絶世のハンターは魔族に狙われ、情報屋に抱かれる

琴葉悠

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ダンピールのハンターと闇の城

合流する恋人? とその他一名(ダンピール)

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 ディストとアレフィードは道を歩いていた。
 魔物や魔獣が襲ってくることもあったが、ディストは銃弾で体を吹っ飛ばし、消滅させてアレフィードの護衛をしながら進んだ。
 通路の仕掛けなどはアレフィードが対応し、難なく進めた。
「あいつはどうしてるか……」
「誰の事だ?」
 アレフィードが尋ねると、ディストは淡い笑みを浮かべて口を開いた。
「一緒に来た奴のことだ。クロウと言う」
「クロウ……?」
「……お前はまだ若いダンピールだから知らなそうだな、と言ってもも俺も最近までそこまで奴に詳しくなかったが」
 名前に聞き覚えがないような雰囲気を出すアレフィードに、ディストは静かに言った。
「……ここで行き止まりか、なるほどもう片方も――」
 ランプ以外何もない壁に行き当たり、ディストは立ち止まる。
 するとランプに明かりが灯り、扉が出現した。
「クロウは既についていたのか」
「もう片方の道は父が刺客や、魔具を配置している、そう簡単には――」
 信じられないとう顔をするアレフィードに、ディストは少し誇らしそうな雰囲気を漂わせて言う。
「それがクロウという奴だ」
 ディストが扉を開けると、扉の向こうは塔になっていた。
 扉を出て横を見ると、上を見上げているクロウが居た。
 クロウは扉から出てきたディストに気づくと、抱き着いてきた。
「ハニー! 無事でよかった!」
「その呼び名をやめろ、そして抱き着くな」
「ええーハニーなんかつれない……ってなんつー奴つれてるの?」
 クロウはアレフィードを見ると眉をひそめた。
「この城主の息子だと聞いている、血を吸ったから反抗しようとして、血を吸われて傀儡状態になってるのもわかった――」
「血?! 吸ったの?! 俺以外の奴のを?!」
 クロウががくがくとディストの肩を揺さぶる、ディストは何故こうされているのか全く理解できなかった。
「おいこらそこの坊ちゃん吸血痕見せろ!!」
 クロウはガラ悪くアレフィードに近づく。
 アレフィードはクロウの態度に戸惑いながら、首筋の吸血痕を見せた。
 クロウは吸血痕をばしりと音は派手だがかなり手加減して叩いた。
「おい、クロウ」
「勝手に吸血したハニーが悪い!!」
 扱いが雑な事をするクロウをディストは咎めるが、クロウは気が気でないと言わんばかりの様子だった。
「……?!」
 アレフィードは首を触り、吸血痕が消えたことに驚いたようだった。
「どうやって……?!」
「さぁな、俺も原理は良くわからん」
「説明面倒だから言わねぇ」
「……クロウ、何故そんなに機嫌を悪そうにする」
「ハニーの無自覚タラシっぷりを怒ってるんだよ!」
 ディストはさっきまでの様子と違って何か苛立っているクロウに困惑した。
 一体何が原因なのかディストにはさっぱりわからなかった。

 クロウは苛立っていた。
 簡単だと思って行かせた道をもう少し調べるべきだったと。
 この城の主の息子――アレフィードがよりにもよって居たのだ、調べたところ配置したのは城の主の意思ではない、配下のようだ。
 ディストでなければもっと惨劇がまっていたとクロウは予測できた。

 人を殺してアレフィードの罪悪感を苛み完全に眷族にしてしまうか、アレフィードの人間性が失われヴァンパイア化して魔族に堕ちるかのどっちかしかない。
 ディストの吸血でアレフィードは城主の眷族状態から抜け出しディストの眷族になっていた、もっともそれを破壊し無くしてしまったので今のアレフィードは自由といって良いが。
 だた、このアレフィードの処遇が問題だった。
 連れて行けば足手まといになるのは確実なのが見えていた、それくらい自分たちと力量に差がある。
 アレフィードはまだ若すぎるのだ。
 いくら真祖の息子と言えども、実力がまだ伴っていない。
 先ほど戦った配下のヴァンパイアの方が力があるとクロウは見た。

「坊ちゃん、こっから先アンタには荷が重い。城の外で待っているか、それとも俺の知り合いのところで留守番するか選びな」
「そうかもしれない……だが私は……!!」
「クロウ、連れてってやれ」
「ハニー?!」
 ディストの言葉に、クロウは面食らう。
 ディストも薄々気づいているはずなのだ、アレフィードは足手まといになると。
 それなのに連れていけと言ってるのだ。
「護衛なら俺がする」
「……あ~~!! 分かったよ畜生!! 帰ったら覚えておけよ!!」
「……」
 クロウが苛立って髪を掻きながらそう言うと、ディストは少し安堵したような、それでいて少し嫌な予感がしているような顔をした。

 帰ったら腹上死しかねない程抱かれる、そんな予感がディストの頭をよぎっているのだろう。

「それにしてもこの塔どうやって上るか……」
「あ、ハニーそこの階段乗った時点で魔物が一気に出る仕掛けになってるから階段に上らない方法で行くぞ、出口の足場なら乗っても問題ないようだしな」
 クロウはそういうと背中から黒い翼を出し、ディストとアレフィードを抱えた。
「木っ端な奴出たら暇あったら撃ってくれ俺も破壊すっけど正直面倒なんだよ」
「……分かった」
 ディストが頷くと、クロウは二人を抱えたまま一気に上えと飛んだ。
「舌噛むなよ!」
 猛スピードで上昇していく。
 あっという間に、塔の上の扉へとたどり着く。
 クロウは足場に二人を下ろし、二人が扉を開けると自分も足場に乗りそこから移動した。

 扉の向こうは庭園だった。
「マジどうなってんのこの城」
「調べれるお前が調べたらいいのでは?」
「いや、物理法則無視しまくってるのは分かったからそれ以上は面倒だしヤダ」
 クロウは少しげんなりした様子で言う、相当面倒な構造をしているのだこの城は。
「とりあえず言うわ、見た目と中身が一致してねぇ、入って初めて中身がわかるんだよ大抵の奴は……」
「お前が城見てげんなりしたのはそう言うことか」
 庭園を話しながら進むと、下級の襲ってくる本能しかないヴァンパイア達がクロウ達に襲い掛かってきた。
 ディストは銃で頭と心臓を吹き飛ばし、クロウも同じく銃で頭と心臓を破壊した。
 塵に帰っていくヴァンパイアを見てアレフィードは何とも言えない表情をしていた。
「どうした? 言いたくねぇなら言わなくていいぜ坊ちゃん」
「……今のヴァンパイア達は教会にそそのかされて母を殺した者達だ……」
「やっぱりな、真祖の連中手を下した連中だけじゃ腸が煮えくり返るのが治まらないから、教会のそそのかした奴と、ついでに人間連中をどうにかしないと怒りが治まらないところまで来てるわけだ」
 クロウは銃をくるくると回しながら言う。
「……母は、人間全てがそうじゃない、恨まないでほしいと言って死んだ……だからこれ以上父に手を血で染めてほしくない!!」
「そりゃ無理ってもんだ、本当一番大事なものを壊されたら怒りは壊した連中と組みする奴らも知らないふりしてた奴らも、無関係そうな奴らも関係ない、自分の怒りが収まるまで地獄に落とさなきゃ気が済まないんだ。許せる奴なんてほんの一握りだ、なぁディスト」
「……俺は関係者だけだったぞ」
「それでも、自分の手でどうにかしなきゃ大体が気が済まなかっただろう?」
 クロウは銃で遊ぶのやめて、銃で空間を破壊した。
 空間の穴の向こうに扉が見える。
「どうせここら辺は下級のヴァンパイアだらけなんだ、さっさと行こうぜ」
 クロウはそう言って穴を通った。
 何か言いたそうにしているアレフィードを、ディストは先に進むように言って空間の穴を通らせてから、自分も空間の穴を通った。

 クロウが扉を開けた向こうはまた通路になっていた。
「あ゛ー!! めんどくせぇ!! 力制限してなきゃいけないのも本当に面倒くせぇ!!」
「え……?」
「クロウは少し特殊な出自でな、力を際限なく使ってると人間界に干渉しなくなった神々が何かをやらかしてこの星の生き物全て滅亡という最悪なシナリオに行きかねん、だから普段から力を制限してるんだ」
「ま、フルで使ったらの話だけどな、それは多分ない! ……と思いたい」
「おい」
「いや、だってハニーに何かあったら俺もブチギレ案件だからー」
「おい」
 クロウとディストのやり取りを見て、アレフィードは何かを言いたそうにしていた。
「どうしたアレフィード」
「その……二人は恋人なのか……?」
「そうだぜ」
「いや」
 二人とも即答し、クロウはまだこいつは認めないのかと言わんばかりの表情をして、ディストの顔を掴む。
「ハニーさー。俺以外じゃ基本反応しないし、俺以外の連中とはしないのに何でそうなわけ~~?!」
「おい、やめろ、ここでそう言う発言をするな」
 クロウの言葉にディストは雰囲気をだす。
 クロウとディストのじゃれあいのようなやり取りに、アレフィードはぽかんとする。
「いい加減素直になれよマジで~~!!」
「十分素直なつもりだ、昔よりは」
「いや全然だね!」
 二人はそういいながら銃を取り、近寄ってきた魔獣と魔物を気にしてないかのように弾丸を放って消滅させた。
「……よし、帰ってから覚悟しろ」
「……それは断る」
 二度目の帰ってから宣言に、ディストは再びなんとも言えないような顔をする。
「……さて、じゃれるのもこの辺にしてさっさと進むか」
 クロウは先に進み始めた。
 時折銃で魔獣や、魔物を消滅させつつ、ディストとアレフィードの先を行く。
「アレフィード、行くぞ」
「あ、ああ」
 クロウはアレフィードのディストへの態度が何か気に食わないと思いつつも、ちらりと二人を見ただけで強く言わず先に進んだ。


 しばらく進んでいると、再び広い場所にたどり着く。
 三人がその場所に入ると魔石が全ての道を塞いだ。
「つーことは……」
 クロウは防御壁をディストとアレフィードに張り、自分に降り注ぐサーベルを全て破壊した。
 無数のサーベルは高い音を立てて消滅した。
「レオンを消滅させたのは貴様か?」
「なんだい、あんたの子飼いかい? そりゃ悪いことしたな」
「不出来だが私の眷族だ、否定はしない」
 青い衣装に身を包んだヴァンパイアが姿を見せる。
「レヴィン卿!!」
「あーあのヴァンパイアのレヴィンか、あんたここの城主の配下だったのか」
「真祖は甘すぎたのだ、人間等餌に過ぎない……貴様らが来なければ子息もこちら側に引きずり込めたというのに……」
「なるほど、いい作戦だなぁ!」
 ヴァンパイア――レヴィンとクロウは剣を合わせる。
「あんたに合わせてやるよ、真祖狩りの前座だ!」
「貴様たちこそ、贄にしてくれる」
 剣と剣がぶつかり合う音が響く。

「……クロウの奴遊んでるな」
「?」
 ディストの言葉にアレフィードは目を疑う。
「……奴の表情見てみろ」
 目に追うのもやっとな剣技に視線を奪われていたアレフィードはクロウの表情を見る。

 相手を試すような、あざ笑うような、楽しむような表情だった。
 一方レヴィンは、どこか焦りの見える表情だ。

「……あいつにとって互角の相手はここにはいない、だから少し遊んで体をならしてから真祖と対戦しておきたいんだろう」
「無茶苦茶じゃないか……!」
「あいつは昔から無茶苦茶だ……だが強い……俺が知る限りでは最強のハンターだ」
 ディストはしっかりとクロウを見る、クロウは余裕そうにディストにウィンクしてきた。
「真面目にやれ」
「やってるぜー!」
 ディストの言葉に、クロウはそう言うと、遊びを終わりにするかのようにレヴィンのサーベルを剣でバキンと折った。
「サーベルが無理なら」
 レヴィンは姿を変え、異形の――魔族のような姿になった。
「HA!! なるほど、あんたはとっくの昔に堕ちてたのか!! じゃあ……」
 ディストは手を異形の形へと変えた。
「ハンターとして狩ってやらぁ!!」
 魔族の鋭い爪を手で防ぎ、へし折ると、その爪を投げつけ顔面に刺した。
 怯んでいる好きに、胸元に潜り込み、手で腹をえぐりコアを引き千切り、握りつぶした。
「馬鹿な……!!」
 魔族――レヴィンは元の姿に戻り、床に倒れ伏した。
「破壊者クロウに喧嘩を売ったのがアンタの運の尽きだったなぁ」
「破壊者クロウ……!? 馬鹿な破壊者クロウはハンターを止めたと……!!」
「諸事情で復帰したんだよ」
「それさえ知っていれば……!!」
 レヴィンは塵へとかえっていった。
 レヴィンのいた場所には鍵が落ちている。
「へーなるほど、この鍵を差し込まないと城主のところにはたどりつかない仕組みだったのか……」
「そこまでは調べてなかったのか?」
「いや、悪い面倒でな」
「お前は……」
 クロウはそういうと魔石ではなく、扉の方に進み、鍵を差し込んだ。
 鍵を差し込んだ扉を開けると、明らかに雰囲気が異なる空間へと出た。
 暗い、闇でできた空間に。
「さーて坊ちゃん、戻るなら今だぜ?」
「私は父に会わねばならない、今更戻れん」
「……」
 ディストはアレフィードを少し見てから、クロウの方を向いた。
「……クロウ問いたい、お前は真祖を殺すのか?」
「あー向こうの出方による」
「そうか」
 クロウの答えに納得したのか、先に進み始めたクロウの後をディストは追った。
「……父上」
 アレフィードは悲痛な声で呟くと、二人の後を追う。



 真祖を殺すか、否か、クロウは決断せぬまま真祖の元に向かう。
 そして二人のダンピールは、真祖と対面した時、何を思い、何を言うのか――







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