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メッセージを無視するのは良くないみたいだ。

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 ジークフリート一行と別れたさくらは自宅へと急いだ。彼の言っていることに間違いがないことは何となく感じてはいるのだが、落ち着いた環境で確認したい。

 いくら野営の準備が出来ているからとはいえ、何もない場所に居てもらうことに申し訳なさを感じないわけではないが、受け入れる準備が出来ていない以上、自宅に招くわけにもいかない。

 森の中を歩くのにも慣れて来たせいか、思ったよりも早く帰宅できたさくらは着替えを済ませリビングでスマホのメッセージアプリを開く。メッセージのほとんどは、最近溢れる魔力で買い込んだ防犯グッズの購入確認をするものだったが、その中に確かに後見人についての情報が書かれているであろうメッセージを見つける。

 メッセージには

 ①ウィントヴィル王国からジークフリートという後見人が訪れること
 ②一行にはウィントヴィル王国の騎士団と冒険者が数名同行すること
 ③今回のメンバーにはさくらを害する人間はいないこと
 ④今後、ジークフリートのみ残り、さくらのこの世界での生活を補佐していくこと
 ⑤ジークフリート以外の者については、さくらの判断に委ねるが、その時のために庭の外に寮のような建物を設置したこと。

 さくらを害する人間はいないので、当分の間は彼等を受け入れてこの世界の常識を学ぶことを求めているような内容だった。最終的にはジークフリートのみがここに残ることになるらしいが、慣れるまでは他のメンバーに残ってもらうことも可能なようなので、その辺りは気にしないようにしようと考える。

 それにしても、寮のような建物などいつ設置されたのだろうか…。昨日、庭の散歩をした時には何もなかったのような気がするのだが、いつだってさくらの予想を超えて来るのがこの世界。まだ時間はありそうなので、その建物を確認しに行くことにする。

 庭に出ると確かに端の方に2階建ての建物が見える。庭の外とあったが、元々の庭が拡張され、その外に建てられたようで自宅から建物の存在は見えるが、近いとも言えない距離があるようだ。さくらはテラスから庭に出ると建物を目指す。建物にはさくらの自宅からの道と森から直接入れるように整備され、さくらの自宅を経由することなく森の中に入れるようになっているようだった。完全にとは言えないが、さくらのプライバシーは守られるようで安心する。

 建物は共有の玄関から入ると正面に階段があり、左右に廊下が伸び、部屋が等間隔で並んでいる。部屋に入ると小さなキッチンと浴室にトイレ、10畳ほどの部屋にベッドと小さなテーブルと椅子、クローゼットもあり、日本で一人暮らしをするにも十分な設備が整った部屋になっていた。部屋の数は1階と2階で12部屋。集会室のような広めの部屋が1階にあるので彼等が会議などをするにも問題はないだろう。

 さくらは自宅に戻ると、彼らとしばらく生活することについての問題点を考える。
 今回のメンバーに悪い人はいないようだが、関わる人間が全て良い人とは限らない。彼等がここから帰った時のことも踏まえ、当初の予定通り「サラ」という名前で通すことにする。
 また1番の問題は食料についてだ。これについては、さくらがネットで購入したものを支給することも可能だが、出処について詮索されるのは面倒だし、こちらの食材が日本の物と似ているとは限らないので、そこはジークフリートに要相談ということで保留にする。

 それにしても急展開すぎる。1人でのんびりするはずが、強制的な異世界人との遭遇。

 明日には彼等を迎えることになる。

 これまで1人で悠々自適に過ごしてきたが、一緒に生活することはないにせよ、きっとさくらの生活は大きく変わるだろう。

 さくらは一抹の不安を抱えながら1日を終えた。
 
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