訳あり男装執事は、女嫌いの騎士団長に愛され口説かれる

九重ネズ

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“アンディ”という執事について (オズワルドside)

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 エンブレスト伯爵邸を離れ、王族の馬車を引く馬に跨って揺られながら、オズワルドはアンディの事について思案していた。

 (…アンディ殿って、本当に男…なのか?あの胸の感触、完全に俺の胸板と違う…。柔らかくて、服越しでもふわふわで…。うーん…他の騎士団メンバーの胸板揉めば、違いが分かるだろうか…。でも嫌がられるだろうなぁ…)

 下半身に熱を持ち始めているのを自覚しながら、整備された道を突き進み、ようやく王城の正門に到着する事が出来た。
 御者に馬車の事を任せてから、馬車から降りたリュドウィックの斜め後ろにつき、城に入って廊下を突き進む。
 この時もオズワルドはずっとアンディの事を考えていたが、やはりアンディの素性が気になってしょうがないため、とりあえずリュドウィックに話を聞いてみようと口を開いた。

「あ、あの!リュドウィック殿下!少々お聞きしたい事があるんですが…」
「ん?聞きたいことかい?あと、ここには俺とオズしかいないから、業務の事じゃないなら敬語なしで呼んでくれよ」
「は、はい。じゃあお言葉に甘えて…。実は今日ずっと、エンブレスト伯爵邸にいた執事のアンディが、気になっていて…」
「ほっほ~う。顔が赤くなっているぞ、オズ。もしや、春の到来かな?アンディくんに、恋しちゃった~のねっ」
「し、してねぇって!た、ただ気になるっていうか、彼の素性を知りたいっていうか…その…」

 アンディの事を考えれば考えるほど、己の下半身がより熱を持って、じわじわと硬くなっていく。
 それに耐えるように両脚を使って踏ん張っていると、リュドウィックはそんなオズワルドを見て、肩をすくめたままこう言い放った。

「…はぁ~…。言っておくけど、俺はアンディくんの事、なんにも知らないよ?今日まで調べてたのは、エンブレスト伯爵のやっている事業の詳細と、ロザリア嬢の事。そして彼女の家族関係のみさ。…でも、アンディくんの姓名については、推測だけど一応目星ついてるよ」
「…えっ!?ほ、本当か!?」

 一筋の光が見えたような気がして、オズワルドはリュドウィックにグイッと詰め寄る。
 けれど、男に距離を縮められるのが嫌なリュドウィックは、オズワルドの肩を押して距離を取り、こう話を続けた。

「はいストップ。君が近付くと、BのLになっちゃうから、そこは阻止させて貰うよ」
「?びーのえる?」
「…まぁ、そこは置いておいて。今は、アンディくんの姓名推測の話だったよね。…そういや、オズ。俺が最初にアンディくんと話していた時、彼は『実家が少し複雑』って言ってなかったかい?」
「え?あー、確かに聞いたと思うが…」
「うんうん。この時、『もしかしたらアンディくんは平民かも』と最初思ったんだよねぇ。でも、平民が貴族と、しかもあの有名なエンブレスト伯爵のご令嬢と、あんなに近く仲睦まじく話せると思うかい?」
「た、確かに…」

 この国では一応『平等』を掲げているが、実質的に貴族と平民の間には大きな溝がある。
 かといって、平民が虐げられている状況はあまりなく、なおかつ貴族と平民が深く関わる事もない。
 だから、ロザリアと仲良くしているアンディは貴族出身だという事になる。

「だから今度はアンディくんが貴族だと考えて、エンブレスト伯爵家と仲が良い貴族を探してみれば、絶対にアンディくんの姓名がわかるはずだよ」
「エンブレスト伯爵家と、仲がいい貴族…」
「そうそう。あと多分なんだけど、アンディくんはもしかしたら、六年前の『エンブレスト伯爵夫人殺害事件』と関係があるのではないかと思うんだ。もう既に犯人だったガルマ男爵一家は、もう五年前に一族もろとも処刑されているし、その殺害事件でいち早く動いたのは『ライトナー子爵家』だからね」
「っ!ライトナー、子爵家…!」

 聞いた事がある家柄だったのか、オズワルドは目を大きく開いて、またリュドウィックに迫る。
 けれど、またしても両肩を押されて、リュドウィックに変な顔をされた。

「全く…興奮して俺に近付くのはやめてよ~?男色家って一部に言われるの、俺絶対嫌だからな!」
「は?い、いやいや!俺も男色家って言われるのは嫌だぞ!?でも、ライトナー子爵家については確か、副騎士団長のカミーユが前に話していた気がする。とりあえず、今から騎士団本部に行ってカミーユを探してきていいか?」
「へいへい。その前に、一旦俺を部屋に送ってから行ってくれよ。…最近、俺をが、どこかにいるらしいからね」
「…はい。承知いたしました、リュドウィック殿下」

 リュドウィックの指示のもと、オズワルドは彼を無事に部屋に送り届け、扉を閉めてからアンディの事について再度考え始めた。

(…アンディ・ライトナーか…。これは調べ甲斐があるな。絶対にあの執事の事を調べて、俺の気持ちもハッキリさせないとな…)
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