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二章 愛の対義語
39話 身無しの騎士
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「身無しの騎士か・・・」
こちらも背信者や未練残しと同じ人間が魔物となった姿である。
さまよった戦士の魂が空の鎧に憑依し、瘴気を浴びる事によって生まれる魔物。つまりは幽霊である。僕も遭遇したのは今回が初めてで、図鑑でしか見た事が無かった。
「グ・・・ガ、ガ・・・」
例に漏れず、他の魔物同様に正気を失っており、敵味方の概念は無く襲ってくる。厄介なのは生前の戦闘経験はしっかりと引き継いでいる事だ。正気と一緒に失ってくれていてば大して強くはなくのに。
「ガル!私が倒すから下がってて!」
「大丈夫ですよ、団長。僕がやりますんで。いや、僕がやらなくちゃいけないんで」
それに、身無しの騎士が使っている剣はボロボロではあるが僕の剣よりかは遥かにマシだ。ブレ洞窟までの繋ぎとして使えるだろう。
「その剣、僕にくれないか?」
「グガァ!!」
どうやら琴線に触れてしまったみたいで、背中の魔物の死体を下ろしてから僕に襲ってくる。大振りながらもしっかりと脇を占めて放っている一撃。生前はかなり腕の良い戦士であった事が読み取れる。
身無しの騎士の一番厄介な点は体が無い事だ。生身が無いため、出血死などの生身由来の殺し方が出来ない。故に身無しの騎士を見つけ次第逃げろというのが図鑑に書いてあった事だ。
ただ一つの例外を除いて。
「はぁ!!」
鞘に納めたままの剣で身無しの騎士の剣を吹き飛ばし、タワーシールドで思い切りタックルする。生身が無く体重が鎧の分しかない為、あっさりと背中に地面を付けた身無しの騎士に僕は右手の平を鎧の胸の部分に押し付けた。
「浄化開始」
図鑑には続いてこう書かれていた。身無しの騎士は魂と鎧で構成されている。本来魂は無機物に憑依する事は不可能とされているが、鎧が瘴気に侵されていた場合は例外として魂が乗り移る事が出来、それによって身無しの騎士が生まれるという。
つまり、鎧から瘴気を奪ってしまえば魂は鎧に憑依する事が出来なくなってしまうというわけだ。
僕の手から浄化の奇跡が放たれる。身無しの騎士は悶えるが、その手に既に武器は無いので何もできないまま、鎧は浄化。鎧は元の何でもない鎧へと戻ってしまった。
「ね?僕も成長しているんですよ、リリィ団長」
「そ、そうみたいね・・・その鎧はどうする?」
ブレ洞窟のドワーフにお願いして再利用してもらいます。持ち主を現す紋章もあったみたいですけど、すり減りで消えてしまっているみたいですので。
そう言いながら、ガルは鎧を回収。身無しの騎士が使っていたボロボロの剣を拝借して腰に収めた。
こちらも背信者や未練残しと同じ人間が魔物となった姿である。
さまよった戦士の魂が空の鎧に憑依し、瘴気を浴びる事によって生まれる魔物。つまりは幽霊である。僕も遭遇したのは今回が初めてで、図鑑でしか見た事が無かった。
「グ・・・ガ、ガ・・・」
例に漏れず、他の魔物同様に正気を失っており、敵味方の概念は無く襲ってくる。厄介なのは生前の戦闘経験はしっかりと引き継いでいる事だ。正気と一緒に失ってくれていてば大して強くはなくのに。
「ガル!私が倒すから下がってて!」
「大丈夫ですよ、団長。僕がやりますんで。いや、僕がやらなくちゃいけないんで」
それに、身無しの騎士が使っている剣はボロボロではあるが僕の剣よりかは遥かにマシだ。ブレ洞窟までの繋ぎとして使えるだろう。
「その剣、僕にくれないか?」
「グガァ!!」
どうやら琴線に触れてしまったみたいで、背中の魔物の死体を下ろしてから僕に襲ってくる。大振りながらもしっかりと脇を占めて放っている一撃。生前はかなり腕の良い戦士であった事が読み取れる。
身無しの騎士の一番厄介な点は体が無い事だ。生身が無いため、出血死などの生身由来の殺し方が出来ない。故に身無しの騎士を見つけ次第逃げろというのが図鑑に書いてあった事だ。
ただ一つの例外を除いて。
「はぁ!!」
鞘に納めたままの剣で身無しの騎士の剣を吹き飛ばし、タワーシールドで思い切りタックルする。生身が無く体重が鎧の分しかない為、あっさりと背中に地面を付けた身無しの騎士に僕は右手の平を鎧の胸の部分に押し付けた。
「浄化開始」
図鑑には続いてこう書かれていた。身無しの騎士は魂と鎧で構成されている。本来魂は無機物に憑依する事は不可能とされているが、鎧が瘴気に侵されていた場合は例外として魂が乗り移る事が出来、それによって身無しの騎士が生まれるという。
つまり、鎧から瘴気を奪ってしまえば魂は鎧に憑依する事が出来なくなってしまうというわけだ。
僕の手から浄化の奇跡が放たれる。身無しの騎士は悶えるが、その手に既に武器は無いので何もできないまま、鎧は浄化。鎧は元の何でもない鎧へと戻ってしまった。
「ね?僕も成長しているんですよ、リリィ団長」
「そ、そうみたいね・・・その鎧はどうする?」
ブレ洞窟のドワーフにお願いして再利用してもらいます。持ち主を現す紋章もあったみたいですけど、すり減りで消えてしまっているみたいですので。
そう言いながら、ガルは鎧を回収。身無しの騎士が使っていたボロボロの剣を拝借して腰に収めた。
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