【完結】婚約者と仕事を失いましたが、すべて隣国でバージョンアップするようです。

鋼雅 暁

文字の大きさ
6 / 12

第六話

しおりを挟む
 翌日からアリサは、妖精たちと楽しくスローライフをはじめた。
 田畑を耕したり領地を視察したり。農作業の方は、妖精たちが手伝うので作業はどんどん捗る。領内の課題や問題点はすぐに見つかるが、解決策はなかなか思いつかない。
「素人が土地をおさめるって難しいわね」
「まあ、素人だろうがプロだろうが、簡単にやれることなら、国が荒れたり滅んだりはしないと思うぜ?」
 と、のんびり言うのは執事だ。彼は館の中にいるより外にいる方を好むらしく、アリサが外出するとなると喜んでついてくる。
「でもさ、王都で学んだ知識や魔法があるだろ? それ活用すればなんとかなるだろ」
「そ、それはそう……だけど……」
「なら、やればいいじゃん。あんた、領主さまなんだから」

 執事の大雑把な助言もあり、アリサは領民たちが困っていることがあれば、魔法や書物で学んだ知識を活用し、時には領の法律改正をして彼らを助ける活動をはじめた。

「新領主さま、助かりました。彼らをしばらくお借りします」
「いいえ、また何かありましたらお気軽にご相談くださいね!」
 頭を下げる猟師のそばで、美少年が三人ほど、がんばるねー! と合唱する。森でいたずらばかりして猟師を困らせている魔獣三頭がいると聞いたアリサは、さっそく森へと出かけ、その三頭を従魔にした。そして改めて魔法陣で召喚したところ、彼らは三つ子の美少年になった。
 その三人を、猟師の手伝いとして貸し出すことにした。
 アリサも、猟師もニコニコだ。
「お役に立ててよかったわ! 森は荒らされなくなったし、おじいさんの人手不足も解消!」
 アリサの傍に立っている緋色の髪の美形に話しかければ、青年がゆったりと頷く。
「見事な手並みでした……素晴らしい」
 唇が触れそうなほどの距離で嫣然と微笑まれてアリサは真っ赤になった。
 彼は、領主の館に客として滞在中の、竜である。なぜか竜の姿でいるより人間の姿でいることの方が多く、アリサはどぎまぎすることが増えている。
「領主さまっ、次はどこいく?」
「あたし川の方に行きたいな! 魔力の匂いがするのーっ!」
 わいわいはしゃぐのは、勝手についてきた美少女二名。シルキー妖精である。
「じゃあ、川の視察にしましょう! 魔獣が出るかもしれないから……二人とも、気を付けてね」
「はーい!」
 しかし、ピョンピョン飛びはねるシルキーのせいで、なかなか前に進まない。
「……ええい、じれったい。背に乗れ!」
 ぽん、と音がして、緋竜が姿を現した。わーいわーい、とシルキー二人が背中に飛び乗り、アリサもそれに続く。
「では、川に向けて出発!」

 上空から見る村は、まだまだ小さい。発展の余地は十分にある。
「観光資源となりそうなものの発見は無理だわ……何か産業、特産品を……」
 川の上流にある鉱山は、魔物が棲みついているものの宝石や魔石がとれると聞いている。その石は、特産品にできないだろうか。
「調べてみなくちゃ……」
 シルキー二人も、身を乗り出すようにして飛行を楽しんでいる。
「あら? 山脈の向こうは……アーデルライト皇国なのね。旗が見えるわ」
 そうです、と竜が答える。なんでも、半年ほど前に戦があり、そこにあった国がアーデルライト皇国に吸収されてしまったらしい。
「……知らなかったわ……守りを固めておかないと不安ね。王都に手紙を書きましょう」
 王に知らせるか、騎士団に知らせるか。悩ましい。できればどちらとも関わりたくない。
 ――ここは、元の持ち主である大神官宛でいいだろう。
「でも、こんな生活も悪くないわね!」
 と、すっかり満足しているアリサである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無能だと思われていた日陰少女は、魔法学校のS級パーティの参謀になって可愛がられる

あきゅう
ファンタジー
魔法がほとんど使えないものの、魔物を狩ることが好きでたまらないモネは、魔物ハンターの資格が取れる魔法学校に入学する。 魔法が得意ではなく、さらに人見知りなせいで友達はできないし、クラスでもなんだか浮いているモネ。 しかし、ある日、魔物に襲われていた先輩を助けたことがきっかけで、モネの隠れた才能が周りの学生や先生たちに知られていくことになる。 小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿してます。

彼女が微笑むそのときには

橋本彩里(Ayari)
ファンタジー
ミラは物語のヒロインの聖女となるはずだったのだが、なぜか魔の森に捨てられ隣国では物語通り聖女が誕生していた。 十五歳の時にそのことを思い出したが、転生前はベッドの上の住人であったこともあり、無事生き延びているからいいじゃないと、健康体と自由であることを何よりも喜んだ。 それから一年後の十六歳になった満月の夜。 魔力のために冬の湖に一人で浸かっていたところ、死ぬなとルーカスに勘違いされ叱られる。 だが、ルーカスの目的はがめつい魔女と噂のあるミラを魔の森からギルドに連れ出すことだった。 謂れのない誤解を解き、ルーカス自身の傷や、彼の衰弱していた同伴者を自慢のポーションで治癒するのだが…… 四大元素の魔法と本来あるはずだった聖魔法を使えない、のちに最弱で最強と言われるミラの物語がここから始まる。 長編候補作品

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

私、パーティー追放されちゃいました

菜花
ファンタジー
異世界にふとしたはずみで来てしまった少女。幸いにもチート能力があったのでそれを頼りに拾ってもらった人達と働いていたら……。「調子に乗りやがって。お前といるの苦痛なんだよ」 カクヨムにも同じ話があります。

婚約破棄?それならこの国を返して頂きます

Ruhuna
ファンタジー
大陸の西側に位置するアルティマ王国 500年の時を経てその国は元の国へと返り咲くために時が動き出すーーー 根暗公爵の娘と、笑われていたマーガレット・ウィンザーは婚約者であるナラード・アルティマから婚約破棄されたことで反撃を開始した

お前を愛することはないと言われたので、姑をハニトラに引っ掛けて婚家を内側から崩壊させます

碧井 汐桜香
ファンタジー
「お前を愛することはない」 そんな夫と 「そうよ! あなたなんか息子にふさわしくない!」 そんな義母のいる伯爵家に嫁いだケリナ。 嫁を大切にしない?ならば、内部から崩壊させて見せましょう

【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。

凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」 「それは良いですわね、勇者様!」 勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。 隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。 毎日の暴行。 さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。 最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。 今までの行いを、後悔させてあげる--

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

処理中です...