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服従と抵抗
8 嫉妬?
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ユーリの言った通り、図書館の入り口近くに赤い髪の兄の姿が見えた。隣にいるのは金髪のレオンハルトだ。二人がこっちを見ているような気がしてシンは血の気が引きそうになった。
見られた。兄に。
別に付き合ってもいないし、兄に自分の気持ちを伝えたわけでもないから表面的には後ろめたいことなんて何もないのに、自分の気持ちを裏切ってしまったような気がした。
「あれ、どこに行くの?」
逃げようとしたのにユーリにぐいぐい腕を引っ張られる。そのまま二人の前まで歩いていくことになった。
「アルフレッド、君も来てたんだ」
同じチームで戦っているせいか、ユーリはアルフレッドに親しげに声をかけた。シンはいたたまれなくて顔が上げられない。
「ユーリ、お前いつまで俺の弟と手を繋いでるんだ」
機嫌の悪そうな兄の声が聞こえたと思うと、ユーリに掴まれた手はアルフレッドによってあっさり離された。
「やだなぁ、嫉妬? シン君、君のお兄さん怖いね」
ユーリがにこにこ笑いながら言う。シンはユーリの性格が掴めなくて困惑した。
「当然だろ。お前みたいな奴が触るな」
「同じチームなのにひどいなぁ」
「アルフは弟を溺愛してるからな。弟も大変だな」
「とりあえずカフェで何か飲もうよ」
兄の視線を感じてシンはうつむいた。本当は会いたかったのに、うまく自分の気持ちを表現できない。それまでユーリに握られていた手を代わりに兄が掴んだので帰るわけにもいかないみたいだ。いつも優しい兄がひどく怒っているような気がして、シンはますます何も言えなくなった。
図書館に併設されたバンブーカフェには生徒達があまりいなかったのでシンはほっとした。奥の方のテーブル席に移動するまで、アルフレッドはシンの手をずっと握っていた。
当然のようにユーリとレオンハルトもついてくるので、結局四人で座って何か注文することになった。
テーブルにつくと学園内の店で働くお姉さんが、お茶を数種類持ってやってきた。何も注文しなくても焼き菓子のサービスも付いている。
「シン」
「な、何?」
名前を呼ばれて兄の顔を見上げると、怒ったような顔でごしごしと頬をこすられた。
「汚れてた」
「あ、ありがと」
そこはさっきユーリがキスしてきた場所だ。汚れとはユーリのキスのことだろうか。シンの考えすぎかもしれない。
「なぁ、アルフ弟とユーリってクラス違うんだろ? いつそんなに仲良くなったんだ?」
レオンハルトがメニュー表を見ながら空気も読まずに変なことを言った。
「別に仲がいいわけじゃ……」
「図書館でよく会うからさ。彼の髪は黒くて綺麗だし」
「綺麗? へぇー、そんな見方もあるんだな」
レオンハルトの反応の方が普通だとシンは思う。ほとんどの人は黒髪を見て怪訝そうな顔をするか、あからさまに視線を外す。そこまではっきりした態度を取らなくても、髪に進んで触ってくる人はほとんどいない。
「それでね、僕がお願いしてページ交換してもらったんだ」
見られた。兄に。
別に付き合ってもいないし、兄に自分の気持ちを伝えたわけでもないから表面的には後ろめたいことなんて何もないのに、自分の気持ちを裏切ってしまったような気がした。
「あれ、どこに行くの?」
逃げようとしたのにユーリにぐいぐい腕を引っ張られる。そのまま二人の前まで歩いていくことになった。
「アルフレッド、君も来てたんだ」
同じチームで戦っているせいか、ユーリはアルフレッドに親しげに声をかけた。シンはいたたまれなくて顔が上げられない。
「ユーリ、お前いつまで俺の弟と手を繋いでるんだ」
機嫌の悪そうな兄の声が聞こえたと思うと、ユーリに掴まれた手はアルフレッドによってあっさり離された。
「やだなぁ、嫉妬? シン君、君のお兄さん怖いね」
ユーリがにこにこ笑いながら言う。シンはユーリの性格が掴めなくて困惑した。
「当然だろ。お前みたいな奴が触るな」
「同じチームなのにひどいなぁ」
「アルフは弟を溺愛してるからな。弟も大変だな」
「とりあえずカフェで何か飲もうよ」
兄の視線を感じてシンはうつむいた。本当は会いたかったのに、うまく自分の気持ちを表現できない。それまでユーリに握られていた手を代わりに兄が掴んだので帰るわけにもいかないみたいだ。いつも優しい兄がひどく怒っているような気がして、シンはますます何も言えなくなった。
図書館に併設されたバンブーカフェには生徒達があまりいなかったのでシンはほっとした。奥の方のテーブル席に移動するまで、アルフレッドはシンの手をずっと握っていた。
当然のようにユーリとレオンハルトもついてくるので、結局四人で座って何か注文することになった。
テーブルにつくと学園内の店で働くお姉さんが、お茶を数種類持ってやってきた。何も注文しなくても焼き菓子のサービスも付いている。
「シン」
「な、何?」
名前を呼ばれて兄の顔を見上げると、怒ったような顔でごしごしと頬をこすられた。
「汚れてた」
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そこはさっきユーリがキスしてきた場所だ。汚れとはユーリのキスのことだろうか。シンの考えすぎかもしれない。
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「図書館でよく会うからさ。彼の髪は黒くて綺麗だし」
「綺麗? へぇー、そんな見方もあるんだな」
レオンハルトの反応の方が普通だとシンは思う。ほとんどの人は黒髪を見て怪訝そうな顔をするか、あからさまに視線を外す。そこまではっきりした態度を取らなくても、髪に進んで触ってくる人はほとんどいない。
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