最強の男ギルドから引退勧告を受ける

たぬまる

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ブラウン誕生

プロローグ

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 このお話は創造神の僕が記憶している、ブラウンが生まれる前の両親のお話だよ。

 青い空のかなたから高速で飛来するものが有った。
 それは緑豊かなアカネの国の王都のミナミに広がる樹海に落ちた。
 轟音を立てて落ちたその場所に、早速調査団が編制され送り込まれた。
 
 アカネの国は多種族が暮らす大陸の中央にある国だ。アカネの国を囲むのは天使族の住むコンペキの国、エルフ族の住むモエギの国、ドワーフ族が住むシブカミの国、龍人族が住むトウオウの国、魔族の住むヌレバの国である。

 アカネの国は永世中立国であり、平和の象徴でもあった。
 
「ぐぅ」

 落下してきたのは男だったようだ。ボロボロの格好で森の中をヨロヨロと移動していった。

「まさか最後の最後に自爆するとは・・・」

 そう一人愚痴を言う重症を負った男は、落ち着けるところを捜して川沿いを進み、大きな壁を飛び越えて、落下中に見つけた街の奥にある大樹の下まで近づいた。不意に背後に気配を感じ、背負っていた剣を抜いて振り向くと、そこには美しい黒髪の女性がビックリした顔で立っていた。

「あ、貴方・・・なんて怪我なの!直ぐ手当てをしないと」

 女性は自分のハンカチを男の傷跡に当て、鞄から薬草を取り出すと

「貴方も何をボーっとしてるんですか!自分の怪我でしょ!早く鎧を脱いで」

 女性の怒声に、慌てて鎧を脱いで大人しく治療を受ける男。

「どうしたらこんな酷い怪我になるんですか、それなのにこんな所に忍び込んで・・・」

 テキパキと治療をしていく女性を見ながら、何処かホッとしたのか男は意識を失ってしまった。


 男が次に目を覚ますと、見知らぬ部屋にいた。
 白と木の木目が綺麗な天井と大きな窓から差し込む穏やかな光、風に揺れるカーテンを見て、男は少し柔らかい表情になっていた。

「あ?目が覚めましたか?もう3日も寝ていたのですよ」

 扉が開く音がして男は一瞬身構えたが、記憶の最後にある怒った顔の美女を見て、男は緊張を緩めた。

「俺はグラス、助けてくれて感謝する」

 男は頭を下げると、女性はビックリしたような顔をして艶やかに笑うと

「私はメイプル、此処の姫よ。貴方、王家の大樹の近くに重症を負って居たのよ。理由は覚えていて?」

 可愛らしく小首を傾げるメイプルに首を横に振って答えると。

「実は俺は名前以外覚えていない。此処が何処の国かすらわからない」

 眉間にしわを寄せて頭を振るグラスの皺を伸ばすように強く額を触ると

「怖い顔をしていたら幸せが逃げていくわよ。
 暫くしたら記憶も戻るかもしれないでしょう?
 今は傷を癒しましょう」

 こうしてグラスはアカネの国に居つくことになった。
 

7日後

「あんまり寝てばかりだと鈍ってしまうな・・・」
 
 身体も恐ろしい勢いで回復したグラスは、そろそろ鍛錬をしたいと思い始めていた。

”コンコン”

「失礼するぞ」

 返事をする前に扉が開き、壮年の男と穏やかな笑みを浮かべた女性が入ってきた。

「お主がグラスだな、ワシはパイン・アカネ。 こっちは妻のチェリー・アカネ、メイプルの親だ」

「メイプルに助けられた、感謝する。
 俺はグラス、多分剣士だったと思う」

 そう言って頭を下げたグラスに片手を挙げて

「よいよい、それよりも記憶が無いと聞いた。
 剣士であれば、剣を振るえば何か思い出すかもしれん。
 どうだ、体調が戻りしだい剣を振ってみないか?」

 良いアイディアだと言わんばかりに声を上げて言う国王に、王妃が優しく背中に触れて

「貴方、いきなりそう言われても困られてしまいますわ。それよりもこれからは我が家の食卓に来ていただくほうが先ですわ」

「おお、そうだったな。すまんすまん」

「いえ、ありがとうございます。俺も少し身体を動かそうと思っていたところです。
 よろしければ、練習場を貸していただけますか?
 勿論、食卓にもお邪魔します」」

 グラスの頼みに国王は気を良くして、何度も頷き

「よいよい、ワシは武技を見るのが大好きなのだ。早速行こう」

「もう、男の人って仕方ないわね。私も行きますからね」

 二人に連れられたグラスは練習所に向かう途中の長い廊下で、小太りで鼻の頭がニキビだらけの目つきの悪い男と、鎧を着た大男に会った。

「おお、国王陛下、お后さまご機嫌麗しゅう」

 目つきの悪い男はそう言って慇懃に会釈をしてみせた。

「ノモ・リギ・ラウ宰相、元気そうだな」

 国王は少し嫌そうに挨拶を返したが、グラスは何か危険な予感がして王妃を自分の後ろに回し、庇うように立った。

「おやおやぁ?其方の御人は先日姫が拾われた者ですな?
 これからどちらに向かわれるのか?」

 目を細め鼻の頭をなでるノモをメンドクサそうな目で見る国王は

「なに、剣士と言う事でな。少し身体を動かしたら何か思い出すかも知れんと練習場に向かっていたところだ」

 国王の答えに、ノモは更に目を細め

「ならば、相手が必要でしょう。おい!ラカチ・カバ、騎士団長のお前がお相手をして差し上げろ。
 折角だから実戦形式でな」

「うっす」

 後ろの大男が頷くと、国王は目を見開いて首を横に振った。

「まだ病み上がりのお客人にそんな事はさせられん、後日にしろ」

「何をおっしゃいます、剣士であれば実戦形式に勝るものは無いかと・・・
 それとも自信が無いのですかな?
 格好だけの剣士であれば、それは納得ですなぁ」

 ノモは嫌味ったらしい笑顔を浮かべてグラスを見た。

「ま」

「いいだろう、ただしそこのでくの坊が泣くことになるかも知れないぞ」

 国王の言葉をさえぎってグラスが了承してしまったので、驚いた顔をする国王達。それを聞いたノモはニヤニヤと笑い

「お前は知らないだろうが、ラカチは3国でもっとも強いと言われているのだぞ。お前なぞバラバラだ。もしラカチに勝てたら次はワシが相手をしてやろうぞ。なんだったらワシに勝てたら宰相を辞めてやろう、あはははははははははは」

「御託はいい、行くぞ」

 そう言って歩き出すグラスを追う形で、それぞれが練習場に向かっていった。

「グラスよ、あいつは先代からこの国の宰相でな。ワシの目の上のタンコブだ。
 故にワシにもあのような態度なのだ。城の者ほとんどに嫌われても居座っておる。出来れば追い出したいがラカチの戦闘力は本物だで、中々に手強くてな。グラスも無理をせず、いざとなれば降参すると良い」

「安心して下さい、あれは雑魚です」

 練習場は600M四方の大きさがあり、その真ん中にグラスとラカチが向かい合うように立った。
 グラスは背中の剣で、ラカチは腰に挿していた大剣を手に向かい合っていた。

 国王と王妃、騎士達はグラス側の席に座り、ノモはラカチ側の席に座っていた。

「ラカチ、丁度いい。処刑せよ」

「うっす」

 ノモの声に答えるように、いきなり大剣を振り下ろすが、グラスは足を半歩下げるだけで交わしていた。

 そこからラカチは右に左に縦にと大剣を小枝のように振るいグラスを攻めるが、グラスはその場から動かず足運びだけで全てを交わしていく。
 
 疲れたのかラカチの攻撃が止んだ隙に、グラスはラカチの大剣を跳ね上げ、喉元に剣を突きつけた。

「終わりだ」

 グラスはそう告げると、後ろを向いて帰ろうとしたが、

「まだ終っちゃいねぇ!おでの得意なのは鎚だ!」

 そう言ってノモの居る席に駆け込むと、巨大なハンマーを持ち出し思いきり振り下ろした。


”ぺち”

 軽い音がしてラカチのハンマーはグラスの掌に止められてしまう。

「ば、ばがなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 巨大なハンマーをむちゃくちゃに振り下ろし、苛烈な攻撃を仕掛けるが

”ぺちぺちぺちぺちぺちぺち・・・”

 全て軽い音が鳴り、グラスには一撃も当たらない。

「「「ぷ・・・あはははははははは」」」

 グラス側の席に居た国王も王妃も騎士達も爆笑して笑い転げる。いつも強いことで全てを馬鹿にしてきたラカチ自慢のハンマーが、間抜けな軽い音を立てて全て掌で打ち払われていく姿はあまりにも滑稽で誰もが笑ってしまっていた。

「う~!おでのハンマーはざいぎょうだ!」

 泣きながら渾身の一撃を放つが、それもやっぱり

”ぺち”

 笑い声にかき消されてしまうほど小さな音で止められてしまう。

「やれやれ・・・子供と遊んでるわけじゃないんだぞ?
 もう少し力を込めろよ・・・こう!」

 グラスが地面に剣を刺し、つかまれたハンマーを動かそうと必死に力を込めるラカチを、力ずくでハンマーを引っ張りすぐ側に引き寄せると、ミゾオチに拳を打ち込んだ。

 ラカチはその衝撃で真上に飛び、暫く後に地面に落ちてきた。

 ラカチは白目を向いてピクリとも動かなくなった。

「おや?やりすぎたか?」

 静まり返る練習場でグラスは初めて足を前に動かし、ラカチの横腹をツンツンと足で突いて様子を見ていた。

「生きてはいるな?さて・・・そこのチビ、次はお前だろう?
 俺が弱いと思っていたようだが残念だったな。さっさと決着をつけて出て行ってもらいたいのだが」

 グラスが少し気合を入れてノモを睨み付けると

「う、うわわわわっわぁぁぁぁぁ」

 悲鳴を上げて逃げ出してしまった。

「雑魚が・・・」

 こうしてノモ一派は城から逃げ出し、居座るものは騎士に連行されていった。

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