最強の男ギルドから引退勧告を受ける

たぬまる

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第二章 自重を知らない回り

戦乱の足音?

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「まさかここまでとはな・・・」

 帝都の一角にあるマーサの宿で、幾つかの資料に目を通しつつため息をつく男は、いっそのことこの国が滅びないかな?と思ってしまう。

 現在帝国中の物資が強制徴収され各地で物資の価格が高騰し、民の生活が圧迫さていた。
 しかし、帝国が豊かになるための土地を周辺国が盗んだと思っており、帝国が起こす戦争が正義であると思い込んでいたため、この苦しさも全てドラゴニアを奪った王国のせいだと思い込んでいた。

「この思想統制が有る限りこの国に未来はないか・・・」

「失礼します」

 部屋に白い髪の女性が入って来て一礼をする、その姿はとても美しく何度も見ている男さえも見惚れていた。

「あ、ああ、どうした?」

「報告します、ドラゴニアの前哨戦としてフォース王国を責め滅ぼすつもりのようです」

「やはりか・・・この件はフォース王国に教えてやれ、俺は・・・様に報告に行こう」

「は?逆なのでは?特使は貴方で、私はただのメイドです。
国王への面会権は私にはありません」

「う、仕方ない、では僕がフォース王国に君は報告に向かってくれ」

「かしこまりました、では失礼いたします」

 女性が退室すると男はため息をついて「フォースまで行くのめんどくさいんだよね」との呟きは誰にも届くことはなかった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 フォース王国の場合

 帝国が攻め入るとの情報が齎された王城はあわただしく防衛会議が開かれていた。

「我が保有戦力では篭城しか手はない」

「何を言う、援軍が見込めぬ中の篭城は愚、乾坤一擲の一撃を入れるため精鋭で敵本陣に突撃を」

 会議は紛糾し結論が出ないまま2日の時が過ぎた。

「時間の無駄だな、此度はクラウス傭兵団に使者を送っておる、傭兵団の参戦があれば国境付近に防衛線を築き、参戦が見込めぬのであれば城塞都市ジョシュウにて迎え撃つ。」

「では、シール王国にも援軍を依頼しましょう」

「よかろう、みな準備を怠るな」

こうして、かつての侵略から10年、戦乱の足音が再び聞こえてきたのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 

 ドラゴニアにて

「ブラウン、どうやら帝国がフォース王国に攻め込むとの情報が入ってきた・・・」

 レオナがブラウンの家を訪ねてきたのは穏やかな昼過ぎだった。
 家に通されてリビングに入って最初に目に入った光景に固まってしまったのは仕方ないことだろう。
 リビングの机の上で魔道コンロにかけられた鍋の中でタヌキが頭にタオルを載せ気持ちよさそうにしているのだ。

「ブラウン・・・これはいったい?」

「こちらはこの山のタヌキ族の族長パンダヌキ殿だ」
 
 ブラウンが紹介をすると、片手を上げて挨拶するタヌキに目が点になる。

「挨拶ついでに、出汁を取らせてくれる事になってな、で?帝国がどうしたって?」

「毛とか大丈夫なのか?・・・ゴホン、どうやら帝国が近いうちにフォース王国に攻め入るらしい、お爺様連絡が来たんだ。
 で、ハンティングギルドにも防衛線に参加してほしいと言って来ていて」

「そうか・・・」

 少し悩むように顎に手を当てるブラウンに

「クロバやトッポは物資などを援助する予定らしいが、ドラゴニアとしてはどうするのかを聞きたくて・・・な」

「そうだな、俺一人でよければ救援に行くが・・・」

「きゅ~」

 そんな中鍋の中のタヌキが声を上げる。

「なに?一緒に行ってくれるのか?」

「きゅ、きゅきゅう」

 え?会話できてるの?とレオナが驚いた顔で二人の間を目が激しく行ったりきたりしている。

「レオナ、パンダヌキ殿と鎧ダヌキ200が参戦してくれるらしい」

 ブラウンがそう言うと大きくうなずくタヌキ、流石のレオナも付いていけない状態のようだ。

「え?・・・」

「ドラゴニアとしてというより、俺個人とパンダヌキ殿として参戦するということだ」

「ブラウンが来てくれるなら1000人力だ!それに、鎧ダヌキとはあの鎧ダヌキか?」

 鎧ダヌキは、背中から頭部にかけて鎧のような頑丈な甲殻で覆われたタヌキで、しかもファイアブレスを吐くため捕獲難易度はA 討伐はBの人気の支援獣である。

「あのが、どのかは知らんが、この山のタヌキ族の長が精鋭と言ってくれている、力になるだろう」

「助かる」

 素直に頭を下げるレオナにブラウンは気にした風もなく

「生まれ故郷だ、思い入れも有るだろう」
 
 と頭にポンポンを触れると、子供のようにニッコリと笑い、鍋の中のタヌキを出しタオルで拭いていく。

「ところでパンダヌキ殿?は鎧ダヌキには見えないが、何タヌキなんだ?」

「パンダヌキ殿は・・・なんだっけ?」

「きゅ~きゅもきゅ」

「パンダヌキらしい、全てのタヌキの特性を持つ種族だな」

「え~!!その種類は未だ不明なほどあるタヌキ族の全ての特性とは・・・」

 こうして、フォース王国は、最強の助っ人を得ることになり、ブラウンが行くことを知った龍姫達の参戦も決まった。
 それは龍人達の参戦も意味する・・・歴史に残る大戦に向けての動きが加速していくのであった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 タヌキ族の場合

 龍天山に住むタヌキ族の族長パンダヌキは珍しく人間の街にやってきた。
 それは龍人や恐ろしい覇気を感じ、本能で仲良くするためにやってきたのだった。
 その中でも一番大きな覇気を放つ男の前に姿を見せると早速声をかけてみた。

「きゅ~(こんにちは)」

「お?タヌキ族が自分から姿を見せるとは珍しいな」

「くきゅ~きゅきゅる(この山に住むタヌキ族の長、パンダヌキと言います)」

「自己紹介とは賢いな、久しぶりにタヌキ族の言葉を聞いたぞ」

 初会合はこうして行われた。
 ブラウンの希望でパンダヌキはブラウンの契約支援獣となり、タヌキ族の保護も決まった瞬間だった。
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