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お茶会は波乱の幕開け 4
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「へ?アンディ殿、カルタッカ男爵家を知っているのか?」
あんなに貴族に疎いアンディがカルタッカ男爵家を知っている事に驚き、オズワルドは咄嗟にアンディに問いかける。
すると、アンディはしっかりと頷いたあとに、こう口を開いた。
「はい。カルタッカ男爵家は、ロザリア様の元婚約者候補の令息がいまして…。今も結構ロザリア様に執着している印象が…」
「ロザリアに執着!?うっそ、そんなの知らないわ!も、もしや夜会で付き纏われてるとか?」
「付き纏いは…多分ないですね。ただよく、夜会後にロザリア様から『あのナルシスト野郎、手は出さないのに、いっつも近くで舐め回すように見るの』って愚痴を溢してまして…」
「いやあああああ!!も、もしかして、このクッキーはロザリアにのみ効く媚薬で、お茶会を知ったカルタッカ男爵令息が送ってきたものって事かしら…?」
プルプルと震えながら、リディアがアンディにそう訊くと、アンディは一瞬考えたあとにコクンと首を縦に振る。
それを見たリディアは、ロザリアを支えていない片方の手で頭を抱え、より一層身体を震わせつつなんとか声を絞り出した。
「…ま、まずいわ…。この媚薬クッキー、もしかしたら魅了魔法が使えるウィリアムが関わっているかも…。媚薬を作れるのは王家と公爵家のみだし、お茶会を中止して私がエンブレスト伯爵家にロザリアを送り返したら、馬車移動の途中で馬車ごと襲撃されて、彼女が連れ去られる可能性が…」
「な、なんですって!?」
「あ、あくまで可能性の話よ!きっと、離宮でロザリアを休ませる事も計画のうち。…ただ…」
リディアは少し期待の眼差しを向けて、オズワルドとアンディを見た。
「きっと、ウィリアムはいくつか誤算をしていると思うわ。一つ目はオズ。今のオズはもう普通に魔力を使えるわ。だから馬車が襲撃されても、馬車を防護魔法で守りつつ、一人で襲撃犯を薙倒せるはず」
「リディア様…確かに最近はみるみる魔力量が増えていますからね。…原因は不明ですが」
「ええ。そして二つ目はアンディくん。貴方よ。貴方は他の騎士にも劣らない技量を持っている。そうよね?」
「えっ!?…あー、そう言われるとなんか…。最近鍛錬出来てませんし」
「ふふっ。でも、私知ってるわ。オズに背負い投げしたんですって?オズの父親であるウェリントン公爵でさえも、なんとか出来る事を軽々しちゃうだなんて。あははっ!」
「…えっ!?」
なぜオズワルドを背負い投げしたのを知っているのか分からず、アンディはオズワルドをジッと見る。
すると、オズワルドは首を横に振って、大きくため息をついた。
「リディア様。それはアンディ殿ではありません。彼の姉のアナベルです。確かに背負い投げを話したのは事実ですが、アンディ殿には一回もされてませんよ。でも、リュドウィック殿下を横抱きにしたのはアンディ殿なので、似たもの姉弟かと」
「あはははは!まさかのお姫様抱っこ!?いいわねぇ、私もアンディくんにお姫様抱っこされたいわぁ…。って、今はそういう話をしている場合ではないわ」
一通り笑ったリディアは、すぐに真顔になって精神を落ち着かせ、王女の風格を露わにする。
そして、アンディにこう指示を出した。
「アンディくん。ロザリアの専属執事である貴方に是非とも頼みたいわ。彼女を客室に設置してあるベッドに運んで寝かせて頂戴。案内はオズがしてくれるから。あと、お茶会はすぐに中止するわ」
「承知しました。必ずや使命を果たします。騎士団長様、案内をよろしくお願いします」
「ああ。ロザリア嬢に何かあったら困るからな。では、こっちに来てくれ、アンディ殿」
未だに媚薬が抜けていないロザリアを抱えながら、アンディはオズワルドの指示のもと、離宮にある客室へと運んだ。
この後に、ロザリアの心境がガラリと変わってしまうとは、つゆも知らずに…。
あんなに貴族に疎いアンディがカルタッカ男爵家を知っている事に驚き、オズワルドは咄嗟にアンディに問いかける。
すると、アンディはしっかりと頷いたあとに、こう口を開いた。
「はい。カルタッカ男爵家は、ロザリア様の元婚約者候補の令息がいまして…。今も結構ロザリア様に執着している印象が…」
「ロザリアに執着!?うっそ、そんなの知らないわ!も、もしや夜会で付き纏われてるとか?」
「付き纏いは…多分ないですね。ただよく、夜会後にロザリア様から『あのナルシスト野郎、手は出さないのに、いっつも近くで舐め回すように見るの』って愚痴を溢してまして…」
「いやあああああ!!も、もしかして、このクッキーはロザリアにのみ効く媚薬で、お茶会を知ったカルタッカ男爵令息が送ってきたものって事かしら…?」
プルプルと震えながら、リディアがアンディにそう訊くと、アンディは一瞬考えたあとにコクンと首を縦に振る。
それを見たリディアは、ロザリアを支えていない片方の手で頭を抱え、より一層身体を震わせつつなんとか声を絞り出した。
「…ま、まずいわ…。この媚薬クッキー、もしかしたら魅了魔法が使えるウィリアムが関わっているかも…。媚薬を作れるのは王家と公爵家のみだし、お茶会を中止して私がエンブレスト伯爵家にロザリアを送り返したら、馬車移動の途中で馬車ごと襲撃されて、彼女が連れ去られる可能性が…」
「な、なんですって!?」
「あ、あくまで可能性の話よ!きっと、離宮でロザリアを休ませる事も計画のうち。…ただ…」
リディアは少し期待の眼差しを向けて、オズワルドとアンディを見た。
「きっと、ウィリアムはいくつか誤算をしていると思うわ。一つ目はオズ。今のオズはもう普通に魔力を使えるわ。だから馬車が襲撃されても、馬車を防護魔法で守りつつ、一人で襲撃犯を薙倒せるはず」
「リディア様…確かに最近はみるみる魔力量が増えていますからね。…原因は不明ですが」
「ええ。そして二つ目はアンディくん。貴方よ。貴方は他の騎士にも劣らない技量を持っている。そうよね?」
「えっ!?…あー、そう言われるとなんか…。最近鍛錬出来てませんし」
「ふふっ。でも、私知ってるわ。オズに背負い投げしたんですって?オズの父親であるウェリントン公爵でさえも、なんとか出来る事を軽々しちゃうだなんて。あははっ!」
「…えっ!?」
なぜオズワルドを背負い投げしたのを知っているのか分からず、アンディはオズワルドをジッと見る。
すると、オズワルドは首を横に振って、大きくため息をついた。
「リディア様。それはアンディ殿ではありません。彼の姉のアナベルです。確かに背負い投げを話したのは事実ですが、アンディ殿には一回もされてませんよ。でも、リュドウィック殿下を横抱きにしたのはアンディ殿なので、似たもの姉弟かと」
「あはははは!まさかのお姫様抱っこ!?いいわねぇ、私もアンディくんにお姫様抱っこされたいわぁ…。って、今はそういう話をしている場合ではないわ」
一通り笑ったリディアは、すぐに真顔になって精神を落ち着かせ、王女の風格を露わにする。
そして、アンディにこう指示を出した。
「アンディくん。ロザリアの専属執事である貴方に是非とも頼みたいわ。彼女を客室に設置してあるベッドに運んで寝かせて頂戴。案内はオズがしてくれるから。あと、お茶会はすぐに中止するわ」
「承知しました。必ずや使命を果たします。騎士団長様、案内をよろしくお願いします」
「ああ。ロザリア嬢に何かあったら困るからな。では、こっちに来てくれ、アンディ殿」
未だに媚薬が抜けていないロザリアを抱えながら、アンディはオズワルドの指示のもと、離宮にある客室へと運んだ。
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