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第二部 高校生編
修行回飛ばすのと修行量少なくするなら後者の方が印象悪い
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「いやあ・・・出来てしまったね」
感心半分呆れ半分といった風に夜狐は言う。
「予定内・・・しかも私のじゃない、君の、それも昼食に間にあってしまうレベルの時間帯じゃないか」
「早いのか?」
「そりゃもう。渡辺君が君と同じところに至るのに3年は掛かってるからね。ドーラの衝撃に対して障壁を張っていたから、まあ才能はあると思っていたが・・・」
超能力の修練は最上級の結果となった。
半日とかからず免許皆伝、後は自分で高めてね、という話だ。
免許皆伝というと大層な風に聞こえるかもしれないが、習得したのは念力とそれの応用ぐらいのもので、やったタスク自体はそう多くない。
・・・実は一回腕が吹き飛んだが、なぜか一瞬で治った。幻覚でも見たんだろうか。
「いやはや・・・君は少々恵まれすぎちゃいないかい? 端正な容姿、抜群の感性、聡明な頭脳に強靭な体。持ってる超能力は平時向きだが、容量の多さ故に有事にも対応可、おまけに最高の幼馴染兼彼女。前世でどんな徳を積んだのやら」
「少なくとも強靭な体は自分の努力だ」
「素養の話だよ」
さもありなん。
「まるで主人公みたいだねえ・・・エロハーレム物の。なじみちゃんに一途だけど」
「至高がなぜ至高か分かるか? それだけでいいからだよ」
「ひゅう、エロ系超能力持ってるくせに変な奴」
「うん? 俺以外にもいたのか? エロ系」
「まさか。大抵の超能力者は戦闘向けだよ。渡辺君みたいな平時向けが若干いて、更に希少なのが私みたいな万能型かな。エロに関連してる奴なんて初めて見たよ。分類的には変則的な万能型かな」
「・・・そんなに経験豊富そうには見えないが」
夜狐の外見年齢はいいとこ24歳。
ビジネスなら侮られて碌な交渉もできない年頃だ。
「失敬な。私ほど経験豊富な生物なんてそうそういないと思うぜ。これでも1000年はこの稼業なんだから」
「せんッ・・!?」
「超能力者は物理に囚われないって言っただろう? ま、不死身なのは極一部だろうけど、ここまでくると超能力者というより妖怪に近いよね」
流石に少々信じ難い・・・が、列車砲を生身で受け止めたシーンの所為でもう何でもありに思えてきた。
なんというか、後出しジャンケンの様に超能力者絡みの設定が出てくるな。
そういえば以前屋根の上を走った時、かなり強烈に踏み込んだはずが足場は一切崩れないことがあった。あれも物理に囚われない一部という事か。
セックスに限り疲労無効、なんてのも実質的にはこのあたりの能力を引っ張ってきた形なのだろう。
そう考えてみると・・・邪神に付与されたこの超能力。
きな臭いというか、絡繰りが見えてきたような気がする。
超能力の『源』みたいなのがあって、そこから邪神が好きな形で表出させるという形なのかもしれない。
邪神サポートありきなら邪神の意図と同じ使い方しかできないが・・・サポート抜きで使うなら、戦闘用ステータスと銘打たれたあの部分。少なくともあの程度の拡張性はあるという事じゃあないだろうか。
例えば・・・マジカルチンポ以外の超能力を獲得するとか。
超能力者と出会って『君どんな能力?』と聞かれ『チンコの能力です』なんてマヌケな回答をするリスクが無くなるのなら、割とありがたい話やもしれない。
この可能性に気付けただけでも、今回の訓練は十分な実入りだっただろう。
実際にはそれ以外の収穫も大量なので、初回の訓練は同時に最終回を兼ねることとなった。
*
「おかえりなさい!」
「おおっと、ただいま」
今日のなじみは積極的な方か。
日によっては奥の方から呼びかける程度に済ますこともあるが、今日みたいに抱き着いてくるときもある。本当にその時その時の気分で決まるらしいので、神ならぬ俺になじみの出迎えの形を予測することは出来ない。
「今日のお昼はねえ、カレーだよ!」
「そうかそうか、なじみの料理はおいしいからなぁ」
「愛情が違うよ愛情が」
昨今では気恥ずかしがる様子もなくこんなことを言ってくれる。
お互いがそんな調子なので傍から見ればバカップルの謗りを免れないだろうが、生憎余人のあやふやな陰口より目の前にしかと存在している嫁の方が大事だ。
「そういえばちょっと私の血を混ぜようと思ったんだけど、どうかな?」
「おおう」
受ける謗りはヤンデレに訂正だ。
少し面食らったがそれ以上のことは無い。
「なじみの肌に傷が付くからダメ」
「目立たないようにするよ?」
「それでもダメ。どうしても血を啜りたいなら俺のにしとけ」
「ケーくん傷つけるなんて」
「そういう事だよ」
「そっかぁ」
異物混入は避けられた。故に何の問題もない。いいね?
配膳されたカレーを前に座り込み、いただきますと感謝してから食べ始める。
「前にさ」
「うん?」
「犬用の首輪買ってきたことあったじゃん」
「あれな。それがどうかしたか?」
「そろそろちゃんとした方の首輪も買いたいなーってなじみさんは思うわけだけど、どうかな?」
「ああ・・・そんな欲しいの?」
「そりゃ勿論。私のなんていうか・・・性癖? そういうのにフィットしたアイテムだと思うの」
人語を忘れるマスターピースなのだから、そりゃまあフィットはしているだろうけども。
「買うのは良いけど・・・」
「けど?」
「金がない」
「ああ・・・」
呼ぶまで来るなと部長に言われたために、事実上の解雇のような形でバイトを休み続けている。
そのため一時期持ち直した収入もまた右肩下がりの一方なのだった。
「新しいバイト先探すのもなんか筋が通らない感じがしてなぁ」
「そっかぁ・・・首輪買うにも困窮するぐらいかぁ・・・」
「いや、困窮って程じゃない。ただ余裕を持っておきたいんだ」
「そりゃそうだよね。うん、わかった。私のわがままだから、我慢する」
「ごめんな」
「良いよ。この我慢もケーくんのためだもん」
つくづく、恵まれてるな、俺は。
「その代わりだけど、今日はちょっと甘えさせてね?」
「ああ、勿論」
カレーが無くなるのに、普段の倍以上時間が掛かった。
それはお互いがお互いに食べさせあっていたからだというのは、なんとなく察しの付く話だろう。
*
「ちょっと、カレーの味がするね」
「さっきまで食べてたんだ、当たり前だろ」
「私の作った、カレーをね」
「はいはい」
また軽くキスをする。
テレビもスマホも本も開いていない。この部屋に置かれた娯楽の類は恐ろしく少ない。
それは、一緒に住む相手が全部満たしてくれるから。
前戯にもならないスキンシップの様なキスで、なじみの瞳は潤み始める。
その瞳はやはり俺しか映っていない。
ショートパンツから覗くふとももを手で撫でる。
むにむにと柔らかく、すべすべと滑らかで、ぷるぷるとこちらを誘うふとももを。
あくまでもスキンシップなので、強烈な部分、例えば内ももや付け根あたりを触っているわけではない。この高ぶりは性的なそれでなく、美術品への感動に似る。
もっとも、瞳の中にハートを浮かべるなじみがそうでないことは百も承知なのだが。
体勢を変える。
俺がなじみを後ろから抱きしめ、床に座り込む形へ。
この角度だと視線を下ろした先になじみの胸が目に付く。
ブラジャーの補正もあってかつんと前に張り出した双丘は、そこより下を見通すことを許さない。
少し視線を上にあげて、なじみの後頭部を見る。
セミロングの黒髪がいつもどおりつやつやに輝いている。顔を埋めると仄かに甘い香りがする。使っているシャンプーは俺と同じ無香料のはずなのだが、どうしてもこうも変わるのだろう。
俺が花の香りをバラまいててもしょうがないのは認める。
好きな人と一緒に居る。
そのために主力戦車を右ストレートでぶち抜ける様な存在になる必要はあったのだろうか。
いやまあ、無いよりはいいんだろうけどさ。
感心半分呆れ半分といった風に夜狐は言う。
「予定内・・・しかも私のじゃない、君の、それも昼食に間にあってしまうレベルの時間帯じゃないか」
「早いのか?」
「そりゃもう。渡辺君が君と同じところに至るのに3年は掛かってるからね。ドーラの衝撃に対して障壁を張っていたから、まあ才能はあると思っていたが・・・」
超能力の修練は最上級の結果となった。
半日とかからず免許皆伝、後は自分で高めてね、という話だ。
免許皆伝というと大層な風に聞こえるかもしれないが、習得したのは念力とそれの応用ぐらいのもので、やったタスク自体はそう多くない。
・・・実は一回腕が吹き飛んだが、なぜか一瞬で治った。幻覚でも見たんだろうか。
「いやはや・・・君は少々恵まれすぎちゃいないかい? 端正な容姿、抜群の感性、聡明な頭脳に強靭な体。持ってる超能力は平時向きだが、容量の多さ故に有事にも対応可、おまけに最高の幼馴染兼彼女。前世でどんな徳を積んだのやら」
「少なくとも強靭な体は自分の努力だ」
「素養の話だよ」
さもありなん。
「まるで主人公みたいだねえ・・・エロハーレム物の。なじみちゃんに一途だけど」
「至高がなぜ至高か分かるか? それだけでいいからだよ」
「ひゅう、エロ系超能力持ってるくせに変な奴」
「うん? 俺以外にもいたのか? エロ系」
「まさか。大抵の超能力者は戦闘向けだよ。渡辺君みたいな平時向けが若干いて、更に希少なのが私みたいな万能型かな。エロに関連してる奴なんて初めて見たよ。分類的には変則的な万能型かな」
「・・・そんなに経験豊富そうには見えないが」
夜狐の外見年齢はいいとこ24歳。
ビジネスなら侮られて碌な交渉もできない年頃だ。
「失敬な。私ほど経験豊富な生物なんてそうそういないと思うぜ。これでも1000年はこの稼業なんだから」
「せんッ・・!?」
「超能力者は物理に囚われないって言っただろう? ま、不死身なのは極一部だろうけど、ここまでくると超能力者というより妖怪に近いよね」
流石に少々信じ難い・・・が、列車砲を生身で受け止めたシーンの所為でもう何でもありに思えてきた。
なんというか、後出しジャンケンの様に超能力者絡みの設定が出てくるな。
そういえば以前屋根の上を走った時、かなり強烈に踏み込んだはずが足場は一切崩れないことがあった。あれも物理に囚われない一部という事か。
セックスに限り疲労無効、なんてのも実質的にはこのあたりの能力を引っ張ってきた形なのだろう。
そう考えてみると・・・邪神に付与されたこの超能力。
きな臭いというか、絡繰りが見えてきたような気がする。
超能力の『源』みたいなのがあって、そこから邪神が好きな形で表出させるという形なのかもしれない。
邪神サポートありきなら邪神の意図と同じ使い方しかできないが・・・サポート抜きで使うなら、戦闘用ステータスと銘打たれたあの部分。少なくともあの程度の拡張性はあるという事じゃあないだろうか。
例えば・・・マジカルチンポ以外の超能力を獲得するとか。
超能力者と出会って『君どんな能力?』と聞かれ『チンコの能力です』なんてマヌケな回答をするリスクが無くなるのなら、割とありがたい話やもしれない。
この可能性に気付けただけでも、今回の訓練は十分な実入りだっただろう。
実際にはそれ以外の収穫も大量なので、初回の訓練は同時に最終回を兼ねることとなった。
*
「おかえりなさい!」
「おおっと、ただいま」
今日のなじみは積極的な方か。
日によっては奥の方から呼びかける程度に済ますこともあるが、今日みたいに抱き着いてくるときもある。本当にその時その時の気分で決まるらしいので、神ならぬ俺になじみの出迎えの形を予測することは出来ない。
「今日のお昼はねえ、カレーだよ!」
「そうかそうか、なじみの料理はおいしいからなぁ」
「愛情が違うよ愛情が」
昨今では気恥ずかしがる様子もなくこんなことを言ってくれる。
お互いがそんな調子なので傍から見ればバカップルの謗りを免れないだろうが、生憎余人のあやふやな陰口より目の前にしかと存在している嫁の方が大事だ。
「そういえばちょっと私の血を混ぜようと思ったんだけど、どうかな?」
「おおう」
受ける謗りはヤンデレに訂正だ。
少し面食らったがそれ以上のことは無い。
「なじみの肌に傷が付くからダメ」
「目立たないようにするよ?」
「それでもダメ。どうしても血を啜りたいなら俺のにしとけ」
「ケーくん傷つけるなんて」
「そういう事だよ」
「そっかぁ」
異物混入は避けられた。故に何の問題もない。いいね?
配膳されたカレーを前に座り込み、いただきますと感謝してから食べ始める。
「前にさ」
「うん?」
「犬用の首輪買ってきたことあったじゃん」
「あれな。それがどうかしたか?」
「そろそろちゃんとした方の首輪も買いたいなーってなじみさんは思うわけだけど、どうかな?」
「ああ・・・そんな欲しいの?」
「そりゃ勿論。私のなんていうか・・・性癖? そういうのにフィットしたアイテムだと思うの」
人語を忘れるマスターピースなのだから、そりゃまあフィットはしているだろうけども。
「買うのは良いけど・・・」
「けど?」
「金がない」
「ああ・・・」
呼ぶまで来るなと部長に言われたために、事実上の解雇のような形でバイトを休み続けている。
そのため一時期持ち直した収入もまた右肩下がりの一方なのだった。
「新しいバイト先探すのもなんか筋が通らない感じがしてなぁ」
「そっかぁ・・・首輪買うにも困窮するぐらいかぁ・・・」
「いや、困窮って程じゃない。ただ余裕を持っておきたいんだ」
「そりゃそうだよね。うん、わかった。私のわがままだから、我慢する」
「ごめんな」
「良いよ。この我慢もケーくんのためだもん」
つくづく、恵まれてるな、俺は。
「その代わりだけど、今日はちょっと甘えさせてね?」
「ああ、勿論」
カレーが無くなるのに、普段の倍以上時間が掛かった。
それはお互いがお互いに食べさせあっていたからだというのは、なんとなく察しの付く話だろう。
*
「ちょっと、カレーの味がするね」
「さっきまで食べてたんだ、当たり前だろ」
「私の作った、カレーをね」
「はいはい」
また軽くキスをする。
テレビもスマホも本も開いていない。この部屋に置かれた娯楽の類は恐ろしく少ない。
それは、一緒に住む相手が全部満たしてくれるから。
前戯にもならないスキンシップの様なキスで、なじみの瞳は潤み始める。
その瞳はやはり俺しか映っていない。
ショートパンツから覗くふとももを手で撫でる。
むにむにと柔らかく、すべすべと滑らかで、ぷるぷるとこちらを誘うふとももを。
あくまでもスキンシップなので、強烈な部分、例えば内ももや付け根あたりを触っているわけではない。この高ぶりは性的なそれでなく、美術品への感動に似る。
もっとも、瞳の中にハートを浮かべるなじみがそうでないことは百も承知なのだが。
体勢を変える。
俺がなじみを後ろから抱きしめ、床に座り込む形へ。
この角度だと視線を下ろした先になじみの胸が目に付く。
ブラジャーの補正もあってかつんと前に張り出した双丘は、そこより下を見通すことを許さない。
少し視線を上にあげて、なじみの後頭部を見る。
セミロングの黒髪がいつもどおりつやつやに輝いている。顔を埋めると仄かに甘い香りがする。使っているシャンプーは俺と同じ無香料のはずなのだが、どうしてもこうも変わるのだろう。
俺が花の香りをバラまいててもしょうがないのは認める。
好きな人と一緒に居る。
そのために主力戦車を右ストレートでぶち抜ける様な存在になる必要はあったのだろうか。
いやまあ、無いよりはいいんだろうけどさ。
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