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第7章 二度目の実践授業は大ピンチ!
(8)逃げ……られる⁉
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「ってそんなこと言ってる場合じゃない! 逃げましょう! ほら早く!」
イエローさんの腕をつかんで、走り出す。その瞬間、近くの木が、バキバキッと、大きな音を立ててなぎ倒された。魔犬だ。
「あ、リリイさん待って、わたし、もう足が……あっ!」
「イエローさん!?」
ずっとおとりになって走り回っていたから、体力の限界だったのかもしれない。イエローさんがつまずいて、転んでいた。まずい。ふり向いたわたしの視界に、血走った目が映る。
(まずいまずいまずい! このままじゃ、ふたりとも……!)
とっさに、イエローさんをかばうように抱きしめる。すぐ近くでする、魔犬のうなり声。どうにかしなきゃ。
にぎったままだった、笛に気づく。
(お願い、来て!)
ピー――……っ!
森に響く、高い笛の音。――そして、返事があった。すぐ近く、きれいな鳴き声が!
ギャンッ
苦しそうな声がして、魔犬が、わたしの視界から吹っ飛んだ。その代わりに見えたのは、きらきら輝く銀の色。
「……しーさんっ!」
魔犬に体当たりした、シルバーフォックスのしーさんが駆けてくる。翼の生えた背中を見せて「きゅうっ」と鳴いた。「乗って」って、言っているみたいだ。怖さからじわっと浮かんだ涙をぬぐって、イエローさんを引っ張る。
「イエローさん、乗って!」
「え、な、なんですの、このシルバーフォックス!」
「友だちのしーさん! って、そんなこといいから、早く乗る! ……ってください!」
「リリイさん、敬語へたすぎません!?」
「ああ、もう、うるさいなあ、早くして!」
わたしに押されて、イエローさんはしーさんの背中に乗った。わたしも、イエローさんの前にはいのぼって、銀色の毛をつかむ。
「お願い! 逃げて!」
駆け出したしーさんは、びっくりするくらい速かった。ジェットコースターみたいだ。
(よかった、しーさんを呼んで大正解……!)
魔界動物から逃げるためには、魔界動物の力を借りるのがいいかも、って思ったんだ。予想どおり! ありがとう、しーさん!
だけど、魔犬も追ってくる。すると、しーさんは、ぐんっと翼を羽ばたかせた。うそ、飛んでる……!?
「そっか、空に逃げれば、犬は追ってこられないもんね! しーさんさすが!」
「いいえ! だめですわ!」
感心したわたしに、イエローさんが叫んだ。
「だって、空は――!」
言い終わらないうちに、まわりの木々がぐんぐん伸びて、行く手が邪魔されていく。そ、そうだった! この森、先生の魔法がかかってるんだ! この前の授業で、ロゼだって空に飛ぶのを邪魔されてたじゃん!
しーさんは、あわてて地上に降りる。でも、そこには当然、魔犬がいて……。
「ど、どうするんですの、リリイさん!」
「ど、どうしよう……!?」
「まさかノープランですの!?」
「だってぇ!」
迷っているうちにも、魔犬は迫ってくる。なんとかしなきゃ! でも、なにができる!?
「り、リリイさん! リリイさんってば!」
がくがくがく、と体を揺さぶられる。
もう、なに!? わたし、いま、必死に考えてるんだけど!
「あ、あそこ! ほら、見て! ロゼさんですわ!」
え?
イエローさんの腕をつかんで、走り出す。その瞬間、近くの木が、バキバキッと、大きな音を立ててなぎ倒された。魔犬だ。
「あ、リリイさん待って、わたし、もう足が……あっ!」
「イエローさん!?」
ずっとおとりになって走り回っていたから、体力の限界だったのかもしれない。イエローさんがつまずいて、転んでいた。まずい。ふり向いたわたしの視界に、血走った目が映る。
(まずいまずいまずい! このままじゃ、ふたりとも……!)
とっさに、イエローさんをかばうように抱きしめる。すぐ近くでする、魔犬のうなり声。どうにかしなきゃ。
にぎったままだった、笛に気づく。
(お願い、来て!)
ピー――……っ!
森に響く、高い笛の音。――そして、返事があった。すぐ近く、きれいな鳴き声が!
ギャンッ
苦しそうな声がして、魔犬が、わたしの視界から吹っ飛んだ。その代わりに見えたのは、きらきら輝く銀の色。
「……しーさんっ!」
魔犬に体当たりした、シルバーフォックスのしーさんが駆けてくる。翼の生えた背中を見せて「きゅうっ」と鳴いた。「乗って」って、言っているみたいだ。怖さからじわっと浮かんだ涙をぬぐって、イエローさんを引っ張る。
「イエローさん、乗って!」
「え、な、なんですの、このシルバーフォックス!」
「友だちのしーさん! って、そんなこといいから、早く乗る! ……ってください!」
「リリイさん、敬語へたすぎません!?」
「ああ、もう、うるさいなあ、早くして!」
わたしに押されて、イエローさんはしーさんの背中に乗った。わたしも、イエローさんの前にはいのぼって、銀色の毛をつかむ。
「お願い! 逃げて!」
駆け出したしーさんは、びっくりするくらい速かった。ジェットコースターみたいだ。
(よかった、しーさんを呼んで大正解……!)
魔界動物から逃げるためには、魔界動物の力を借りるのがいいかも、って思ったんだ。予想どおり! ありがとう、しーさん!
だけど、魔犬も追ってくる。すると、しーさんは、ぐんっと翼を羽ばたかせた。うそ、飛んでる……!?
「そっか、空に逃げれば、犬は追ってこられないもんね! しーさんさすが!」
「いいえ! だめですわ!」
感心したわたしに、イエローさんが叫んだ。
「だって、空は――!」
言い終わらないうちに、まわりの木々がぐんぐん伸びて、行く手が邪魔されていく。そ、そうだった! この森、先生の魔法がかかってるんだ! この前の授業で、ロゼだって空に飛ぶのを邪魔されてたじゃん!
しーさんは、あわてて地上に降りる。でも、そこには当然、魔犬がいて……。
「ど、どうするんですの、リリイさん!」
「ど、どうしよう……!?」
「まさかノープランですの!?」
「だってぇ!」
迷っているうちにも、魔犬は迫ってくる。なんとかしなきゃ! でも、なにができる!?
「り、リリイさん! リリイさんってば!」
がくがくがく、と体を揺さぶられる。
もう、なに!? わたし、いま、必死に考えてるんだけど!
「あ、あそこ! ほら、見て! ロゼさんですわ!」
え?
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