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服従と抵抗
7 思いがけない告白
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「な、何ですか……? ユーリさん」
「ユーリでいいよ」
「何でここに。あの、離してください」
「シン君に会いたくて待ってたんだ。面会は断られたけど、今日は授業に出てたって聞いたから」
ユーリはシンの質問には答えてくれたけど、離してはくれなかった。耳元で囁かれてゾワゾワする。
「何読んでたの?」
「あ、何でもないです」
「へぇ、伝説の魔物事典。面白そうだね。カフェで座って読もうよ」
「……」
「そうそう、お兄さん来てたよ」
「えっ?」
「やっと顔上げてくれたね。僕がここに入る前に姿を見かけたよ。カフェで待ってるんじゃないかな」
「じゃあ行きます」
急いで離れようとしたのに、ユーリに本を取り上げられて片手を掴まれた。
「本は僕が持っていくから、カフェまで手を繋いで行こう」
シンはユーリがどうしてそんな事を言うのか分からなくて、目をパチクリさせた。
彼も何か知っていて、シンの血を狙っているのだろうか。グレンのように。
「は、離してください……」
「いやだね」
「何で僕に構うんですか? 僕は髪も目も黒くて……」
「初対面の時から綺麗だなって思ってたよ。黒は強い魔力を持つ者の色なんだ。知ってる?」
「でも、みんなは気持ち悪いって言います。黒い色なんて見たことないって」
「お兄さんも?」
「兄は……兄だけは違います」
「だからお兄さんのことが好きなの?」
言い当てられてびっくりした。誰にも見抜かれたことがないのに。
「ち、違います……」
「本当に?」
「だ、だって兄と僕は兄弟で」
「でも、血は繋がってないだろ?」
「な……」
何でそんなことを知っているのだろう。言い当てられて、追い詰められたような気がして泣きたくなった。ユーリはとても苦手だ。紫の瞳でじっとら見つめられることも、いつまでも手を離してくれないのも、気持ちを見透かされたような言葉も、全部どう反応していいか分からない。
「ごめん、そんな泣きそうな顔しないで。僕がいじめてるみたいだ。カフェに行こう」
シンはユーリと手を繋いだまま階段を降りた。離して欲しいし何度も言ったのに、ユーリは全然聞いてくれない。血を抜かれすぎてまだ力が戻らないシンには、ユーリの手は振りほどけなかった。
階段を降りて図書館の出口に向かう。
「ねぇ、実技試験で怪我をしたって話だけど、シン君は五つ星の魔物と戦ったの?」
「僕は逃げただけです……」
「じゃあ質問を変えるね。理事長は?」
「えっ?」
「理事長に会わなかった? 彼に何か魔法をかけられなかった?」
何と答えていいか分からずに、シンはユーリの顔を見た。
でも、話してもきっと記憶を消されるだけだろう。
「話しても、無駄なので」
ユーリはにっこりと笑った。
「僕はさ、一番得意なのは攻撃魔法だけど、実は防御魔法もかなり得意で、特に精神に関与する状態異常の魔法には極めて強い抵抗力を持ってるんだ。だから君にとってぼくはかなり頼りになる相手だと思うよ。君のお兄さんなんかより」
「え……」
「だから僕と付き合わない?」
「は?」
「考えておいて」
考えるも何も、ユーリのことはほとんど知らない。付き合うなんて論外だ。
「困ります」
「困った顔もかわいいな。でも、悪い話じゃないと思うけど。一人で立ち向かうのは辛いでしょ?」
それは確かに、と思ったのがいけなかった。一瞬ためらったシンをみはからったかのように、シンの頬に何かが触れた。それがユーリの唇だと気づいた時には、もう離れたあとだった。
呆然としているシンの横で、ユーリは何食わぬ顔で言った。
「あ、君のお兄さんがいるよ。見られちゃったかな」
「ユーリでいいよ」
「何でここに。あの、離してください」
「シン君に会いたくて待ってたんだ。面会は断られたけど、今日は授業に出てたって聞いたから」
ユーリはシンの質問には答えてくれたけど、離してはくれなかった。耳元で囁かれてゾワゾワする。
「何読んでたの?」
「あ、何でもないです」
「へぇ、伝説の魔物事典。面白そうだね。カフェで座って読もうよ」
「……」
「そうそう、お兄さん来てたよ」
「えっ?」
「やっと顔上げてくれたね。僕がここに入る前に姿を見かけたよ。カフェで待ってるんじゃないかな」
「じゃあ行きます」
急いで離れようとしたのに、ユーリに本を取り上げられて片手を掴まれた。
「本は僕が持っていくから、カフェまで手を繋いで行こう」
シンはユーリがどうしてそんな事を言うのか分からなくて、目をパチクリさせた。
彼も何か知っていて、シンの血を狙っているのだろうか。グレンのように。
「は、離してください……」
「いやだね」
「何で僕に構うんですか? 僕は髪も目も黒くて……」
「初対面の時から綺麗だなって思ってたよ。黒は強い魔力を持つ者の色なんだ。知ってる?」
「でも、みんなは気持ち悪いって言います。黒い色なんて見たことないって」
「お兄さんも?」
「兄は……兄だけは違います」
「だからお兄さんのことが好きなの?」
言い当てられてびっくりした。誰にも見抜かれたことがないのに。
「ち、違います……」
「本当に?」
「だ、だって兄と僕は兄弟で」
「でも、血は繋がってないだろ?」
「な……」
何でそんなことを知っているのだろう。言い当てられて、追い詰められたような気がして泣きたくなった。ユーリはとても苦手だ。紫の瞳でじっとら見つめられることも、いつまでも手を離してくれないのも、気持ちを見透かされたような言葉も、全部どう反応していいか分からない。
「ごめん、そんな泣きそうな顔しないで。僕がいじめてるみたいだ。カフェに行こう」
シンはユーリと手を繋いだまま階段を降りた。離して欲しいし何度も言ったのに、ユーリは全然聞いてくれない。血を抜かれすぎてまだ力が戻らないシンには、ユーリの手は振りほどけなかった。
階段を降りて図書館の出口に向かう。
「ねぇ、実技試験で怪我をしたって話だけど、シン君は五つ星の魔物と戦ったの?」
「僕は逃げただけです……」
「じゃあ質問を変えるね。理事長は?」
「えっ?」
「理事長に会わなかった? 彼に何か魔法をかけられなかった?」
何と答えていいか分からずに、シンはユーリの顔を見た。
でも、話してもきっと記憶を消されるだけだろう。
「話しても、無駄なので」
ユーリはにっこりと笑った。
「僕はさ、一番得意なのは攻撃魔法だけど、実は防御魔法もかなり得意で、特に精神に関与する状態異常の魔法には極めて強い抵抗力を持ってるんだ。だから君にとってぼくはかなり頼りになる相手だと思うよ。君のお兄さんなんかより」
「え……」
「だから僕と付き合わない?」
「は?」
「考えておいて」
考えるも何も、ユーリのことはほとんど知らない。付き合うなんて論外だ。
「困ります」
「困った顔もかわいいな。でも、悪い話じゃないと思うけど。一人で立ち向かうのは辛いでしょ?」
それは確かに、と思ったのがいけなかった。一瞬ためらったシンをみはからったかのように、シンの頬に何かが触れた。それがユーリの唇だと気づいた時には、もう離れたあとだった。
呆然としているシンの横で、ユーリは何食わぬ顔で言った。
「あ、君のお兄さんがいるよ。見られちゃったかな」
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