私が退団する時に次期団長で指名したほどよ。本人は断ってきたけど……。今思い返してもイラッとするわ。ふふふ」
「騎士団のことだけではなく、街作りの計画までするって凄いよ」
「本当にそうね。様々な知識を持ち合わせているわ。しかもあの男は、ああ見えて戦っても強いのよ」
「そうなの?」
「騎士団団長は個人レベルの強さも必要よ。今度稽古に呼ぼうかしら」
「いいね! 俺も勉強になるよ!」

 俺は対人の戦闘経験が圧倒的に少ないので、今度手合わせしてもらおうと考えていた。

「アル、レイ!」

 稽古場にシドがやってきた。

「先程騎士団から連絡をもらってな。火球は十二発、鱗は五十枚ほど集まったぞ」
「十二発か。となると、やはり一度の戦闘で六発が限度と見ていいかな」
「うむ、そうだな。断定は危険だが、知識として持っていていいだろう」

 三人で昼食を取り、俺とレイは稽古を再開。
 弟子の俺が言うのも失礼だが、レイは相当腕を上げていた。

「レイのスピードは人間離れしてる。俺の体感だとダーク・ゼム・イクリプスのスピードはもう越えてるよ」
「本当に?」
「ああ、あの残像が出るほどのスピードでも、今のレイは捉えられないと思う。それに最近はパワーも上がってるよ? 突きを剣で弾くのが辛くなってきた」
「良かった……。でもまだまだよ。ねえアル、私の突きを受けてもらえるかしら?」
「分かった」

 レイが構え、神速の突きを放つ。
 俺はいつものように黒爪の剣レリクスで突きを弾く。

 一段、二段、そして三段。
 全て弾いたと思った瞬間、次撃が飛んできた。

「グッ!」

 何とか弾くも、さらにもう一撃。
 
「五段だと!」

 最後の一撃は、正確に俺の喉を狙っていた。
 もう弾く余裕はない。
 辛うじて黒爪の剣レリクスを横にして、剣がこすれる摩擦で勢いを削ぐ。
 火花が飛び散る時間が長い。

 突きを頭上に受け流した直後、俺は前転してレイから離れる。
 すぐに起き上がり、レイと対峙した。

「す、凄い。五段突き……。今のは危なかった。五段目を弾く余裕はなかったよ」
「まだよ」
「え? まだ?」
「私のイメージでは七段突きなのよ」
「な、七段!」
「ええ、きっとそこが私の到達点だと思うの」 
「今の五段突きも、全てが正確に急所を狙っていたというのに……。これで七段となると、正直俺でも躱せないよ」
「何言ってるのよ。あなた五段目の後に前転したけど、本当は反撃する余裕があったでしょ?」
「そ、そんなことないよ!」
「全く、あなたはどこまで強くなるのかしらね。勝ったと思ったのに、引き分けにもならなかったわ」

 稽古を見ていたシドが笑っていた。

「ハッハッハ。レイもいよいよ人外の道へ進み始めたな。二千年生きているが、レイほどの剣士はいなかったぞ」
「それ褒め言葉?」
「もちろんだ。君は世界最高の剣士だ。間違いない」
「じゃあアルは?」
「アルはもうだ。人間と比べるものではないぞ。ハッハッハ」

 これまで化け物やら人外と言われてきたが、いよいよ比較する土俵が変わったようだ。
 だが、正真正銘の不老不死であるシドと同じにされては困るのだが。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

追放された最強ヒーラーは、美少女令嬢たちとハーレム生活を送る ~公爵令嬢も義妹も幼馴染も俺のことを大好きらしいので一緒の風呂に入ります~

軽井広@北欧美少女 書籍化!
ファンタジー
白魔道師のクリスは、宮廷魔導師団の副団長として、王国の戦争での勝利に貢献してきた。だが、国王の非道な行いに批判的なクリスは、反逆の疑いをかけられ宮廷を追放されてしまう。 そんなクリスに与えられた国からの新たな命令は、逃亡した美少女公爵令嬢を捕らえ、処刑することだった。彼女は敵国との内通を疑われ、王太子との婚約を破棄されていた。だが、無実を訴える公爵令嬢のことを信じ、彼女を助けることに決めるクリス。 クリスは国のためではなく、自分のため、そして自分を頼る少女のために、自らの力を使うことにした。やがて、同じような境遇の少女たちを助け、クリスは彼女たちと暮らすことになる。 一方、クリスのいなくなった王国軍は、隣国との戦争に負けはじめた……。

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

処理中です...