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二章 愛の対義語

40話 ブレ洞窟

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 身無しの騎士の奇襲を難なく回避したガルはそのままトキを起こし、簡単に朝食を取った後にブレ洞窟へと向かった。

 ブレ洞窟は山の麓の木々が生い茂る森の中に隠れ家のように存在しており、見つけるのに数時間もの時間を使ってしまった。

 その間、魔物と遭遇した回数は脅威の15回。魔物とこんなにも遭遇しているというのは近くで瘴気が発生している証拠である。

「今思うと、洞窟から瘴気が発生しているのに洞窟から離れた場所にも魔物がいなかった?」

「しっかりと瘴気を吸収した魔物は瘴気から出ても生命活動を続けるのに問題なくなるんです。ゴッズステイ中にうっすらと瘴気が蔓延し始めたのも原因の一つですけど」

「その話本当なのか?だとしたらどうして俺達は生きている?」

「死に至らない量だからですよ。大気中のほんのわずかに含まれているみたいですし」

 その事を知ったのもつい最近の事だ。トキの体がじわじわと瘴気を吸い込んだ時と同じ色をしていた事から気が付く事が出来た。

「・・・洞窟の中のドワーフは無事なんでしょうか」

「発生しているのは鉱山だ。洞窟内で暮らしているドワーフは大丈夫なはずだ」

「それにしては物音がしないわね。一体どうしちゃったのかしら。とりあえず中に入りましょうか」

 松明は必要なかった。何故なら、既に洞窟中に明かりがついていたからだ。明かりと言っても精々が足元が見える程度。薄暗いと言った感じだ。

 洞窟に入っても、物音が聴こえてこない。金槌の音すら聴こえてこない。しかし、入り口より少し奥でぶつぶつと何かを呟く人の声が聴こえてきた。気になって声のする部屋に向かってみると、中ではドワーフが規則正しく地面に座っており、筋骨隆々の男神像に祈りを捧げていた。

「「「「「豪快なる岩の男神よ。どうか瘴気を貴方様の力で収めてください・・・」」」」」

 ドワーフ達が願っているのは、瘴気の消滅だった。ドワーフは仕事が大好き。そしてその仕事こそ採掘と鍛冶仕事。瘴気が発生した事によりそれができなくなってしまったんだ。神に頼る他ない。

 男神像の前に祭司らしきドワーフの男性がいる。祈りの邪魔をしないように近づいて話しかけてみた。

「あの・・・少しよろしいでしょうか」

「旅の方、申し訳ございませんが我々ドワーフは鉱山での瘴気発生が原因で鍛冶をする事ができません。非常に残念ですが、別の所で鍛冶をお頼みください」

「えっと、それもそうなんですけど僕達は瘴気をおさめにきた浄化の女神の眷属です。詳しい話を聞かせてはもらえないでしょうか?」

「「「「「「おぉ~~我らの願いが男神様に届き、浄化の女神様の眷属を呼び寄せてくれたのか!」」」」」」

 ドワーフ達は救世主の登場に湧き上がる。騒ぎになる事を予想した祭司は僕達を別の部屋へと案内してくれた。
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