鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜

犬斗

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第七章

第111話 悲しき知らせ

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 私たちがウグマの街を出て十日が経った。

 人さらいの襲撃後も、三度ほど盗賊の襲撃があったが難なく撃退。
 女二人旅はさすがに狙われやすい。
 私たちを襲っても、盗賊にとっては不幸な結果になるだけなのに。
 盗賊には容赦しないのだから。

 私たちはフォルド帝国の国境の街モアに到着。
 まずは出国の手続きを行う。
 そして、モアから百メデルト先にあるイーセ王国の国境の街クエスに入った。

「久しぶりの王国ね」
「久しぶりって言ったって、半年くらいだろ?」
「そうなんだけど、アルと一緒だと濃厚な時間になるのよ。ふふふ」

 入国手続を行うために受付へ進むと、数人の騎士が立っていた。
 鎧には近衛隊の紋章を付けている。

「レイ・ステラー前団長! リマ隊長! お待ちしておりました」
「よく私が来るって分かったわね」
「ハッ! リマ様のスケジュール通りです。さらに暗部からも連絡が入っておりました」
「そうなのね。で、どうするの? 入国手続がまだだけど?」
「ハッ! 入国手続きは不要です! このままレイ様とリマ様を馬車でイエソンまでお送りします」
「そうなのね。ありがとう」
「レイ様の馬はこちらで預かりますがよろしいでしょうか?」
「ええ、よろしくね。馬車にこの狼牙も乗るけど構わないかしら?」
「ハッ! もちろんでございます!」

 イーセ王国に入ってしまえば、クロトエ騎士団の管轄になる。
 私はただ馬車に乗って、王都イエソンに到着するのを待つだけだ。

 しかし、クエスからイエソンまでは三週間以上かかる。
 そのため、馬車内では暗部から入手した王都の現状や、今後のことをリマと入念に確認。
 イエソンに到着したら、忙殺されるのは目に見えている。

 道中は騎士団による国賓レベルの警備と、最高級の宿に宿泊する日々だった。
 騎士団の待遇には感謝してるけど、アルと安宿に泊まった日々が懐かしく感じる。

「ふふふ」
「何笑ってんの?」
「え? やだ! 私笑ってた?」
「ああ。何かを思い出していたようだけど、どうせアル君のことを考えてたんだろ?」
「そうね。アルとは安宿に泊まりながら移動してたわ。それを思い出していたのよ」
「え? レイはたんまり金持ってるだろ? アル君だって少しは金持ってるんだろ?」
「アルの獲得報酬はすでに私たちの冒険者時代を軽く超えてるわ。恐らく個人で見たら世界一よ」
「そんなに? だってアル君って冒険者として活動してまだ数ヶ月だろ?」
「その数ヶ月の間にたった一人で二頭のネームドを討伐したもの。報酬だけでも莫大な金額よ」
「なのに安宿?」
「ええ、そうよ。あの子金銭感覚がしっかりしてるのよ。元々鉱石を売って一人で生活してたでしょ? 商人的な感覚を持ち合わせてるわ」
「何だよそれ。ハイスペック過ぎないか?」
「そうなのよね。冒険者の試験だって二回連続満点だもの」
「マジか! あの試験で満点ってレイだけだっただろ。しかも二回連続って……」
「あの子って、イーセ語もフォルド語も文字の読み書きができるの。さらに薬草学や数学も詳しいわ。帝国式だけど礼式作法も身についているから、そこら辺の貴族や王族よりもしっかりしてるもの」
「もうそこまで行くと、凄いを通り越して気持ち悪いな。フハハハ」
「本当にそうよね。ふふふ」

 こうして言葉で話すとアルの凄さを再認識する。
 本当に不思議な子。

「なあ、レイ」
「なあに?」
「アル君とは、まだ結婚しないのか?」
「もちろんするわよ。その……私の夢だもの」
「ああ、そうだったな」
「でも、まだアルは私のことが好きだと自覚したばかり。これからよ」
「なんだよ。アル君は鈍いんだな。フハハハ」
「長年一人暮らししていたからね。でも。いいのよ。時間はあるもの。待つわ」
「これまで数々の男につきまとわれ、貴族や王族からあまりにモテるから傾国の美女と言われてしまい、求婚された数は世界一と揶揄された絶世の美女が選んだのは怪物のアル君か」
「あのねえ、確かにアルは人間離れしてるけど、本当に真面目で優しくて純粋な子よ? 私はアルのそういうところに惹かれたのよ」
「確かにそうだな。でもレイが好きになるほどだ。アル君ってモテるだろ?」
「そうなのよ。あの子、自分では気付いてないけど、恐ろしくモテるわよ」
「世界一モテるレイにそれを言わせるって凄いな。だけど分かるよ。恋愛に興味のないアタシですら、アル君のことは気に入ってるからな。フハハハ」
「あら? リマもそんな気持ちになるのね?」
「そうなんだよ。それほどアル君は良い男だと思うよ」
「リマだって素敵な女性よ? あなたも早く相手を見つけなさいな。あ、ギャンブルはやめなさいね」
「うるさいな! アタシはギャンブルとともに生きていくんだよ!」
「まだそんなこと言ってるの? 全く……困った姉さんね」

 リマとは昔からの付き合いで、姉のような存在でもあった。
 もちろん、私の方がしっかりしているのだけど。

「さあ、そろそろ王都よ」

 リマと他愛のない話をするのも終わりだ。
 王都に近付いていた。

 ――

 王都まであと数日というところで、私たちの馬車に信じられない報告が入った。

 騎士団三番隊隊長、ピーター・バルスが暗殺されたというものだ。

 三番隊はサルド地方を守護する。
 サルド地方は、王都イエソンがあるロンハー地方の東に隣接している。
 内陸部ということもあり、王国の中でも治安が良い地方だ。

 そのサルド地方最大都市アーズの騎士団駐屯地で暗殺された。
 詳細は不明だが、どうやら隊長室で首を絞められていたそうだ。
 首の骨も折れていたらしい。

 ピーターは四十三歳で、隊長たちの中では上から三番目の年齢。
 経験豊富な騎士として、誰からも尊敬される騎士の模範となる人物だった。

「レ、レイ。信じられないんだが……」
「ピーターが暗殺されるなんてあり得ない。彼はとても慎重で堅実だもの。暗殺されるような男ではないわ」
「そうだよ。それにピーターさんは強かった。教官だった時のピーターさんに、アタシは一度も勝てなかった」
「そうね。強くて真面目な人だったわ……」

 私とリマが騎士団に入団した際、教官だったのがピーターだった。
 久しぶりに会えると楽しみにしていたのに。

「今はピーターの冥福を祈りましょう」

 私に騎士道を説いてくれたピーター。
 あの尊敬できる騎士が暗殺なんて、信じられない気持ちでいっぱいだ。
 いや、信じたくないという気持ちが正解だろう。

 リマは号泣している。
 私は心の中で、ピーターの姿を思い浮かべ冥福を祈った。
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