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第一章
第18話 卒業試験
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俺は剣を持つ手が震えていた。
それもそのはず、俺にとっては人生初の一騎打ちが始まるのだから。
レイさんの美しい顔が恐ろしく見える。
素人の俺でも、レイさんから放たれる圧倒的なプレッシャーを感じていた。
これに飲まれると確実に負けるのだろう。
剣を構え、礼をする。
開始の合図はない。
周囲に静寂が生まれた。
次の瞬間、レイさんは神速と呼ばれる踏み込みで、人間のスピードを超えた突きを放ってきた。
これはラバウトで、ハリー・ゴードンに見せた電光石火の見えない突きだ。
俺は必死になりながらも、レイさんに教えてもらったばかりの構えから最短距離の突きを打つ。
お互いの剣が火花を散らしながら交差。
俺の喉元へ迫るレイさんの剣。
それは死が近づくと同じことだ。
これが恐怖。
死を間近にしたせいか、俺には神速の突きがゆっくりと見えた。
レイさんの剣先が俺の喉元に突き刺さる。
いや、突き刺さる寸前で、レイさんの剣が止まった。
止めてくれたのだ。
そうでなければ、俺は死んでいた。
「あなたは本当に凄いわ。たった一日で私を追い越してしまったのね。ふふふ」
レイさんは突きの姿勢のまま笑っていた。
「違います。レイさんが本気なら、俺は死んでました」
「何を言うの。アルがその気なら、私が死んでいたわ」
レイさんの喉元には、俺の切先が止まっている。
「引き分けです」
「あなたは今日初めて剣を握ったのよ? 言わば素人。その相手に引き分けなんて負けと一緒よ」
「す、すみません」
「たった一日で教えることがなくなってしまったわね。……でも、あなたの師匠はいつまでも私よ」
「も、もちろんです!」
お互い剣を引く。
そして、少しの間見つめ合う。
レイさんの横顔に、沈みゆく太陽の赤く染まった光が反射していた。
「アルとの稽古で私に足りないものが分かったわ。私はこれからもっと強くなる」
「もちろんです! 俺の師匠ですから!」
「ありがとう」
「それにしても、俺は今日だけで傷だらけですよ」
「それほど私を本気にさせたってことよ。ふふふ」
自宅に戻り、今日も風呂を沸かす。
先にレイさんが入り、その後俺も入った。
傷にしみたが、これこそ剣士の勲章だと言い聞かせる。
そして、夕食の時間。
いつもより少し豪勢な食事にした。
今日はとっておきの葡萄酒を開け乾杯。
食事をしながらレイさんに、今日の稽古について色々と質問した。
レイさんは俺に教えることはもうないと言っているが、俺はまだまだ未熟だ。
もっと鍛えなければ騎士団には受からないだろうし、レイさんになんて遠く及ばない。
「ところで、アルは今の生活に満足しているの?」
「……正直、レイさんに会うまでは満足していました。しかし、自分にも可能性があるなら試してみたいと思い始めています」
「ふふふ、男の子ね。あなたに騎士団の入団試験を勧めたのは本心よ。今でも変わってないわ。だけど今日の稽古で、あなたの可能性はもっと広いと感じたの。アルは何だってできるわ。アルが望めば何でもできるわよ」
レイさんはとても優しい表情を浮かべていた。
「俺はただの田舎の鉱夫です……」
「時間はあるもの。たくさん悩みなさい。悩むことは若者の特権よ」
「若者って、レイさんだって若いじゃないですか!」
騎士団隊長のレイさんには圧倒的な威厳がある。
しかし、見た目は絶対に若い。
シワひとつない肌は、雪のように純白できめ細かい。
金色の髪は、金細工の職人が一本一本作ったかのような繊細さと、絹のような艶を持っている。
「あの……。レイさんはおいくつなんですか?」
「女性に年齢を聞くのは失礼よ?」
「す、すみません!」
「と言いたいところだけど、別にいいわよ。ふふふ。私は二十一歳よ」
「ええ! 俺と三つしか違いませんよ! それで騎士団の隊長って……。凄い……」
「そんなことないわ。私より凄い人はたくさんいるもの。ほら。私の目の前にも、ね。だから何事にもチャレンジしてみるといいわ」
酒を飲んだことで、会話が弾む。
それもそのはず、俺にとっては人生初の一騎打ちが始まるのだから。
レイさんの美しい顔が恐ろしく見える。
素人の俺でも、レイさんから放たれる圧倒的なプレッシャーを感じていた。
これに飲まれると確実に負けるのだろう。
剣を構え、礼をする。
開始の合図はない。
周囲に静寂が生まれた。
次の瞬間、レイさんは神速と呼ばれる踏み込みで、人間のスピードを超えた突きを放ってきた。
これはラバウトで、ハリー・ゴードンに見せた電光石火の見えない突きだ。
俺は必死になりながらも、レイさんに教えてもらったばかりの構えから最短距離の突きを打つ。
お互いの剣が火花を散らしながら交差。
俺の喉元へ迫るレイさんの剣。
それは死が近づくと同じことだ。
これが恐怖。
死を間近にしたせいか、俺には神速の突きがゆっくりと見えた。
レイさんの剣先が俺の喉元に突き刺さる。
いや、突き刺さる寸前で、レイさんの剣が止まった。
止めてくれたのだ。
そうでなければ、俺は死んでいた。
「あなたは本当に凄いわ。たった一日で私を追い越してしまったのね。ふふふ」
レイさんは突きの姿勢のまま笑っていた。
「違います。レイさんが本気なら、俺は死んでました」
「何を言うの。アルがその気なら、私が死んでいたわ」
レイさんの喉元には、俺の切先が止まっている。
「引き分けです」
「あなたは今日初めて剣を握ったのよ? 言わば素人。その相手に引き分けなんて負けと一緒よ」
「す、すみません」
「たった一日で教えることがなくなってしまったわね。……でも、あなたの師匠はいつまでも私よ」
「も、もちろんです!」
お互い剣を引く。
そして、少しの間見つめ合う。
レイさんの横顔に、沈みゆく太陽の赤く染まった光が反射していた。
「アルとの稽古で私に足りないものが分かったわ。私はこれからもっと強くなる」
「もちろんです! 俺の師匠ですから!」
「ありがとう」
「それにしても、俺は今日だけで傷だらけですよ」
「それほど私を本気にさせたってことよ。ふふふ」
自宅に戻り、今日も風呂を沸かす。
先にレイさんが入り、その後俺も入った。
傷にしみたが、これこそ剣士の勲章だと言い聞かせる。
そして、夕食の時間。
いつもより少し豪勢な食事にした。
今日はとっておきの葡萄酒を開け乾杯。
食事をしながらレイさんに、今日の稽古について色々と質問した。
レイさんは俺に教えることはもうないと言っているが、俺はまだまだ未熟だ。
もっと鍛えなければ騎士団には受からないだろうし、レイさんになんて遠く及ばない。
「ところで、アルは今の生活に満足しているの?」
「……正直、レイさんに会うまでは満足していました。しかし、自分にも可能性があるなら試してみたいと思い始めています」
「ふふふ、男の子ね。あなたに騎士団の入団試験を勧めたのは本心よ。今でも変わってないわ。だけど今日の稽古で、あなたの可能性はもっと広いと感じたの。アルは何だってできるわ。アルが望めば何でもできるわよ」
レイさんはとても優しい表情を浮かべていた。
「俺はただの田舎の鉱夫です……」
「時間はあるもの。たくさん悩みなさい。悩むことは若者の特権よ」
「若者って、レイさんだって若いじゃないですか!」
騎士団隊長のレイさんには圧倒的な威厳がある。
しかし、見た目は絶対に若い。
シワひとつない肌は、雪のように純白できめ細かい。
金色の髪は、金細工の職人が一本一本作ったかのような繊細さと、絹のような艶を持っている。
「あの……。レイさんはおいくつなんですか?」
「女性に年齢を聞くのは失礼よ?」
「す、すみません!」
「と言いたいところだけど、別にいいわよ。ふふふ。私は二十一歳よ」
「ええ! 俺と三つしか違いませんよ! それで騎士団の隊長って……。凄い……」
「そんなことないわ。私より凄い人はたくさんいるもの。ほら。私の目の前にも、ね。だから何事にもチャレンジしてみるといいわ」
酒を飲んだことで、会話が弾む。
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