最強の男ギルドから引退勧告を受ける

たぬまる

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第二章 自重を知らない回り

裁縫師と最高司祭

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 トッポは店を出て生産地区にある被服店にやってきた。
 少し薄汚れた雰囲気のある店舗で、クロバ同様にトッポにとって頭の上がらない人物が経営する店でもあった。

「お姉さん、居るっすか?」

 店内は早朝のためか、人が居なくお針子たちも出勤前だった。
 トッポが声を掛けると、奥から蜂蜜色の豊かな女性がノンビリと出てきた。
 奥さんに似た容姿であるが、美人度は上でしかもある一点だけ大きく違っていた。

「弟君じゃないか、どうしたんだい?」

 つい大きな胸を見ていたトッポはあわてて目を上げると、鞄から光り輝く毛皮を取り出した。
 それを確認すると、女性は大きく目を見開いて毛皮をひったくる様に抱えると

「これは・・・シャイニング・レオの毛皮だよね?間違いない」

 毛皮を抱きしめニッコリと笑うと

「これ、くれるのかい?」

「あ、ある所に移り住んでもらえるなら、更に5枚分ほどあげれるっすよ」

 とても良い笑顔で、頷くと毛皮を大事な物を入れるトランクに丁寧に入れる。

「で?何処に行くんだい?」

「龍天山のドラゴニアって街っす」

 この人は平常運転だなと思いつつトッポはもう一つ伝えないといけない事思い出して手を打つと

「ああ、ブラウンの兄貴が領主をやってるんすよ」

「ブ、ブ・ラ・ウ・ン・さま」

 力無い声を出すと顔を真っ赤にして倒れ痙攣を起こしてしまう。
 それを見てトッポは、額に手をやり頭を軽く振るとカウンター内にあったイスに腰を下ろすし
   そして、目を覚ますまで待つのだった。

 この女性キャメロは国内外に裁縫師として名を馳せた存在であり、その腕はドレスからマントまで他の追随を許さないクオリティーを誇っていた。
 そんな彼女が、ブラウンと出会ったのはエンシェントドラゴン討伐の褒章式のタキシードを作ることになった時だった。
 ブラウンを見たとたん、創作意欲が刺激され一夜にして作り上げてしまった。
 その時からブラウンに恋をして、妹と結婚したトッポを通じてブラウンの衣服を作るようになり、こじれて現在に至る。
 トッポは話だけでこうなるのだから、行き成り合うと心臓が止まるのではないかと心配していた。

「先に話して良かったっす」

 トッポが残念美人にマントを掛けながら呟いた言葉は誰も居ない店内に消えていった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 聖ガラパコス教本部、この大陸に生まれたのは今から5百年前に聖ガラパコスよって興された宗教である。
 当時、この国には7龍教が主流であり、ポーションや回復魔法の使用方法は全て7龍教が独占し当然ハンターの死亡率も高く人類は危機に瀕していた。
 そこで各地で発生した墜龍教運動、それは貴族や騎士、平民を巻き込んでの大闘争になり元々7龍教に不満を持っていた司祭や助祭達も決起した。
 追い詰められた龍教皇は秘匿された神降しの儀を持って逆転を狙ったが、神が光臨したのは、心優しき少女”ガラパコス”であった。
 神の声を伝えるガラパコスの活躍で7龍教は、壊滅しガラパコスを祖とする聖ガラパコス教が誕生したのだった。
 これにより市民の間にも魔法薬や回復魔法が少しずつ広がり、神学校の普及も手伝い大陸全土に広がっていったのであった。
 その聖ガラパコス教本部から、最高教師が消えたのは昼過ぎに講義の時間になってだった。

「ほほ、たまには自分達で考えんとな」

 司祭服を着た老人は商業地区のある店を目指して進んでいた。
 商業地区にある、商店の一角に一風変わった飯屋がある、そこのご飯と酒に度はまりしている老人はイソイソとウェスタン風の扉を開けるとウェイトレスはササッと奥の席に案内してくれる。

「何時ものと、今日のお勧めは何かの?」

「今日は店主が持ち帰った物ですかね、コラーゲンタートル鍋か、バジリスクのから揚げ、ああ、ビックスクイドのお刺身ですね」

「なんと?ビックスクイドのお刺身とな?それをもらおう」

 「後で店主に少し分けてもらおうかな?」などと呟きつつ出てくるのを待っていると、透明な刺身と東から輸入しているという米酒をちびちびとやり始めた。
 ここ最近ドラゴニックメタルの採掘、ハンターギルドに変わってハンティングギルドからの魔物素材の輸出も龍天山の元村だと言う。
 街になったと言え、あの利に敏い辺境伯が放置しているとも思えず、そう考えると暗い気持ちにならざるをえない、しかも欲深い教会の者達もその尻馬に乗って際兵を送ろうとするしまつ。

「どうしたものか・・・」

「あれ?司祭さんどうしたんっすか?」

 気がつくと、とぼけた顔をしたこの店の店主が向かいに座って首を傾けていた。

「ああ、ちょっとな・・・」

「旨い物は楽しくと言ってた人には思えない顔をしてたっすよ」

 この男トッポはこの店の店主で新進気鋭の商人である、その事も有ってか老人はポツリと話し始めた、これがこの男の凄い所だろう、気がつけば人の心に入っている。

「ああ~多分大丈夫っすよ、国王陛下がそんな事を見過ごすと思えないし、何よりクロバとおいらもからんでるっすからね」

「ほ~クロバがのう、珍しいこともあるもんじゃ」

 老人は白い顎鬚をなでつつ何か想い耽るように目を閉じた。
 手に持ったお猪口の中の酒を一気に飲み干すと目を開け

「おぬしから見てその村は発展しそうかの?」

「勿論!おいらはあの街に未来を感じるっす、改革はそんな所から起こるとも思うっす」

 キラキラしている目で老人に熱く語る姿を眩しそうに、そして昔を思い出すように見つめていたが、丁度酒が無くなる頃に

「ありがとう、わしも忘れていた情熱を思い出したよ・・・少し悪い子にはお仕置きが必要じゃな」

 戦う男の背中になった老人は店を出た時には、背中を伸ばして教会本部に戻って行った。

「び、ビビッタっす、あの爺さん歴戦の際兵っすか?」

 「あの威圧向けられる人は可愛そうっすな」と呟くトッポが立ち上がれたのは四半時たってからだった。


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