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第二部 高校生編

露出が期待できない水着回って違くね?

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 半日なじみと絡む(物理)だけで回復するのだから、もう無限に戦える気がする。

 いや、大げさに言った。正直もう二度とあんな頭を使うギャンブルはしたくない。糖分を使い過ぎて頭が重いのだ。
 やはり聡明になって戦うより阿呆となって嫁と一緒に居る方が幸せである。能力と幸福が比例しない好例だな。何も知らぬ無知蒙昧のまま意味も意義も意識もなく酔っぱらう愚か者も、そのままであれば自らを恥じることは無いのだから。

 さておき、信照カップルとのダブルデートの日時が近い。

 俺がわけわからん苦労をしたおかげで何の支障もなく開催できるのだから土下座して感謝して欲しいくらいだが、生憎言った所で頭を心配されるだけだろうから言わない。俺も自分の頭がちょっと心配だよ。この金という物的証拠が無かったら病院に駆け込んでいた頃だろうさ。

 だが事実として金がある。
 そして準備の為に買い出しの必要もある。

 とはいえ聞いたプランではちょっと遠出して海に行き、ちょっと良さげな旅館に泊まって帰ってくるというだけなので、そこまで多くのものが必要なわけではない。

 ただ一つ、とても大切なものがある。

「という訳で水着を買いに行きます」
「はーい」
「ちなみに現在持っている水着は?」
「学校用の奴だけです!」
「入る?」
「入りません!」

 堂々と言う事なんだろうか。

「あ、一応言っとくけど、お腹周りはちょっとぶかぶかなくらいだから。おっぱいとお尻がつっかえてるだけだから」
「んなこたわかってるよ。お前の体で知らんことの方が少ないわ」
「なんでケーくんっていちいち嬉しい事しか言わないの?」
「お前に対しては睦言以外を言った覚えがないから、その所為じゃないか?」
「む、む、むつ、むつ・・・」

 うちの高校って電子辞書ありだったと思うんだけど、なんで紙辞書使ってるんだろう。
 電子辞書持ってたよな?

「通りでケーくん、歩く18禁みたいな感じなんだ」
「えっなにその不名誉」

 割と普通に嫌なんだけど。

「だってケーくん、動きとか表情とか全部エッチだよ?」
「えー・・・」

 いやまて、落ち着け。
 できる、まだ逆転の目は残されているはず。

「そ、それはなじみの視点にバイアスが掛かってるからじゃないか?」
「でも女子は皆言ってるよ?」
「み、皆って、皆? オール?」
「そうだよ。なんで英語?」
「いや、何でもない・・・」

 男ってそういう目で見られることあるもんなのか・・・?

 イケメン、なのはまあ何人かに聞いたからこの際良しとしよう。
 歩く18禁は流石に腑に落ちない。

 しかし客観的意見を羅列されれば、流石に首を縦に振らざるを得ない。
 まあちょうど超能力者という免罪符があるんだ。大体全部超能力が悪い。そう言う事にしようじゃないか。

「ふう、色々混乱したが、もう大丈夫。なぜって? 私が来た」
「ケーくん、多分まだ大丈夫じゃない」

 だろうな。



 そんな混乱も収まり、俺たちは改めて水着売り場に来ていた。
 流石にシーズン直前という事もあって大々的に売り出されており、それなりの賑わいも見受けられる。

 とはいえ予想外の事もあった。

「『今年の夏はカジュアル&セクシュアルがトレンド』?」
「結構、布地面積薄いね・・・これとかもう紐じゃん。パートナーのあるなしに関わらず、人としてどうなの、これ」

 この水着売り場の売り文句である。
 深刻な布不足でも起きているのか、とでも言いたくなるほどの有様だった。

 まあ、確かにボディラインが一つのアクセサリー足りうるというのは事実だろう。
 実際俺もそれを想定して筋肉を付けてきたわけだし、なじみの裸体など刺激が強すぎて未だに直視にはエネルギーを使う。
 ボディビルダーやグラビアアイドルなど、それを専門にして飯を食う人種だって存在するのだ。

 では肌の露出は推奨されるべきか、と問われればそれは断じて否だ。
 第一にここまで大きく露出させるには相当自分に自信が無いと出来ない。弛んだ腹を見せるのはおしゃれではなく醜態というのだ。
 第二に傷跡が存在するという風などうしようもない理由で隠さざるを得ないという人種もいる。
 第三に、というかこれが一番大切だと思うが、男女問わず貞操観念が緩いのは如何なものか。

 『私は無暗やたらに肌を晒す人種です』と喧伝して恥ずかしくないのだろうか。

 生憎俺となじみは恥ずかしく思うタイプなので、たとえトレンドだろうとカジュアル&セクシュアルなんてスタイルにはならない。恥を忍んでまで流行りを追っかけるつもりは無い。

 売り場がそのスタイルを押しているというだけで、別に全部が全部それ一色という訳ではないしな。
 普通に露出控えめなものも存在するのだが・・・。

「ケーくん、この辺全部Dまでなんだけど」
「まあ、日本人はそもそもGなんてそうそういないしな」
「大きいのもあるけど・・・全部痴女みたいなデザイン・・・」

 そう言ったものは全部胸が虚無~中の下くらいのものばかりで、なじみの大サイズが入るものなど無かったのだ。
 なぜかサイズが大きい程に布面積が小さくなる謎。逆だろ逆。

「どうしよう、一回着けてみる?」
「やめとけ。碌なことにならん」

 マイクロビキニ片手に聞いてくるが、勿論NOだ。
 相当露出を抑えている今でさえ周囲の視線が突き刺さるのだ。こんなもん着たら全員が強姦魔にクラスチェンジしても不思議ではない。

 流石にこの人数では後始末が面倒だ。

「可愛いのが無いのは分かってたけど、こういうデザインしかないのは予想外だったかなぁ・・・」

 なじみが少し疲れた顔で笑う。
 元来露出を好まない質である。夏直前だというのに、薄手とはいえ長袖ロングスカートという筋金入りだ。それでも隠し切れないスタイルの良さの所為で、かえってエロく見えるのはご愛嬌。

「店員に別サイズないか聞いてみるか?」
「んー・・・でも良さげなのないしなぁ・・・」
「ちなみになじみはどんなのが良いんだ?」
「私としてはワンピースタイプかな。割と露出少ないし」

 あれって相当スタイル良くないと着こなせない部類じゃなかったか?
 もしそうなら日本じゃそうそう売ってないだろう。寸胴体型の多い国だからな。

「その上に透けないおっきめのパーカー着たい」

 海という環境で期待される露出を徹底的に潰していくスタイル。
 太腿くらいしか肌を出していないが、普段と比べると出してる方である。

「じゃあとりあえずパーカーから買うか」
「そだね」



 無地の灰色パーカーを買った。
 できるだけ肌を隠したいというなじみの要望に応えるべく、サイズは大きめだ。
 しかし今回限りではもったいないという事で、俺のサイズに合わせて後日部屋着としても流用できるようにした。

 合わせた時点でもわかる萌え袖具合だったので、まあなじみの要望は満たされているだろう。

 メンズ売り場だったので少し目立ったが、些細な事だ。

「そういえばケーくんの水着は?」
「男物なんて全部大差ないだろ。昔買った迷彩柄のトランクス持ってく」

 元の売り場に戻って吟味する事しばらく。
 なじみからの問いに解答するも、なじみはどこか不満げな様子。

「ケーくん。一応メンズも見に行こう」
「え? なんでまた・・・」
「いいから」

 珍しく強引ななじみに押され、メンズ売り場に連れていかれる。
 似たようなデザインの水着を選び、試着してなじみに見てもらう。

「ほれ、大体こんな感じだ。なんか変なところあったか?」

 水着はパンツの上に履いているが上半身は裸。当日はここからパンツが無くなるが、ぱっと見では当日の装備そのままだ。

「うん、ケーくん。さっきの店戻って同じパーカーもう1着買おう」
「いやしかし、あれはなじみ用だろ? 後日俺の部屋着にするにしたって、2着あってもしょうがないんじゃないか?」
「あんな感じで海行ったら私が気が気じゃないから。多分ナンパされまくって海どころじゃなくなるから」
「だからそのナンパを防ぐためにお前に買ったパーカーだろうが」
「ケー、くん、が! ナンパされるって言ってるの! ホラ行くよ」

 ああ、そっち?
 俺男だけど、あるもんなのか? そういうの。

 そういやでも歩く18禁とか言われたし・・・未だ腹に据えかねるが。

「あ、そうだ」
「どうしたの?」
「ペアルックになるな」
「・・・」
「やめるか?」
「絶対やる」
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