【完結】G.o.D 完結篇 ~ノロイの星に カミは集う~

風見星治

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終章 呪いの星に神は集う

358話 真実 其の1

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 艦長席に座ったイクシィが最後の数字を叫んだと同時、旗艦の全システムが復旧した。僅か数十秒とは言え旗艦の全システムが停止、さながら宇宙に放り出されたような状況に陥ったが為に旗艦全体は恐慌の渦に呑まれた。

 更に居住区域に至れば目も当てられない。特に深刻なのが人工の湖や海、川など水のある区域で、無重力化の影響で大量の水が浮き上がり、叩きつけられた衝撃で発生した津波により甚大な被害を被った。筆舌に尽くしがたい被害は、大聖堂も区別なく襲った。

「クソが、こんな時にッ!?」

「やはり違う?なら、誰が……」

 無重力に投げ出される中、反射的に肆号機を睨んだルミナは想定外に動揺する肆号機の言動に傍と気付いた。旗艦の目的地は地球。惑星サイズの旗艦を地球にぶつける為に通信以外の制御を完全に掌握している中でシステムダウンさせる意味などない。

 ルミナの頭に、肆号機とアルヘナ以外の何者かの姿が朧げに浮かぶ。が、監視者の存在を知らない彼女に答えは出せない。やがて、システムの復旧に伴い全てが正常に戻る。光が、重力が、生命維持が、その他諸々の機能が完全に復活した。しかし最たる変化はシステムリカバリーによる肆号機とアルヘナの支配からの脱却。全てが、正常に戻った。

 が、艦橋は騒然としたまま。未だ混乱する理由は艦長席に座る女。誰もが奇異と恐怖が入り混じった目で見つめる理由は、神にしか出来ないと考えられていた旗艦の全機能停止からの再起動という出鱈目な手段を行った為。

 また、その女が座るべき席でもない。女は慣れた手つきで夥しい数のディスプレイを表示させ、やがて一番大きく映し出された女性に話しかけた。全員が艦長席と交互に見つめる映像の先には……

「聞こえますか?ルミナ」

 旗艦大聖堂に立つルミナが映っていた。銀色の長い髪が、戻り始めた重力に靡く。

「旗艦の全システムが落ちたようだけど、君の仕業か?一体どうやって……」

「今は旗艦アマテラスの監視者と言う言葉で納得して下さい、全部、後で話します。だから一つだけ、肆号機を完全破壊するか、組み込まれた神を救って下さい。お願いします!!」

「それでどうするつもりだ?」

「この状況を打開できます……もう攻撃が始まった!!急いで、私じゃあ精々1分程度しか持ちません。再び旗艦の制御が奪われたら、今度こそ地球と激突します!!」

「わかった、だがどうして今頃?」

「貴女の背中を見たら、こうしなきゃ情けなくて生きてけないって思ったからです!!いいから急いで!!」

 旗艦の監視者はルミナを急かす。全ては彼女次第。失敗すれば遠からず旗艦アマテラスは地球と激突、更に深緑の炎の暴走により最良で太陽系、最悪ならばこの銀河系全体が消滅する危険性すらある。全てを察したルミナはそれ以上を語らず、肆号機へと視線を移す。

「ハハッ、お前に何処に在るか分からない神を救い出せるのか?」

 神を詐称する肆号機は吠えた。が、彼女は不敵な笑みを浮かべる肆号機に冷めた視線を向ける。語らずも、雄弁に心情を語る。約束は守る、と。

「出来るワケ無いんだよッ!!人間程度に私を倒す事も、神を救う事も出来やしないッ!!」

「そんなに大事ならもっと厳重に管理しておくべきだったな」

「ハ?」

 そう言うと彼女は胸元のポケットから取り出した何かを肆号機に見せた。

「な、馬鹿な」

 肆号機の虚ろな目が、彼女の掌に転がる二つの小さな球体を見つめる。不規則な紋様が幾つも浮かぶ、淡い光を放つ赤色と青色の球体。誰もがソレの正体を理解出来なかったが、両者の言動が正体を如実に語る。

 神を神足らしめる核。青色の球体は、且つて"これ以上に安全な場所は無い"という出鱈目な理由で伊佐凪竜一の体内に隠されたツクヨミの本体。その隣の赤い球体はアマテラスオオカミの本体。なんて事はなく、既に救出は終わっていた。

「どうして……アレ?なんで、ナン……デ?」

 何時抜き取られたのか、だが疑問を口に出す事は叶わず。無数の青い剣閃が通り過ぎ、自らを神と己惚れた哀れな機械は一秒すら掛からずに全身をバラバラに刻まれた。

「最初に破壊した時」

 そう語るルミナに、肆号機への関心も興味も無い。原形を留めないまま地面に飛散する無数の破片に背を向けた彼女は踵を返し、視線の先に見える灰色の輝きから崩れ落ちる様に姿を見せた2機の式守シキガミ

 片方はタケミカヅチ三号機、アマテラスオオカミがヒルメと名を変え活動していた際に使用していた女性型の体躯。もう片方は神魔戦役終戦直後に自壊した後に特兵研によりどうにか復元されたツクヨミの体躯。

 その胸部は何かを納めろと言わんばかりに解放されており、ルミナが蠢く灰色の機械と複雑な機構の中心にある窪みに輝く神の核を納めると、ピクリとも動かなかった体躯が僅かに震えた。再起動。やがて閉じた瞼が開き、瞳孔に光が灯る。神が、遂に復活を果たした。

「申し訳ありません、油断したつもりは無かったのですが」

「手も足も出ませんでした。痛恨の極みです。肆号機を通し状況は理解していますが、ところでアナタは一体?」

 復活した神は悔恨もそこそこに、ルミナの横に浮かぶディスプレイに映し出されたオペレーターに疑問をぶつけた。人造神に与えられた性能は極めて高く、復活直後であろうが正しく状況を判断している。ただ一つ、艦長席に座る女を除いて。顔と名は知っていても、何故そこに座っているのか理解できない。

「確か、イクシィでしたね?どうしてそこに座っているのでしょうか?」

「どうも監視者と言う立場らしい」

「監視?旗艦を?そんな話、私は知らない……」

「記憶があるとすれば私と共に地球を管理していたアベルがそう自称していた記憶がありますが、関係あるのでしょうか?」

「あーもう!!説明しますから早く手伝って、早くしないとまた旗艦の制御が奪われるでしょうが!!」

 容赦なく神を叱りつけるE-12の言動は、その光景を見つめる全員の視線を一身に集める。神でさえ正体を掴めない女。"監視"する者。神を監視する者、ひいては世界を監視する者。頭を駆け巡る幾つもの言葉に、やがて誰もが直感した。この女が今回の一件に関する極めて重要な情報を持っている、と。

「積層防壁再展開」

「攻撃尚も続行、防壁突破」

「アマテラスオオカミ!!ルミナからアメノウズメを貰って!!本殿前に転送します」

「承知しました。で、アナタは一体?」

「私は旗艦アマテラスの監視者。我らの主からここで起こる事の全てを監視する役目を仰せつかった存在です」

「そんな、そんな記録は……」

「無いでしょうね、私の監視対象には神であるアナタも含まれていますから。人の可能性を探る我らの主により、"歴史を持たない文明"というモデルケースして選別されたアマツミカボシと旗艦アマテラスの補佐、更にこの銀河中の文明を纏め上げる各文明の折衝役という役目として生み出されたのがアナタです。その監視が私の役目。だから私の存在は神にすら秘匿されました。最も私達監視者全員がそうなのですけど」

「なら、君は3000年以上も生きているのか?」

「そうです。より正確には5代目です。私達は人の数倍以上の寿命を持ち、更に私はアナタとスサノヲが暴走した時の為にそれを停止する権限と身体的能力を与えられたE-12……オリジナルイヴの複製体モデル12型です」

「オリジナル……何を言っているのだ?」

「全ては遠い昔、そこで興った一つの文明に端を発しています。我らが主の名前はカイン。貴方が良く知るカイン=デル=ノガード。最もその名は偽名で、真の名はレッドドラゴン=カイン。それが我らの主の真の名。遥か遠い昔、100億年近く前に存在した一つの文明の崩壊から逃れ、次なる絶望に対抗する希望を生み出す為に主はこの銀河へとやってきて、人類と文明を生み出しました」

 その言葉に、全員の手が止まった。大聖堂にいるツクヨミも、本殿の前で封印を解除しようとしたアマテラスオオカミでさえもだ。理解し難い真実を突きつけられた全員が、一様に動きを止める。ともすれば神よりも冷静なルミナでさえ、だ。

 連合中が、波を打ったように静まり返った。今の今まで秘匿されてきた銀河の歴史に誰もが等しく、一様に、呆気にとられた。
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