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第7章 二度目の実践授業は大ピンチ!

(7)イエローさんの涙

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 森の中を、ひとりで走る。姿は見えないけど、魔犬の臭いはずっとしていた。早く、イエローさんを見つけないと。

(わたしにできることって、なんだろう)

 考えなきゃ。わたしは人間だから、魔法は使えない。でも、なにかできるはずだよ。役立たずなんて、言わせない!

(できること、わたしに、できることはなに! ……あっ!)

 ふと、ポケットのふくらみに気づいた。手を入れれば、ひやりと冷たくて固い感触。

「そっか、あるじゃんか! わたしにも、できること!」

 ポケットから金色の笛を取り出して、力いっぱい吹いた。高く澄んだ笛の音が、森に伝わっていく。走りながら、必死に吹きつづけた。

 木々の先に、あざやかな金髪が目に入った。

「……イエローさん! やっと見つけた!」

 イエローさんはふり向いて、目を丸めた。

「リリイさん!? ど、どうしてもどってきたんですの! 人間なんてなにもできないんだから、引っ込んでなさいな! 怪我してしまうわよ!」

 そういうイエローさんも、転んだのか制服は泥まみれだ。手入れされたきれいな金髪も、もうボロボロ。

「わたし、イエローさんのこと助けに来たんです!」
「……え? まさか、人間のくせにわたしのこと、心配してくれたんですの?」

 ……ちょっと、なに、その驚きっぷり。それになんで、いつもいつも「人間なんて」とか「人間のくせに」とか言うんだろう。ちょっとむかつく。でも。

「クラスメイトだから、心配するよ。人間も悪魔も関係ないでしょ! ……あ。です!」

 つい、敬語が抜けた。また、だめ執事って言われちゃう。あわてるわたしを、イエローさんのまん丸のひとみが見つめた。そのひとみに、突然、じわっと涙が浮かぶ。……って、えええ?

「なんで泣くの!? わたし、変なこと言いました!?」
「……だ、だって、わたし」

 ぽろぽろっと大粒の涙が落ちて、

「おとりなんて、本当は怖かったんですものぉ~っ!」
「えっ、ま、うぐっ……!」

 イエローさんが、思いきり抱きついてきた。ていうか、タックルしてきた。

「あんな犬、魔法なしでどうしろって言うんですのっ! リーダーだから頑張りましたけど、怖いに決まってるじゃないですかぁ……!」

 ……ああ、そっか。イエローさん、強がっていたんだ。わたしたちを逃がすために。それで、わたしが来たことで安心して、気がゆるんだのかな。

 そういえばさっき「人間なんてなにもできないんだから、引っ込んでなさいな! 怪我してしまうわ!」とか言ってたっけ。言い方はむかつくけど、心配してくれたのかも……? いい子?
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