鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜

犬斗

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第九章

第140話 猛火の如く

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 俺たちは草原を調査。
 しばらく進むと、モンスターの糞を見つけた。

猛火犖バルファの糞ね。まだ新しいわ。足跡はあちらに続いている。追いましょう」

 その時、エルウッドが小さく吠えた。
 そのまま俺たちを先導。
 エルウッドについていくと、約百メデルト先に大きな四足の生物を発見。
 頭部にある三日月状の大角が特徴的だ。

「バルファよ。アルは初めてよね?」
「うん。生では初めて見た。あの個体は事典のイラストより大きいよね?」
「そうね、平均よりも大きいと思うわ」

 前方のバルファの体長は約六メデルト。
 かなり大きい個体のようだ。
 観察しているとバルファも俺たちの存在に気付いた様子。

 俺たちは風上にいるので仕方がない。
 人間の臭いを感じたのだろう。
 突然バルファが豹変。

「ブォオォォォォォ!」

 地鳴りのような低音の咆哮を上げ、怒り狂う。
 バルファは太古より人類に捕獲されていることから、人を見ると激昂する。
 俺たちに向かって猛突進してきた。

「まさに猛火の如くね」

 イーセ語では、怒り狂うことを猛火の如くと形容する。

「アル、私が引きつけるわ」
「いや大丈夫。俺が突進を止めるから、レイはとどめを刺して」
「ちょっ! ちょっと!」

 俺は突進してくるバルファの前に立つ。
 バルファは唸り声を上げながら、猛スピードでこちらへ突進。
 頭を低くし、大角で俺を突き刺そうとしている。
 その突進は殺意しかない。

 俺は大角に当たらない角度で、突進に負けないように重心を低く構える。

 バルファと正面衝突。
 鈍く大きな衝突音が鳴り響く。

 俺はバルファの突進を全身で受け止めた。
 しかし、勢いは収まらず俺の身体は押し出される。
 砂埃を上げ、地面に引きずられた俺の足跡が伸びていく。

「グッ! さすがに強烈だ!」
「ブホォォォォ!」

 バルファの鼻息は荒く、俺を押しつぶそうとする。
 三十メデルトほど押されながらも、俺はバルファの突進を完全に止めたのだった。

「レイ! とどめを刺して!」

 レイがすかさずジャンプ。
 頭部の急所へ突きを放った。
 するとバルファが崩れ落ち、大きな地響きが轟く。
 たったの一撃でバルファが絶命した。

「もう! バルファの突進を真正面で止めるなんて、危険なんてものじゃないわよ!」
「分かってるけどさ。これから竜種を相手にすると考えたら、これくらいはできなきゃダメでしょ?」
「そ、それはそうだけど……」
「大丈夫! 俺は絶対に死なないよ」

 そこへ寝台荷車キャラバンに乗ったシドとオルフェリアがやってきた。

「君たちにかかれば、バルファも一瞬か……」
「ええ、本当ですね。Sランクの冒険者様って恐ろしいですね」
「バルファの突進を止めるなんて、アルはもう人間じゃないな」
「レイだって一突きでとどめを刺してます。こんなこと普通の人間にはできません」

 俺はよく化け物扱いをされるが、レイも同じような扱いになってきた。
 だがそれは正しい評価だと思っている。

 オルフェリアがさっそく解体を開始。

「それにしても、こんな大きなバルファは初めてです。肉質もいいですね。これは楽しみです。フフ」

 惚れ惚れするスピードで解体していく。
 オルフェリアが使用する解体道具は、俺の黒爪の剣レリクスと同じ素材だ。
 恐ろしいほどの切れ味を誇る。

「さすがだな、オルフェリア。解体に一切の無駄がない。では、私が防腐処理をしよう。この素材はラダーのギルドで売るぞ」

 俺とレイが持つSランクはモンスターの狩猟制限がない。
 そのため、クエストに関係なく自由に狩猟ができる。

「君たちのために討伐証明も剥ぎ取らねばな。確かバルファの討伐証明は……」
「大角よ、シド」
「そうだった。ありがとうレイ」

 討伐証明をギルドへ提出すれば、討伐スコアを更新してもらえる。
 本来はギルドのクエストを正式に受けるか、公的機関の討伐証明書が必要だ。
 だが、Sランクの俺たちは討伐証明の素材を見せるだけで更新されるのだった。

「バルファの角……。むっ、そうだ!」

 シドが急に大きな声を出した。

「アルよ。君にプレゼントがあったのだ。すっかり忘れてた」
「プレゼント?」
「そうだ。バルファの大角で作った弓だ」
「え? 本当に? バルファの弓って人気で高価だよね?」
「うむ、そうだぞ。しかもこれは君に相応しい弓なのだ。今後は弓も使うだろうし持っておくがよい」

 シドが荷台から弓を取り出した。
 白く輝く弓。
 長弓ロングボウよりもさらに一回り大きい。

「これはバルファのネームドの大角だ」
「バルファのネームド?」
「ああ、四十年前に討伐されたのだ。この弓の最大の特徴は……」

 シドが突然、オルフェリアの道具セットからハンマーを取り出し、力いっぱい弓を叩いた。
 このハンマーは、ネームドのウォール・エレ・シャットから採れた黒深石で作られている。
 硬度は六以上と非常に硬い。

「な、何するんだよ!」

 バルファのネームド素材ということで、弓の頑丈さを見せたいのだろうか?
 しかし、小さなヒビが入ってしまった。
 確かにあれほどの勢いで叩いても小さな傷しかつかないのは凄いが、もう弓として使えないだろう。

「まあ見てろ」

 自慢げな表情を浮かべているシド。
 すると、弓のヒビが徐々に薄くなっていく。

「き、傷が消えていく!」
「凄いだろう。実はこのネームドには身体の再生機能が備わっていてな。それ故のネームドだったのだが、討伐したあと大角にも自己修復機能が残ってることに気付いたんだ」
「自己修復だって?」
「そうだ。このネームドの寿命は推定二百年でな。恐らく寿命までこの自己修復は続くだろう。少なくとも、あと百年は使えるぞ」

 俺は弓を手に取った。
 しなやかでとても頑丈な弓。
 さすがネームドの素材だ。

「元々ネームドの素材だから硬い。それに小さな傷はすぐ直る。もし折れても翌日には直る。アルの力で弓が壊れても自ら修復するぞ」
「凄いわね。本当にアルに相応しいわ。アルは弓を壊しまくるもの。でも、これならいくら壊しても平気ね」

 レイが感心していた。
 俺の力で弓を引くとすぐに折れてしまうので、これまでほとんど弓を使ってこなかった。
 だがこれで思う存分弓を使用できる。

「シド! ありがとう!」
「ああ、これから弓を使用する場面も出てくるだろう。頼んだぞ」

 俺たちが弓について話をしていると、オルフェリアが声をかけてきた。

「解体が終わりました」

 見事に解体されたバルファ。
 シドは改めて防腐処理を行い、手際よく荷台へ積んでいく。

 その日の食事は、バルファの肉の中で最も希少なヒレ肉をステーキにした。
 味が濃縮された赤身肉。
 脂分が少ないのに、驚くほど柔らかい。
 これは本当に美味い。

「フフ、これほどの素材を新鮮な状態で食べられるのは、冒険者の特権ですね」
「そうだね。それに、バルファがこんなに美味いとは知らなかった。また食べたいよ」
「肉はまだたくさんあります。最も美味しい部分は、旅の食料にしますから安心してください」
「ほんと? やった! ありがとうオルフェリア!」

 旅の食料にする肉を確保。
 それ以外の素材はラダーのギルドで売却する。
 こうやって少しでも旅費を稼いでいけば、旅は楽になるだろう。

 シドがバルファの肉を食べながら感動していた。

「私が食べてきたバルファの中でも、これは最上級に美味いな」
「オルフェリアの焼き方が絶妙なのよ」
「うむ、オルフェリアの料理は全て美味い。私は食事を取らなくても死なないが、オルフェリアの料理なら毎日食べたいぞ」

 シドがオルフェリアを絶賛している。

「あなたが人の料理を褒めるなんて、珍しいんじゃないの?」
「そうだな。それほどオルフェリアの料理は美味いのだ。オルフェリアと結婚する輩は幸せだな」

 シドがオルフェリアの顔を見た。
 オルフェリアは微笑んでいる。
 だが、少し影のある微笑みだ。

「フフ、解体師の私を気に入ってくれる男性なんていませんよ」

 少し前まで解体師は差別の対象だった。
 だが今やオルフェリアは解体師としても、その美しく清楚な容姿からもギルドで人気があった。

「ふむ、じゃあ私がもらおう」
「あのねえ、オルフェリアは物じゃないのよ? というかね、シドになんかオルフェリアを渡さないわよ。私が許さないわ」
「ひ、酷い言われようだな」

 皆で笑ったが、笑って良かったのだろうか……。
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